Treasure of life

月那

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【4】Crystal

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 どうやって家に帰ったのか、覚えていない。
 翔は帰宅するなり部屋に籠った。
 幸いなことに、まだ誰も家にはいなかったから。
 誰にも会わないでいられた。会いたく、なかった。
 美香にだけ“しんどいから、もう寝るし、ほっといて”とだけメッセージを入れて、ベッドに潜り込む。

 あまりにも、衝撃的過ぎて。
 彬と皇が繋がっていたこと。いや、二人に繋がりがあるのはわかっていたけれど、まさか結託して自分を陥れるよう裏面工作していたなんて、全然気付けなかった。
 散々抱き尽くした皇が、ぐったりした自分に“災難だったなー、翔。彬なんかに遊ばれて”と笑いながら言ったから。
 全部のシナリオが彬の思う通りに進められていたことを知った。

 ただ。
 その皇の手は、皇の体は、どこまでも優しかった。
 独りよがりで自分だけ快感を追うなんてこともなく、翔がもう何も出ないくらい何度も吐き出させて、善がらせて、力なくベッドに沈み込むまで抱き尽くす間も、ずっと“イイ?”と訊いてきて。

 だからきっと、皇も彬の操り人形なのだろう、と思った。
 優しさの塊のようなセックスは、逆にあまりにも自分には屈辱的で。
 しかも彬が帰り際に“こおくん、上手だったでしょ? また抱かれたくなったらゆってみ。いつでも抱いてくれるから”と嗤っていたから。
 もう、何もかもが彬の掌の上で。
 腹立たしいのと、自分の不甲斐なさに打ちのめされていた。

 ――なる。
 小さく、心の中でその愛しい名前を呼ぶ。
 でもきっと、もう、逢えない。
 逢えるわけがない。

 あんな姿を晒して、ただ茫然としていた成親の目が、痛かった。
 彬に肩を抱かれていたけれど、それすら止めることができなくて。
 成親がされるがままにソレを扱かれていたのも、ただ見ていることしかできなかった自分が。

 どうやって彬から護るのだ、と。何が、“俺が護る”だ? 
 こんなに、何もできないなんて。
 何もできないだけじゃない、きっと、傷つけた。
 もうきっと自分に“しょーさん”と笑いかけてはくれないだろう。
 穢れきった自分に、成親の傍にいる資格なんてない。
 自分の行動が総て成親を傷つけることにしかならなかったことが、あまりにも悔しい。

 だからと言って、彬が成親の傍にいるなんてあり得ないし、そんなこと赦せるわけがない。
 でも。じゃあ、今の自分に何ができる?
 もう、ただただ、彬に成親に近付くなと言うことしかできない。
 どんなに逢いたくても自分が成親の傍にはいられないから。

 お願いだから、これ以上成親を傷つけないで。

 そう彬に願うことしか、できない。
 それがあまりにも辛くて。
 自分が護るつもりだったのに。
 その自分こそが傷つけてしまったから。

 翔はそのまま、ベッドで泣きながらうずくまっていた。
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