affection

月那

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my girl

my girl -6-

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 ルカはゆかりに話を促した。
「ほんっとー。さいてーなの、あたし」
 あれ? ちょっと飲んでる? 
 鼻にかかった声に、微酔を感じてルカが問うと。
「うん。美紅んちに七海がいるのわかってから、ビール一本だけ空けた」
 確かに、居場所がそこであればゆかりにとっては何の心配もないだろう。
 公園内に点在している外灯を辿りながら、ゆっくりと歩く。
 少し、強い風が吹いて。ワンピース一枚のゆかりの肩に、ルカは着ていたシャツを羽織らせた。
「あ、汗臭かったらごめん」
「ふふ。大丈夫ー。ありがとね。るーちゃん、優しい」
 笑顔が見れて、少し安心する。
「会社でね。ちょっとトラブってて。切り替えて帰って来たつもりだったんだけど、七海に八つ当たりしちゃって」また、表情が曇る。
「ダンナと別れた時に、これからは七海と二人きりなんだから絶対に喧嘩しないって決めてたのに。ダメだね、あたし。ななのほっぺ、ひっぱたいちゃった」
 ゆかりが右手を握りしめながら言う。
「えー、俺も清華も美紅にいつも蹴り飛ばされてるけど」
 少し思い詰めた様子だから。ちょっと茶化してみた。
「美紅はプロだもん。るーちゃんさやちゃん、すっごい上手に育ててる、子育てのプロだもん」
 いやいや、何だよその子育てのプロって。
「おかーさんって人種は全員子育てのプロでしょ」
「違うもん。あたしはダメ親なんだもん。七海のこと、上手に育ててあげられない。ママ、失格だもん」
「こら! それは違うでしょ。ななちゃんのお母さんはゆかりちゃんだけでしょ」
「だって! 七海が言ったんだもん。ママなんて嫌いって。美紅ちゃんがママだったら良かったのにって」
 そう言って、ゆかりはまた泣き始めた。
「いやいや。いやいや、ゆかりちゃん、そりゃ喧嘩したら誰だって言う奴じゃん。俺だって子供の頃は何度も美紅じゃなくてゆかりちゃんが母親だったら、なんて思ったことあるよ」
 さすがに、好きになってからは逆にゆかりが母親じゃなくて良かったと安心してますが。
「嘘だー」
「ほんとですー」
 泣き出したゆかりを再びハグして、背中をとんとんと慰める。
「でもね。いつもちゃんと、思ってるよ。母親が美紅で良かったって。殴られても蹴られても」
 クソガキな俺をここまで育ててくれて。それに、こんなかわいい人と友達でいてくれて。
「ななちゃんも、ゆかりちゃんがママなのが一番幸せだって、ちゃんとわかってるよ」
 胸の中、ゆかりが泣き止むのを待つ。
「いっぱい喧嘩していんじゃない? 思ったこと、言い合える方がいいと思うよ。それこそ、二人きりの親子なんだから」
「……るーちゃん」
「ん?」
「いい子に育ったねー。ほんとに、美紅は子育てのプロだ」
 泣き止んだらしいゆかりの言葉。
 でも“イイコ”なんてフレーズは、やっぱり少し痛い。
「あたし、七海のことこんなにイイコに育てる自信ないな」
「イイコじゃ、ないし」
 だから、ちょっとだけ、反論。
「何で? めっちゃイイコだよ。こんなおばさんの戯言に付き合ってくれて、疲れてるのにいつもあたしに振り回されてくれて」
 違う。イイコじゃ、ない。
 本当は大好きで。でもこんなにガキな俺だから相手にされないのが悔しくて。
 本当は、大好きだから、抱きたいって思ってるのに。
 下心 、隠してるだけなのに。
「ありがとね、るーちゃん」
 ゆかりがそっと、腕の中から離れた。
 それが少し寒くて……寂しくて。
 もっとずっと、腕の中に入れておきたいのに。
 自分だけがずっと、この人のことをこの腕の中で護っていたいのに。
「今日は、ななのこと、よろしくね。明日から、七海のママ、ちゃんと頑張ります」
 笑って敬礼なんてしてみせてくれるから。
 もう下心なんて抑え込むしかない。
 ルカは笑って頷くと、ゆかりを車に乗せて家まで送り届けた。
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