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my girl
my girl -3-
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「るーちゃん、ありがとねー」
店を出て、ちょっと歩こうか、というゆかりとそのまま近くの河川敷公園を散歩することになった。
彼氏役。するために馳せ参じた指定の店は、少しだけ大人な雰囲気のフレンチで。
その嫌味な店に、けれどもとても似合っている“ゆかりに言い寄る男”という虫に、ルカは少しイラついて。
なので、いつもの挨拶「ハグ」に、わざと力を込めた。
そんな、深い意味など全くない(少なくともゆかり側には)ハグも、相手には不快でしかなかったらしく、食事の間もルカを見る件の男の目がかなり鋭かったのではあるが。
「ほーんと、やな感じだったでしょ? あの人、あたしがさー、バツイチで寂しい思いしてるんだから自分が相手にしてやってんだぞー。なんてあたしに声かけてきたんだよー」
ゆかりは少し酔っているようで、ケラケラと笑いながら言う。
「しっつれーしちゃう。だからさー、あたしにだってちゃーんとこんな素敵な彼氏がいるんだぞー、って言ってやりたかったの」
本当は誰も来ないか、あるいは女性の友人が来るものと高を括っていたのだろう男は、まさかの存在に完全に計算が狂ったのだろう。コース料理が終わると、逃げるように男は支払いだけ済ませてとっとと帰って行った。
ちゃんと支払いだけは三人分きっちり済ませる辺りは、大人なんだなとルカとしてはムカつきながらも感心してしまう。
公園の砂場。の、縁石を飛びながらゆかりが続ける。
「ゆかりちゃん、酔ってるね」
ルカが言うと。
「ふふーん、こんなの酔ったうちに入りませーん。あ、そーだ、るーちゃん、あんなお店じゃ、全然お腹空いちゃってるでしょ? もう一軒飲みに……は行けないから、ラーメンでも食べに行っちゃう?」
ゆかりが、いつもより空元気な声なのが、ルカにはすごく気にかかった。
しかも、
「っと、ゆかりちゃん、危ないよ」
縁石に足を滑らせて躓く。のを、ルカは抱き止めた。
「あは、ありがとー」
小さい肩。自分よりずっと小さいゆかりを抱き止めたルカはそのまま抱きしめた。
だって、ゆかりちゃん、泣いてる。
「…ごめん」
ルカの胸の中で、ゆかりが小さく呟いた。
「ほんとはね、違うの。あいつ、あたしに好きってゆったくせに、他に女がいたの。しかも、あたしのこと、ちょっとした出来心で近付いたんだって本命のわっかい女の子に、言い訳してたの」
ゆかりの、その言葉はルカに突き刺さった。
過去のゆかりの傷に、その男がまた触れていたから。
それはルカには絶対に赦せないことだから。
自分は、この人を護りたい。
こんな涙なんて、流させたく、ない。
「人のこと、バカにしてるでしょ。ほんっと頭に来る」
知らない内に、この人は何度も同じような経験をしているのかもしれない。
見た目の可愛らしさにつられて言い寄る男が少なくないのは想像できる。
けれどもその見た目に反して凛としているのは、過去の大きな傷がまだ全然癒えていないからだとも言えるわけで。
それでもこんな風に心を折れないように、自分を保てるように。
七海が何よりも大事で、きっとその為に誰にも寄りかかることをしないのだろうこの人が、それでも自分と美紅にだけは頼ってくれるのだとわかって嬉しかった。
「ゆかりちゃん……」
「ごめん、ほんとに、ありがとねー」
声をかけたルカの言葉を遮るように、いつものゆかりの明るい声。
「ごめんごめんー。いやー、みっともないね。さ、切り替えて、ラーメン行こう!」
「ゆかりちゃん、俺」
「いいから、いいから! さっきの、忘れて。ね?」
ゆかりが言って。だから、ルカもそれ以上何も言えなくて。
店を出て、ちょっと歩こうか、というゆかりとそのまま近くの河川敷公園を散歩することになった。
彼氏役。するために馳せ参じた指定の店は、少しだけ大人な雰囲気のフレンチで。
その嫌味な店に、けれどもとても似合っている“ゆかりに言い寄る男”という虫に、ルカは少しイラついて。
なので、いつもの挨拶「ハグ」に、わざと力を込めた。
そんな、深い意味など全くない(少なくともゆかり側には)ハグも、相手には不快でしかなかったらしく、食事の間もルカを見る件の男の目がかなり鋭かったのではあるが。
「ほーんと、やな感じだったでしょ? あの人、あたしがさー、バツイチで寂しい思いしてるんだから自分が相手にしてやってんだぞー。なんてあたしに声かけてきたんだよー」
ゆかりは少し酔っているようで、ケラケラと笑いながら言う。
「しっつれーしちゃう。だからさー、あたしにだってちゃーんとこんな素敵な彼氏がいるんだぞー、って言ってやりたかったの」
本当は誰も来ないか、あるいは女性の友人が来るものと高を括っていたのだろう男は、まさかの存在に完全に計算が狂ったのだろう。コース料理が終わると、逃げるように男は支払いだけ済ませてとっとと帰って行った。
ちゃんと支払いだけは三人分きっちり済ませる辺りは、大人なんだなとルカとしてはムカつきながらも感心してしまう。
公園の砂場。の、縁石を飛びながらゆかりが続ける。
「ゆかりちゃん、酔ってるね」
ルカが言うと。
「ふふーん、こんなの酔ったうちに入りませーん。あ、そーだ、るーちゃん、あんなお店じゃ、全然お腹空いちゃってるでしょ? もう一軒飲みに……は行けないから、ラーメンでも食べに行っちゃう?」
ゆかりが、いつもより空元気な声なのが、ルカにはすごく気にかかった。
しかも、
「っと、ゆかりちゃん、危ないよ」
縁石に足を滑らせて躓く。のを、ルカは抱き止めた。
「あは、ありがとー」
小さい肩。自分よりずっと小さいゆかりを抱き止めたルカはそのまま抱きしめた。
だって、ゆかりちゃん、泣いてる。
「…ごめん」
ルカの胸の中で、ゆかりが小さく呟いた。
「ほんとはね、違うの。あいつ、あたしに好きってゆったくせに、他に女がいたの。しかも、あたしのこと、ちょっとした出来心で近付いたんだって本命のわっかい女の子に、言い訳してたの」
ゆかりの、その言葉はルカに突き刺さった。
過去のゆかりの傷に、その男がまた触れていたから。
それはルカには絶対に赦せないことだから。
自分は、この人を護りたい。
こんな涙なんて、流させたく、ない。
「人のこと、バカにしてるでしょ。ほんっと頭に来る」
知らない内に、この人は何度も同じような経験をしているのかもしれない。
見た目の可愛らしさにつられて言い寄る男が少なくないのは想像できる。
けれどもその見た目に反して凛としているのは、過去の大きな傷がまだ全然癒えていないからだとも言えるわけで。
それでもこんな風に心を折れないように、自分を保てるように。
七海が何よりも大事で、きっとその為に誰にも寄りかかることをしないのだろうこの人が、それでも自分と美紅にだけは頼ってくれるのだとわかって嬉しかった。
「ゆかりちゃん……」
「ごめん、ほんとに、ありがとねー」
声をかけたルカの言葉を遮るように、いつものゆかりの明るい声。
「ごめんごめんー。いやー、みっともないね。さ、切り替えて、ラーメン行こう!」
「ゆかりちゃん、俺」
「いいから、いいから! さっきの、忘れて。ね?」
ゆかりが言って。だから、ルカもそれ以上何も言えなくて。
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