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手、繋ごう
手、繋ごう -5-
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企画展の半分くらいを見て回った時点でお昼となり、一度フリーラウンジに戻る。
「お弁当、作って来ちゃった」
ロビー横のコインロッカーに預けていた大荷物はそれだったのか、とルカが驚く横でゆかりが広げたお弁当には、色とりどりの美味しそうなお惣菜が入っていて。
「ゆかりちゃん、頑張ったねえ」
「でしょ、でしょ? なんて、実はななも土日はお弁当持って部活行ってるから、そのついでなんだけどね」
「吹奏楽だっけ? 気合入ってるね」
「うん、コンクールで結構いい線行ってるらしくて。夏休みもずっと練習するんだって」
清華も七海と同じ部活。何から何までまるで双子だ。
二人ともそれが当たり前のように育っているから、七海もルカを“兄”扱いである。
そんなところも可愛いと思えるのだから、実際自分は“双子の兄”だと自覚しているわけだけど。
「手作り弁当なんて何年振りだろ」
「あれ? でも高校の時はお弁当だったでしょ?」
「いや、朝練とかあったから基本学食。学食ない日なんて、コンビニで何か買いな、つって金渡されて終わりだったし」
「あは、美紅らしい」
「そのくせ、今清華にはちゃんと弁当作ってやってるみたいだし。何なんだろう、俺の扱い」
「違うよー、きっと量だよ。ななのお弁当だって、ダイエットだからってこんなちっちゃいんだよ」
両手で小さなお弁当を作って。
今ここで広げているお弁当箱の四分の一くらいのサイズ。
「だから、今日持ってくるお弁当の量って、よくわかんなくて。るーちゃん、足りるかな?」
鶏の唐揚げ、ミートボールに、アスパラガスのベーコン巻。卵焼きにたこさんウインナー、といった定番の中に、渋くあるのがきんぴらごぼうやホウレン草の胡麻和え。
二段目のお重にはおにぎりがしっかりと入っていて。
「十分だよ。ゆかりちゃん、早起きしたんじゃない?」
「んーん、いつも通りだよ。主婦歴長いからね、ちゃんと作り置きとかしてるし、体力配分は抜かりないわよ」
ふふん、と得意げに笑った。
実際お弁当はかなりの量で、食べ終わる頃にはかなりの満腹になっていた。
「ゆかりちゃん、ちゃんと食べた? なんか俺ばっか食ってる気がするけど」
「食べたよー。にしても、やっぱり男の子って凄い食べるのね。いつものあたしとななの分考えても、二倍くらい持って来たつもりだったけど、綺麗になくなっちゃった」
「うん、ごめん、食べ過ぎた。だってむっちゃ旨いし」
「ほんと?」
「いや、こんなの嘘ついてもしょーがないじゃん」
ルカが言ったら、ゆかりがほっとしたのか極上の笑みを見せてくれて。
そのあまりの可愛さに、思わず抱きしめてしまっていた。
「って、えっと、ご馳走様でした、のハグです」
自分の行動に驚いて、慌てて離れる。
「俺コーヒー買って来る」
赤くなってしまった自分を隠すように、自動販売機へと逃げた。
ゆかりも少しびっくりした表情を見せてはいたが、いつものようににっこり笑って「あたし、ブラック無糖ね」なんて軽く言ってくれたので安心する。
おかしい。自制がきかなくなっている気がする。
自動販売機の前で、頭を抱え込む。
小学生だったルカがどんな行動を取っていたか、なんて当然記憶にはない。が、ゆかりの中にあるその“小学生のるーちゃん”が、自分の中で凄く邪魔で。
それが腹立たしいのか、とにかく“今のルカ”としてゆかりの中の過去を上書きしたくなるのだ。
けれども、そうすることで、ルカの下心に気付いたゆかりが逃げて行くのが怖い、という不安があるのも確かで。
「何がしたいんだ、俺は」
