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deep end
deep end -5-
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旅館はなかなか豪華だった。
海水浴場から車で十分程内陸に向かった先にあったのだが、海水浴客狙いの旅館のようで、ロビー横の売店には浮輪や水着なども売られている。
「部屋は、ツインが男部屋で和室が私達女の子部屋だから」
「女の子ってあんた」
「オンナノコ部屋だから!」
揚げ足取りに突っ込んだルカを一睨みした美紅が語気を強めて言い直して。
「お風呂入ってー、七時に夕食ね。二階の“雲海”ってお部屋だって。るーちゃんと田所さんも七時に“雲海”に来てね」
もう、何もかも美紅とゆかり仕切りで総て決まっているようで。
「遅刻したら夕飯ないから」
「はいはい。あ、温泉だっけ?」
「うん。源泉かけ流しってゆってたよ。二十四時間いつでも入れるらしいから、ご飯の後も入りに行っていいし」
「ゆかり、ご飯の後はラウンジで一緒に飲もうよー」
「いいねー」
朝まで飲む気だな、と親父と目を合わせて。
とりあえず、海上りの体を洗い流したいのもあり、それぞれの部屋に入ってから温泉へと向かった。
「さて、と。風呂はどこだっけ?」
和室のあるフロアとルカ達のツインルームのあるフロアが別だったので、父と二人で部屋に荷物だけ投げて大浴場を目指す。
「一階まで下りて、別館にあるらしいよ」
「温泉なんて久しぶりだな」
「小学校の頃はよく行ってたよね」
「おまえ、小さい頃からサウナ好きだったもんな」
「そうそう。でも場所によっては小学生はダメとか言われてへこんでた」
あまり、父親とゆっくり話すことなんてないから。珍しくそんな昔話なんてしながら。
大浴場は、まだそんなに人はいなくて。
日本庭園的な露天風呂で、ぼーっと二人で温まる。
「……さやとか、七海ちゃんには、もうカレシとかがいるのかな?」
ぼそ、と親父の呟きが聞こえて驚く。
「え、まだ中学生だろ?」
「だよなー。まだ、いないよなー」
「と思うけど」
「いや、可愛いだろ、あの二人」
「……ですかね?」
「可愛いんだよ。だからほんと、変なムシが付かないか、心配で」
「今はやたらと部活やってるし、そんなのはないと思うけど」
「部活はでも、男の子もいるだろ?」
「そりゃ、いるだろうけど。そんなに心配しなくてもよくね?」
「心配するんだよ。おまえ、心配じゃないの? 清華に彼氏とか、そんなの想像するだけで頭に来るけど」
「親バカだね」
「親バカになるよ。当たり前だろ」
「俺は?」
「おまえは勝手にすりゃいいじゃん」
でしょうね。
「ゆかりちゃんが好きなんだろ?」
「!」
美紅か! 美紅が言ったのか?
「見てればわかる」
……そんな、だろうか?
少し、反省。まさか親父にまで言われるとは。
「何だろうね、年上が好きってのは。まあ、ママも年上の俺と結婚してるし、そこはママに似たんだろうねえ」
「……かなあ?」
「ゆかりちゃん、可愛いからね。あの子は昔から賢い子だったし。お前の手に負える子じゃないだろうけど」
親父も、その意見ですか。
がっくり、くる。当たり前だけど。ほんとにゆかりは“高嶺の花”だから。
「ま、それでもお前が成長するには、ゆかりちゃんもいいのかもしれないけど」
「美紅にも言われた」
「うん、遊んでもらえば?」
「…………」
どういう夫婦だよ、二人揃って!
「さて、と。腹も減ったしそろそろ上がろう」
海水浴場から車で十分程内陸に向かった先にあったのだが、海水浴客狙いの旅館のようで、ロビー横の売店には浮輪や水着なども売られている。
「部屋は、ツインが男部屋で和室が私達女の子部屋だから」
「女の子ってあんた」
「オンナノコ部屋だから!」
揚げ足取りに突っ込んだルカを一睨みした美紅が語気を強めて言い直して。
「お風呂入ってー、七時に夕食ね。二階の“雲海”ってお部屋だって。るーちゃんと田所さんも七時に“雲海”に来てね」
もう、何もかも美紅とゆかり仕切りで総て決まっているようで。
「遅刻したら夕飯ないから」
「はいはい。あ、温泉だっけ?」
「うん。源泉かけ流しってゆってたよ。二十四時間いつでも入れるらしいから、ご飯の後も入りに行っていいし」
「ゆかり、ご飯の後はラウンジで一緒に飲もうよー」
「いいねー」
朝まで飲む気だな、と親父と目を合わせて。
とりあえず、海上りの体を洗い流したいのもあり、それぞれの部屋に入ってから温泉へと向かった。
「さて、と。風呂はどこだっけ?」
和室のあるフロアとルカ達のツインルームのあるフロアが別だったので、父と二人で部屋に荷物だけ投げて大浴場を目指す。
「一階まで下りて、別館にあるらしいよ」
「温泉なんて久しぶりだな」
「小学校の頃はよく行ってたよね」
「おまえ、小さい頃からサウナ好きだったもんな」
「そうそう。でも場所によっては小学生はダメとか言われてへこんでた」
あまり、父親とゆっくり話すことなんてないから。珍しくそんな昔話なんてしながら。
大浴場は、まだそんなに人はいなくて。
日本庭園的な露天風呂で、ぼーっと二人で温まる。
「……さやとか、七海ちゃんには、もうカレシとかがいるのかな?」
ぼそ、と親父の呟きが聞こえて驚く。
「え、まだ中学生だろ?」
「だよなー。まだ、いないよなー」
「と思うけど」
「いや、可愛いだろ、あの二人」
「……ですかね?」
「可愛いんだよ。だからほんと、変なムシが付かないか、心配で」
「今はやたらと部活やってるし、そんなのはないと思うけど」
「部活はでも、男の子もいるだろ?」
「そりゃ、いるだろうけど。そんなに心配しなくてもよくね?」
「心配するんだよ。おまえ、心配じゃないの? 清華に彼氏とか、そんなの想像するだけで頭に来るけど」
「親バカだね」
「親バカになるよ。当たり前だろ」
「俺は?」
「おまえは勝手にすりゃいいじゃん」
でしょうね。
「ゆかりちゃんが好きなんだろ?」
「!」
美紅か! 美紅が言ったのか?
「見てればわかる」
……そんな、だろうか?
少し、反省。まさか親父にまで言われるとは。
「何だろうね、年上が好きってのは。まあ、ママも年上の俺と結婚してるし、そこはママに似たんだろうねえ」
「……かなあ?」
「ゆかりちゃん、可愛いからね。あの子は昔から賢い子だったし。お前の手に負える子じゃないだろうけど」
親父も、その意見ですか。
がっくり、くる。当たり前だけど。ほんとにゆかりは“高嶺の花”だから。
「ま、それでもお前が成長するには、ゆかりちゃんもいいのかもしれないけど」
「美紅にも言われた」
「うん、遊んでもらえば?」
「…………」
どういう夫婦だよ、二人揃って!
「さて、と。腹も減ったしそろそろ上がろう」
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