affection

月那

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situation

situation -2-

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「佐竹……」
「っと、ごめんごめん。こんなことタイキ達に愚痴っても仕方ないんだった。はい、お茶、どーぞ」
 重くなった空気を入れ替えるように、佐竹がエアコンを入れる。
「もう日中は暑いねー。クーラーなしだとサウナだね」
 またいつものふわふわとした表情に戻った佐竹は、二人に冷たい麦茶を、これまた美しいガラスの湯飲みに容れて提供してくれる。
 恐らく生まれついての上品な育ちが、佐竹の柔らかい雰囲気を作り上げているのだろう。
「そう言えば、二人は彼女いないの?」
 雰囲気を変えようとして言った佐竹に、
「いないよー。もう何年も」と軽くルカが答えた。
「うそだー、ルカ、モテそうじゃん」
「モテませんって。何でどいつもこいつもそう言うかな? 俺全然モテないのに」
「背が高くてイケメンだもん、絶対彼女いると思ってた」
「だからイケメンじゃねーって。背が高いのは認めるけど、顔はすっげー平凡じゃん」
 美紅には散々「ウドの大木」と言われ続けているし。
「ルカには昔から好きな人ってのがいるんだよな? 俺もまだ会ったことないから知らないけど、ずっとそう言ってる」
「それは坂本もじゃん」
「俺のはいいの、もうどうしようもないから。だから合コン行こうって誘ってるのに、ルカはいつも逃げるし」
「苦手なんだよ。坂本みたいに誰とでも話せるわけじゃないし」
「そう言えばルカって人見知りだよね。僕もそうだから人のこと言えないけど」
「そう。慣れないとなかなか喋れない。で、黙ってたら怖いって言われるしさ」
「大きいから?」
 言って佐竹が笑った。
 佐竹は百七十あるかないかくらいでそんなに大きい方ではない。
「いつからそんなに大きいの?」
「少なくとも高校で会った時は既に百八十近かったよな?」
「だっけ? 覚えてないけど、中学で七十五は超えてた。親父を越したのが高校入ってからだった気がするなー」
「お父さんが大きいんだ?」
「警察官やってるから、ガタイいいんだよ。身長も百八十越えだけど、体重も百キロ越えてる。まるで熊って感じ」
「凄い!」
 そう、小さいゆかりがルカの父の横にいると完全に親子に見える。まあ、年齢も美紅たちより十歳年上だから、そう見えても不思議はないのだが。
「お母さんは?」
「美紅さんもすらっとしてるよね? ちょっとモデルっぽい雰囲気」
「そおかー? まあ、背は佐竹くらいはあるから、小さくはないけど」
「美紅さん、綺麗だしね」
「綺麗かなー? 若いとは思うけど、綺麗なんて思ったことねーし」
「綺麗じゃん。まだ三十代だし」
「若っ! なにそれ。ルカのこと十代で産んだって感じ?」
「うん、高校中退して十八で俺産んでるから、今三十六。親父は四十六だけど」
「あ、じゃあルカと並んでたら彼女に見えるんじゃない?」
 佐竹が言うと、ルカがげんなりした表情を見せた。
「ないわー」
「んな嫌な顔しなくても」坂本が苦笑する。
 美紅とは親子というよりは友人に近い感覚があるから、実際親子に見られないこともなくはない。が、少なくとも絶対に彼女にはしたくないタイプの女で。
「だってさー。美紅って元ヤンだぜ? 俺がヤンキー嫌いなの坂本が一番知ってるだろ」
 父親譲りの真面目人間である。
 勿論今現在の美紅が“ヤンキー”感を消しているのはわかっているが、それでも過去の話を知っている以上、一番関わりたくないタイプの人間なのだ。
 母だけど。
「え? 待って。お父さん警察官でしょ? 何で元ヤンと警察官が結婚してんの? あり得なくない?」
「あり得なくないんだよ。だって、美紅を親父が補導したのが出逢いなんだから」
「うわ、そりゃ凄い出逢いだね」
「ま、あの人たちにはあの人たちなりにドラマがあるらしいからね」
 言ってお茶を飲み干した。
 そう、本当にドラマがあったのだ。そのドラマにはゆかりも重要人物として関わっていて、だからこそ美紅にとってのゆかりが“大恩人”なのだから。
「……ルカって面白いねえ」
 佐竹が感心したように言うと、坂本が「だろ、だろ」と共感を示した。
「何が面白いんだか。俺は到って真面目な人間ですよ。なーんのドラマもない凡人です」
「そうかなあ。ルカにもドラマありそうだけど」
「そのうち何かやらかしてくれるんじゃないか?」
「何かって何? そんなことより試合観ようぜー」
 そう言って、本題の試合観戦となり、学校を出る頃に注文していたピザも届き、結局午後の授業が始まるギリギリまで佐竹の家でのんびり過ごした。
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