28 / 33
婚約どうするの
しおりを挟む「今日はどうします?」
「僕は君と、もっと話がしたい」
「……じゃあ公園を散歩でもしましょうか」
私とカイザーは並んで公園の道を歩き出した。カイザーは当たり前のように私の手を握っている。
学校からの帰り道でもこうして歩いたっけ。あの時とは比べようもないぐらいカイザーの手は大きくなっていて、ああ大人になったんだなぁと思った……でも今は微妙な気持ちだ。男同士で手を繋いでると不思議そうに見てくる人もいるし、ちょっとやめてほしい。
カイザーが元気だったらやめてと突き放せるのに、隣で痩せこけた顔をしているから厳しいことを言えない。全く、なんでこんなに痩せたんだか。
「ユリアンは今、何歳なんだ?」
「えっ? ええ、と……今年で15です」
本当はあと数ヶ月で17になるけど、見た目が少年ぽいので年齢も合わせてみた。男になった私の顔はどちらかと言うと中性的で幼い感じなのだ。だけど話してみると幼さがないので、仕事でも差し支えなく働けている。ゴダでの経験があったのもよかった。
「今年15なら僕の一つ下だな。君のエフレイン語は少し他国のなまりが混じっているように感じるが、出身を聞いてもいいだろうか?」
「……。母が隣の国の出身なんです。僕は元々ゴダに住んでて」
「ああ、ゴダに。じゃあ冬は寒かっただろう」
「ええ、とっても」
冬にホテルから逃げ出した時、寒さで死ぬかと思ったっけ。あの時のおばあさんは元気だろうか。あなたのおかげで今でも平穏に暮らしています。
カイザーが急に足を止めたので、手を繋いでいた私は彼に引っぱられて後ろにのけ反るような姿勢になった。何で急に止まるんだ。
「……本当に……」
「え?」
「本当に似ているな。顔も、話し方も」
立ち止まったカイザーが私の方へゆっくりと顔を近付けてくる。何するつもりなんだろう。まさかキスとかじゃないよね? 男にキスとかしないよね?
私は一応ギリギリまで待とうとしたけれど、カイザーの鼻と私の鼻が触れたときに我慢の限界を迎えた。カイザーの口元に手を当ててぐいっと遠ざける。
「……何してるんですか? 僕は男ですよ。それに婚約者だっていますから」
目の前にいるんだけどね。問題の婚約者が。
「婚約者がいるのか。どんな人なんだ?」
「どんなって……。見た目はすごく綺麗なんですけど、しつこい人です」
「しつこいのか」
「ええ、とっても。嫌がる僕を、無理やり自分の故郷まで連れてくるような人です」
「大変そうだな」
「…………………………。ついでに言うと、婚約もいつの間にか決まってました。ひどい話でしょう」
「ひどいな。もし良ければ、僕が君の婚約を解消してやろうか?」
「え?」
「僕は王宮にツテがあるから……君がどうしても嫌というのなら、婚約をなかったことにも出来る」
他人の婚約は解消しようとしてくれるのか。じゃあ自分の婚約はどう思ってるんだろう。
エフレインの王にはまだ婚約者がいない事になっているようだし、そろそろ新しい人を見つけたらどうかな。王様から逃げ出した失礼な婚約者なんてもう忘れたらいいのに。
「僕の婚約者のことはもういいです。大丈夫です。でもあなたは自分の婚約者をどうするんですか?」
「リヴィのことか?」
「はい。リヴィさんと婚約したのは大失敗って言ってましたよね。解消しないんですか?」
カイザーは私から目を逸らし、暗い顔でうつむいている。元気のない彼に厳しいことを言うのは可哀相な気もするけど、どうしてもこれだけは聞いておきたかった。
あなたは私をどうするつもりなの。
捕まえたらまた王宮の中に閉じ込めるつもりなの?
道のわきにたたずむ私たちの横を鳥や人が通りすぎて行く。私はカイザーを見つめたまま、静かに彼の答えを待っていた。
「僕は……僕はまだ、リヴィのことが諦められない。でももし彼女に会えたら……」
顔を上げたカイザーは真っ青だった。口にするのがつらいのかもしれない。
「どうしてもリヴィが僕を好きになれないと言うのなら、その時は婚約を解消しようと思っているよ……」
カイザーの目には涙がにじんでいる。私はハンカチで彼の目じりにたまった涙を拭いてあげた。
つらい事を言わせてごめんね、王様。でもあなたもちゃんと反省してくれたみたいで良かった。
「でも解消したあと、僕はどうやって生きていけばいいんだろう。何を喜びにして生きていけばいいのか分からないよ……。君はどう思う?」
重っ。何て重たい男なんだ。ほんとに何でこんな奴を拾っちゃったんだろう。
7
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
召しませ、私の旦那さまっ!〜美醜逆転の世界でイケメン男性を召喚します〜
紗幸
恋愛
「醜い怪物」こそ、私の理想の旦那さま!
聖女ミリアは、魔王を倒す力を持つ「勇者」を召喚する大役を担う。だけど、ミリアの願いはただ一つ。日本基準の超絶イケメンを召喚し、魔王討伐の旅を通して結婚することだった。召喚されたゼインは、この国の美醜の基準では「醜悪な怪物」扱い。しかしミリアの目には、彼は完璧な最強イケメンに映っていた。ミリアは魔王討伐の旅を「イケメン旦那さまゲットのためのアピールタイム」と称し、ゼインの心を掴もうと画策する。しかし、ゼインは冷酷な仮面を崩さないまま、旅が終わる。
イケメン勇者と美少女聖女が織りなす、勘違いと愛が暴走する異世界ラブコメディ。果たして、二人の「愛の旅」は、最高の結末を迎えるのか?
※短編用に書いたのですが、少し長くなったので連載にしています
※この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?
エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。
文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。
そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。
もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。
「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」
......って言われましても、ねぇ?
レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。
お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。
気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!
しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?
恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!?
※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
異世界育ちの侯爵令嬢と呪いをかけられた完璧王子
冬野月子
恋愛
突然日本から異世界に召喚されたリリヤ。
けれど実は、リリヤはこの世界で生まれた侯爵令嬢で、呪いをかけられ異世界(日本)へ飛ばされていたのだ。
魔力量も多く家柄の良いリリヤは王太子ラウリの婚約者候補となる。
「完璧王子」と呼ばれていたが、リリヤと同じく呪いのせいで魔力と片目の視力を失っていたラウリ。
彼との出会いの印象はあまり良いものではなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる