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近付きたい
近付きたい -3-
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ゆかりが傍にいたから、いつも思っていた。自分は早く「大人」になりたいと。
中学生の自分も、高校生になったら横に並べるかもしれないと願って。
高校生の自分も、大人になったら、と。
いつも、いつもそう願って、彼女の隣に並びたくて。
「俺、大人、かなあ?」
「少なくとも、彼女が安心していられるくらいには、大人なんじゃない?」
「子供だから安心してる、の間違いじゃない?」
「子供だったら彼女が一緒にいないでしょ。少なくとも、子守なんて進んでしたくないんじゃない?」
うーん、それは判断が難しいトコかも。
少なくとも、ゆかりはずっと幼かった頃のルカの「子守」をしてくれていたのだから。
けれど。
高校の時のやり取りを思い出す。
いつも誕生日プレゼントをくれるから、何か欲しい物をあげたくて、誕生日に何が欲しいか訊いた時。
「じゃあるーちゃん、デートして」
「ゆかり、それ子守じゃん」
美紅がすかさず笑ったら、ゆかりが真剣な顔で
「子守じゃないもん。るーちゃんがデートしてくれたら、あたしは純粋に嬉しいもん」
と返してくれて。
思春期真っ只中だったから、しぶしぶ、といった態でデートに臨んだけれど、内心すごく嬉しかったのだ。
「今すぐに彼氏彼女って形にはなれないかもしれないけど、でも多少期待しててもいいと、俺は思うけど」
坂本が言ってくれて、ルカの気持ちに柔らかな光が差す。
「ま、とりあえず現状楽しいならそれでいんじゃね?」
「そりゃー、楽しいよ。なんか、おはよーとかおやすみとか、すっげーしょーもないスタンプでさえ、嬉しいしさ」
「つまりはそーゆーことの積み重ねだと思うけどね。楽しい時間を共有できてれば、関係性が悪い方向には絶対に向かわないわけだから」
「坂本ー」
「そのうち紹介しろよな」
「うーん、それはちょっと難しいかも」
「なんでだよ?」
「おまえ、絶対引くもん」
「何? そんな不細工なの?」
「違う!」
「デブとか?」
「容姿の問題じゃなくて」
「怖い人?」
「怖くないし、すげー美人だよ!」
「あ、じゃあ俺が横恋慕するとでも?」
「それはあるかも」
「まじで?」
「うそうそ。多分ない」
「じゃあ一体なんでだよ?」
「う……結構、つーかかなり年上だから」
「俺、年上好きだけど?」
「いや、坂本の守備範囲わかんねーけど、それ越えてる、と思う」
「二十代後半とか? まあある程度大人なんだろうとは思ってるけど。俺も好きな人、二十六だし」
坂本が今まで自分の好きな人ってのをあまり具体的に話さなかったので、年齢をつるっと喋ったことに驚いた。
「別にいいよ、そんなん気にしなくて。まあルカがどうしても会わせたくないならしょーがないけど」
「会わせたくないとは思ってないよ。とりあえず、彼女がちゃんと彼女になったら、会わせるし」
「ほほー。“ちゃんと彼女”にするつもりになった?」
「……けしかけてる?」
「うん、かなり煽ってる。ま、ルカが気合い入れて手に入れようと努力したらいいだけだと思うからね」
にやにやと笑いながら坂本が言って。
「まあ、多少は、頑張ってみようかなー」
歯切れは悪いけど、でも。もしも、自分のこの気持ちがゆかりにとって邪魔ならば、恐らく彼女はそっと遠ざかるだろう。
それは自分だけはきっとものすごく傷付く結果ではあるけれど、それでもそのことでゆかりが傷付くことがないのならば。
少しだけ、前に進んでも、いいのかもしれない。
坂本に押された背中が、どっちに向いているのかはわからないけれど、ゆかりさえ傷付かないのならば。
ゆかりの、もう一歩傍に、近付きたいと思った。
中学生の自分も、高校生になったら横に並べるかもしれないと願って。
高校生の自分も、大人になったら、と。
いつも、いつもそう願って、彼女の隣に並びたくて。
「俺、大人、かなあ?」
「少なくとも、彼女が安心していられるくらいには、大人なんじゃない?」
「子供だから安心してる、の間違いじゃない?」
「子供だったら彼女が一緒にいないでしょ。少なくとも、子守なんて進んでしたくないんじゃない?」
うーん、それは判断が難しいトコかも。
少なくとも、ゆかりはずっと幼かった頃のルカの「子守」をしてくれていたのだから。
けれど。
高校の時のやり取りを思い出す。
いつも誕生日プレゼントをくれるから、何か欲しい物をあげたくて、誕生日に何が欲しいか訊いた時。
「じゃあるーちゃん、デートして」
「ゆかり、それ子守じゃん」
美紅がすかさず笑ったら、ゆかりが真剣な顔で
「子守じゃないもん。るーちゃんがデートしてくれたら、あたしは純粋に嬉しいもん」
と返してくれて。
思春期真っ只中だったから、しぶしぶ、といった態でデートに臨んだけれど、内心すごく嬉しかったのだ。
「今すぐに彼氏彼女って形にはなれないかもしれないけど、でも多少期待しててもいいと、俺は思うけど」
坂本が言ってくれて、ルカの気持ちに柔らかな光が差す。
「ま、とりあえず現状楽しいならそれでいんじゃね?」
「そりゃー、楽しいよ。なんか、おはよーとかおやすみとか、すっげーしょーもないスタンプでさえ、嬉しいしさ」
「つまりはそーゆーことの積み重ねだと思うけどね。楽しい時間を共有できてれば、関係性が悪い方向には絶対に向かわないわけだから」
「坂本ー」
「そのうち紹介しろよな」
「うーん、それはちょっと難しいかも」
「なんでだよ?」
「おまえ、絶対引くもん」
「何? そんな不細工なの?」
「違う!」
「デブとか?」
「容姿の問題じゃなくて」
「怖い人?」
「怖くないし、すげー美人だよ!」
「あ、じゃあ俺が横恋慕するとでも?」
「それはあるかも」
「まじで?」
「うそうそ。多分ない」
「じゃあ一体なんでだよ?」
「う……結構、つーかかなり年上だから」
「俺、年上好きだけど?」
「いや、坂本の守備範囲わかんねーけど、それ越えてる、と思う」
「二十代後半とか? まあある程度大人なんだろうとは思ってるけど。俺も好きな人、二十六だし」
坂本が今まで自分の好きな人ってのをあまり具体的に話さなかったので、年齢をつるっと喋ったことに驚いた。
「別にいいよ、そんなん気にしなくて。まあルカがどうしても会わせたくないならしょーがないけど」
「会わせたくないとは思ってないよ。とりあえず、彼女がちゃんと彼女になったら、会わせるし」
「ほほー。“ちゃんと彼女”にするつもりになった?」
「……けしかけてる?」
「うん、かなり煽ってる。ま、ルカが気合い入れて手に入れようと努力したらいいだけだと思うからね」
にやにやと笑いながら坂本が言って。
「まあ、多少は、頑張ってみようかなー」
歯切れは悪いけど、でも。もしも、自分のこの気持ちがゆかりにとって邪魔ならば、恐らく彼女はそっと遠ざかるだろう。
それは自分だけはきっとものすごく傷付く結果ではあるけれど、それでもそのことでゆかりが傷付くことがないのならば。
少しだけ、前に進んでも、いいのかもしれない。
坂本に押された背中が、どっちに向いているのかはわからないけれど、ゆかりさえ傷付かないのならば。
ゆかりの、もう一歩傍に、近付きたいと思った。
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