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勉強します
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部屋に戻ってきたモナが明かりを灯し、夕食の用意が始まった。テーブルに並べられた料理はどう見ても一人分じゃない。こんなに食べられない、どういう事なんだろうかと思っていると、部屋にカイザーがやってきた。彼もここで食べるらしい。
「リヴィ。元気にしてた?」
今朝も会ったのに変なことを聞いてくる。そんなすぐに病気になるはずないのに。
私は食べながら答えた。
「元気だよ。でも部屋の外に出たら熊みたいな人がいて落ち着かなかった」
「ああ、騎士のこと? 護衛だと思ってね。君のことはまだ公にしていないから、何かあったら困るだろ」
すでに何かされてる気分なんですけど。
「今朝、いつかリンゼイへ行くって言ってたでしょ。いつかっていつ? あなたは忙しそうだから私だけで先に帰ってもいい?」
カイザーはきょとんとしている。何なんだろあの顔。思いもよらない事を言われました、みたいな。
何回か目を瞬かせた彼は、笑いながら明るく言った。
「リヴィはもう僕の婚約者になっているから、君一人で自由に国外に出ることはできないよ」
「……ん? なんて言ったの? 婚約者とか何とか聞こえたけど」
「そうだよ。今朝、書類にサインしただろう。あれで君は僕の婚約者になったんだ。同時に君の身元も保証されたから、安心するといい」
「あ、安心なんか出来るかぁ! 卑怯じゃないの、言葉が分からないからってだまして婚約するなんて!!」
「君を守るために必要な処置だったんだよ。他国の令嬢が王宮にいたって、ただの寵姫になってしまう。リンゼイ伯爵はそれほど力もないからね」
「寵姫とか、気持ち悪いこと言わないで!」
「……そんなに僕のことが嫌い? もう家族としての愛情もないのか?」
カイザーは切なそうに顔を歪めた。アクアマリンのような瞳が潤んでいる。
「……やめてよ。今はそんな事を言いたいわけじゃないわ……。しばらく一人にして。頭を冷やしたいの」
「―――分かった。ごめんね、リヴィ」
カイザーは部屋から出て行き、一人きりになった私は考えた。ごめんねって何よ。そんな言葉で許されるとでも思ってるの?
無理やり連れてきて軟禁して、騙して婚約させるなんて、最低!!
私は椅子から立ち上がりカーテンを開けた。ドアの外は常に騎士が見張っていて自由に出られないけど、窓から脱出するのはどうだろう。
「うそ……」
窓を見た私はへなへなと床に座り込んだ。
高級そうな一枚ガラスの外側には鉄格子がはまっていて、人間が出入りできるような隙間なんかない。
本当に閉じ込められてるんだ。この国の王様になる人が、私を閉じ込めているんだ……。
私は床にうずくまって泣き出していた。悔しくて悲しくて、涙が止まらない。家族なんて気にせずに家から逃げればよかった、カイザーなんか拾うんじゃなかった。
「言葉さえ知っていれば、騙されなかったのに……」
スカートで顔をごしごしと拭き、顔を上げる。
エフレイン語の勉強をしよう。もう利用されないために。騙されないために。
どれだけ時間がかかっても、絶対にここから逃げ出してやる!!
