貧乏令嬢、山菜取りのさなかに美少年を拾う

千堂みくま

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お付き合いすることに

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「冗談でしょ? そんな事したら、他の女子に何を言われるか……」

「リヴィはさ。他の女子と僕、どちらが大切なの? 僕らは家族だろ。君の父上だって面倒を見ろと言っていたじゃないか」

「それはそうだけど……だからって」

「君も以前、私は姉だからアーサーの面倒見ると言ってた」

「……」

「決まりだね。じゃあ今からスタートだ。他の人に見せ付けるためにも、手を繋いで帰ろう」

 何も言わないのを了承と捉えたのか、アーサーは私の手を握った。私はただ呆然としていた。

 アーサーが賢い子なのは分かっていたけど、よくもそんなにペラペラと……。アーサーって見た目は綺麗なのに中身は真っ黒なんじゃないの。どうしてこんな少年を拾っちゃったんだろう。こんな悪魔みたいな小賢しい厄介な少年を……。

「リヴィ、アーサー! 一緒に帰りましょ」

 後ろからさらに厄介な人物が来た。サマンサだ。

「相変わらず仲がいいわねぇ。そんな事してるとまた嫉妬されるんじゃないの」

「嫉妬されるような仲だからね。僕たち、付き合う事にしたんだ」

「ええっ!? いつから付き合ってたの?」

「ついさっきだよ。僕から告白して決まったんだ。ねえ、リヴィ」

「え、あ、はは……ハイ」

 なるべく自然に笑ったつもりだけど、アーサーは気に入らなかったらしい。ジトっとした目で私を見ている。

「そっ、そうなの! 私たちお付き合いするの」

「へぇ~。まぁ頑張ってね、リヴィ。きっとこれから大変よぉ」

 サマンサはにやにや笑いながら十字路を右に曲がった。彼女の家は向こう側にあるらしい。こんなにすぐ別れるなら一緒に帰る意味なんてほとんど無いと思うけど、ただ単にちょっかいを掛けたかったんだろうな。

 私はサマンサの小さくなる後姿を見ながら溜め息をついた。彼女に知られたとなると、明日の朝にはもうクラス中…いや、学年中に広まってるかもしれない。

「アーサー、ロイクにはこの事を話すの? ロイクだって同じ学校なんだからいつかバレるよ」

「ロイクだけじゃなくて、家族みんなに話した方がいいだろ。僕らは迷惑をこうむっていて、それに対抗するだけだ。説明すればきっと分かってくれるさ」

 まあそうだろうな。父はきっとアーサーを守ろうとするだろう。父にとってアーサーは金のなる木のような物で、今後も大切に育てようと思ってるだろうから。

 夕飯の時、アーサーは予告通りに家族の前で話し出した。

「父上、母上。僕は学校で女生徒に絡まれ、毎日大変な思いをしています。女生徒を避けるために、リヴィと仮のお付き合いをしている事にしたいのです。どうかお願いします」

 アーサーが頭を下げると、父はうんうんと頷いた。アーサーが来て以来、父はすっかり彼の言いなりというか、アーサーが言うことなら何でも聞いてあげようとする。本来の子供である私やロイクなどそっちのけで。

「それなら仕方が無い。リヴィ、学校でアーサーを守ってやるんだぞ」

「……はぁい」

 少し不満そうな声が出てしまったけど、これぐらいは大目に見て欲しい。

「ロイク、学校ではこの事は秘密だぞ。僕たちが平穏に学生生活を送れるかどうかは、君にかかっている」

「分かってるよ、大丈夫!」

 ロイクまで乗り乗りだ。アーサーは相手によってどのように話を持ち出せば上手くいくかを心得ているらしい。怖すぎる。私はとんでもない子を拾ってしまった……。


 夜になって二階へ上がると、私が使っていた部屋に新しいベッドが置いてあった。何だろうこれは。いつ買ったんだろう。私は隣のロイクの部屋に入り、弟二人の様子を見た。くっ付いていたベッドは離され、窓ぎわに並んで置いてある。

「ねえ、ベッド増えてるみたいなんだけど」

「そうだよ~お父さまがさ、お金が増えたからって新しいの買ってくれたんだよ!」

「へえ……」

 新しいベッドを買うほど余裕が出てきているとは知らなかった。

「でもアーサーが新しいの使わなくていいの? 元はあなたのアイデアのおかげでベッドが買えた訳でしょ」

「ああ、いいよ。レディーファーストだ。それに君にはこれから大変な仕事をしてもらうから、迷惑料みたいなものだよ」

「あ、ありがとう……」

 私はお礼を言って弟たちの部屋から自分の部屋に戻った。新しいベッドはふかふかで柔らかくて、座っただけで嬉しくなってしまった。

 なんだかんだ言ってアーサーはすごい。同年代の男子は「レディーファースト」なんて言葉はまず使わないし、これから私に迷惑がかかることも見越してベッドを譲るなんて。他の男子よりも色んな意味で飛びぬけている。これはモテる訳だ。

 私はベッドに寝転がって目を閉じた。明日からは大変だろうけど、何とか頑張ろう。
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