小さくつぶやいた。
声に出すと、自分の行動があまりにも陳腐で、大きく深呼吸していつもの“理性の鎧”を纏いなおした。
「お弁当、作って来ちゃった」
ロビー横のコインロッカーに預けていた大荷物はそれだったのか、とルカが驚く横でゆかりが広げたお弁当には、色とりどりの美味しそうなお惣菜が入っていて。
「ゆかりちゃん、頑張ったねえ」
「でしょ、でしょ? なんて、実はななも土日はお弁当持って部活行ってるから、そのついでなんだけどね」
「吹奏楽だっけ? 気合入ってるね」
「うん、コンクールで結構いい線行ってるらしくて。夏休みもずっと練習するんだって」
清華も七海と同じ部活。何から何までまるで双子だ。
二人ともそれが当たり前のように育っているから、七海もルカを“兄”扱いである。
そんなところも可愛いと思えるのだから、実際自分は“双子の兄”だと自覚しているわけだけど。
「手作り弁当なんて何年振りだろ」
「あれ? でも高校の時はお弁当だったでしょ?」
「いや、朝練とかあったから基本学食。学食ない日なんて、コンビニで何か買いな、つって金渡されて終わりだったし」
「あは、美紅らしい」
「そのくせ、今清華にはちゃんと弁当作ってやってるみたいだし。何なんだろう、俺の扱い」
「違うよー、きっと量だよ。ななのお弁当だって、ダイエットだからってこんなちっちゃいんだよ」
両手で小さなお弁当を作って。
今ここで広げているお弁当箱の四分の一くらいのサイズ。
「だから、今日持ってくるお弁当の量って、よくわかんなくて。るーちゃん、足りるかな?」
鶏の唐揚げ、ミートボールに、アスパラガスのベーコン巻。卵焼きにたこさんウインナー、といった定番の中に、渋くあるのがきんぴらごぼうやホウレン草の胡麻和え。
二段目のお重にはおにぎりがしっかりと入っていて。
「十分だよ。ゆかりちゃん、早起きしたんじゃない?」
「んーん、いつも通りだよ。主婦歴長いからね、ちゃんと作り置きとかしてるし、体力配分は抜かりないわよ」
ふふん、と得意げに笑った。
実際お弁当はかなりの量で、食べ終わる頃にはかなりの満腹になっていた。
「ゆかりちゃん、ちゃんと食べた? なんか俺ばっか食ってる気がするけど」
「食べたよー。にしても、やっぱり男の子って凄い食べるのね。いつものあたしとななの分考えても、二倍くらい持って来たつもりだったけど、綺麗になくなっちゃった」
「うん、ごめん、食べ過ぎた。だってむっちゃ旨いし」
「ほんと?」
「いや、こんなの嘘ついてもしょーがないじゃん」
ルカが言ったら、ゆかりがほっとしたのか極上の笑みを見せてくれて。
そのあまりの可愛さに、思わず抱きしめてしまっていた。
「って、えっと、ご馳走様でした、のハグです」
自分の行動に驚いて、慌てて離れる。
「俺コーヒー買って来る」
赤くなってしまった自分を隠すように、自動販売機へと逃げた。
ゆかりも少しびっくりした表情を見せてはいたが、いつものようににっこり笑って「あたし、ブラック無糖ね」なんて軽く言ってくれたので安心する。
おかしい。自制がきかなくなっている気がする。
自動販売機の前で、頭を抱え込む。
小学生だったルカがどんな行動を取っていたか、なんて当然記憶にはない。が、ゆかりの中にあるその“小学生のるーちゃん”が、自分の中で凄く邪魔で。
それが腹立たしいのか、とにかく“今のルカ”としてゆかりの中の過去を上書きしたくなるのだ。
けれども、そうすることで、ルカの下心に気付いたゆかりが逃げて行くのが怖い、という不安があるのも確かで。
「何がしたいんだ、俺は」
小さくつぶやいた。
声に出すと、自分の行動があまりにも陳腐で、大きく深呼吸していつもの“理性の鎧”を纏いなおした。
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