翌日から私の猛勉強が始まった。こんなに本気で何かを学ぼうと思ったのは初めてだ。人生がかかっているからかもしれない。
私が元々使っていたナイジェル語とエフレイン語、文字はほとんど一緒だった。でも綴りが違うので単語を覚えなきゃならない。あと、文法がしっかり決まっているところが結構厄介だった。
私はモナにしつこく話しかけ、彼女の言葉や発音を聞き取ろうと訓練した。モナは辛抱強く私に付き合い、エフレイン語の簡単な絵本や新聞まで持ってきてくれた。嬉しかった。
「ありがとう」
お礼を言うとモナは頷き、「どういたしまして」と返してくれる。だんだんモナの言葉を聞き取れるようになり、私はますますやる気を出していった。
カイザーは暇を見つけては私の部屋にやって来て、一緒にお茶を飲んだり本の読み聞かせをしたりする。ちょうどいいので私は奴を利用する事にした。私を騙した王様なんか、踏み台にしてやる。
この時には既にカイザーは王様になっていたので、私は心の中で彼を『あいつ』とか『奴』とか、『王様』とか呼んでいた。
「この国で暮らす気になってくれたんだな。嬉しいよ」
微笑みながら言うカイザー。
私は内心、そんな訳あるか!と思いつつ、何も言わなかった。ただ穏やかに笑うだけにした。私だってそんなにアホじゃない、勉強する理由を正直に話すわけがない。私を拉致して、詐欺まで働いた相手に。
「リヴィ。元気にしてた?」
今朝も会ったのに変なことを聞いてくる。そんなすぐに病気になるはずないのに。
私は食べながら答えた。
「元気だよ。でも部屋の外に出たら熊みたいな人がいて落ち着かなかった」
「ああ、騎士のこと? 護衛だと思ってね。君のことはまだ公にしていないから、何かあったら困るだろ」
すでに何かされてる気分なんですけど。
「今朝、いつかリンゼイへ行くって言ってたでしょ。いつかっていつ? あなたは忙しそうだから私だけで先に帰ってもいい?」
カイザーはきょとんとしている。何なんだろあの顔。思いもよらない事を言われました、みたいな。
何回か目を瞬かせた彼は、笑いながら明るく言った。
「リヴィはもう僕の婚約者になっているから、君一人で自由に国外に出ることはできないよ」
「……ん? なんて言ったの? 婚約者とか何とか聞こえたけど」
「そうだよ。今朝、書類にサインしただろう。あれで君は僕の婚約者になったんだ。同時に君の身元も保証されたから、安心するといい」
「あ、安心なんか出来るかぁ! 卑怯じゃないの、言葉が分からないからってだまして婚約するなんて!!」
「君を守るために必要な処置だったんだよ。他国の令嬢が王宮にいたって、ただの寵姫になってしまう。リンゼイ伯爵はそれほど力もないからね」
「寵姫とか、気持ち悪いこと言わないで!」
「……そんなに僕のことが嫌い? もう家族としての愛情もないのか?」
カイザーは切なそうに顔を歪めた。アクアマリンのような瞳が潤んでいる。
「……やめてよ。今はそんな事を言いたいわけじゃないわ……。しばらく一人にして。頭を冷やしたいの」
「―――分かった。ごめんね、リヴィ」
カイザーは部屋から出て行き、一人きりになった私は考えた。ごめんねって何よ。そんな言葉で許されるとでも思ってるの?
無理やり連れてきて軟禁して、騙して婚約させるなんて、最低!!
私は椅子から立ち上がりカーテンを開けた。ドアの外は常に騎士が見張っていて自由に出られないけど、窓から脱出するのはどうだろう。
「うそ……」
窓を見た私はへなへなと床に座り込んだ。
高級そうな一枚ガラスの外側には鉄格子がはまっていて、人間が出入りできるような隙間なんかない。
本当に閉じ込められてるんだ。この国の王様になる人が、私を閉じ込めているんだ……。
私は床にうずくまって泣き出していた。悔しくて悲しくて、涙が止まらない。家族なんて気にせずに家から逃げればよかった、カイザーなんか拾うんじゃなかった。
「言葉さえ知っていれば、騙されなかったのに……」
スカートで顔をごしごしと拭き、顔を上げる。
エフレイン語の勉強をしよう。もう利用されないために。騙されないために。
どれだけ時間がかかっても、絶対にここから逃げ出してやる!!
翌日から私の猛勉強が始まった。こんなに本気で何かを学ぼうと思ったのは初めてだ。人生がかかっているからかもしれない。
私が元々使っていたナイジェル語とエフレイン語、文字はほとんど一緒だった。でも綴りが違うので単語を覚えなきゃならない。あと、文法がしっかり決まっているところが結構厄介だった。
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「ありがとう」
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