affection

月那

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手、繋ごう

手、繋ごう -4-

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 自宅近くのインターから高速道路に乗って約一時間。
 割とのどかな田舎、という環境の中、広大な敷地面積でその建物があった。
 日曜日だというのに朝早くから家を出ようとするルカを美紅が訝しんだが、ゆかりが家まで車で迎えに来て、「ちょっと遠出してくるからるーちゃん借りるね」と伝えたらそれ以上の追及はなかった。
 最近やたらとゆかりと一緒にいるのだが、美紅がそれに対して何を思っているかはわからない。
 とりあえず、ゆかりが美紅に報告しているのだろうと、あえてルカからは話していないが。
「わー、久しぶり。なんか、リニューアルされて綺麗になってるー」
 ゆかりが言って、ゲートをくぐる。しかもさらっと受付で料金支払っているし。
「ゆかりちゃん、俺出すよ?」
「いいの、いいの。あたしが来たかったんだから。それよか、プラネタリウムはもう十四時からの部しか空いてないみたいだけど、いいかな?」
 七月に入ったが、まだ夏休みには早いのでそんなに客はいないだろうと予想していたが、どうやら日曜日は甘くないらしい。
 開館時間が九時で、現在十時。というそんなに遅くはない時間ではあるが、家族連れやカップルがかなりの人数来館している。
「お昼ご飯食べて、のんびりしてたら丁度いいんじゃない?」
「オッケー。じゃあ、そのプログラム予約するね」
 プラネタリウムだけではなく、常設展示とイベント展示があり、どうやら全てがセットになっている入場券があるらしい。しかも、建物の周囲には緑あふれる公園や湖もあり。
 プラネタリウム以外は再入場可、ということで、チケット替わりに手の甲にスタンプを押された。
「あ、常設展で恐竜の化石が展示されてるみたい。るーちゃん、まだ恐竜好き?」
「好きとか嫌いとか考えたこともなかったけど、嫌いじゃないよ」
「それじゃあ、常設展から見て行こう。順路はこっちみたい」
 ゆかりは予想以上にはしゃいでいる様子で、ルカは自然に手を繋がれて従った。
 前回来た時もそうだったのだろう。おそらく今、彼女の中での自分は小学生。
「凄いねー! この辺でも化石が発掘されたって書いてあるよ」
 小さい物から大きい物まで、レプリカではあるがいろんな恐竜の骨が展示されていて、一つずつ眺めているだけでも結構面白い。
 家族連れが多く、小学生は何やらスタンプラリーでもやっているらしく、数人の塊がルカ達の周りを駆け抜けて行った。
 そんな小学生がゆかりにぶつかりそうになり、避けようとして腰を引き寄せる、なんて嬉しいハプニングもあり。
 何でもないことだけど、小さな彼女を護っているようで、“小学生”な自分を払拭できているみたいに感じられた。
「あ、見てみて、火山の爆発を体験だって! 何だろう?」
 体験型アトラクションもあり、そんな時は小学生たちの列に紛れて並んでみる。
 中にはカップルもいるので、ルカ達も浮くことはなくて。
 順番が来ると係員が自然に「彼氏さん」なんて言ってくれるのが面映ゆいけれど嬉しかった。
 そういった、ちょっと堅い雰囲気もある恐竜の化石や地球環境などの展示がメインの常設展よりも、期間限定でやっている企画展の方がより一層来客は多いようで。
 順路を辿って一度ロビーに出ると、中央にフリーラウンジを挟んで企画展の入り口があったが、そちらには入るだけでも既に少し列ができており。
「凄い人だね。大人気みたい」
「宇宙の旅ってテーマらしいよ。結構凝ったイベントになってるみたいだね。ほら、アトラクションも面白そう」
 パンフレットを二人で覗き込んで。
 顔を突き合わせながら、列に並んでいる時間は全然苦ではなく、そんな待ち時間さえもが楽しくて。
 全体が宇宙ステーションであるという設定で、そこから旅をするという態の企画らしい。
 常設展以上に体験型アトラクションも多く、中には子供よりも付き添いの大人向けでは、という内容の乗り物もあり。
 そんな、カップル向けのアトラクションでは当たり前のようにゆかりを膝に乗せてみたり、手をしっかり繋いでみたり。
 とりあえず、間違っても親子には見られないということがわかって何よりも喜んでしまうルカだった。
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