貧乏令嬢、山菜取りのさなかに美少年を拾う

千堂みくま

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婚約どうするの

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「今日はどうします?」

「僕は君と、もっと話がしたい」

「……じゃあ公園を散歩でもしましょうか」

 私とカイザーは並んで公園の道を歩き出した。カイザーは当たり前のように私の手を握っている。
 学校からの帰り道でもこうして歩いたっけ。あの時とは比べようもないぐらいカイザーの手は大きくなっていて、ああ大人になったんだなぁと思った……でも今は微妙な気持ちだ。男同士で手を繋いでると不思議そうに見てくる人もいるし、ちょっとやめてほしい。

 カイザーが元気だったらやめてと突き放せるのに、隣で痩せこけた顔をしているから厳しいことを言えない。全く、なんでこんなに痩せたんだか。

「ユリアンは今、何歳なんだ?」

「えっ? ええ、と……今年で15です」

 本当はあと数ヶ月で17になるけど、見た目が少年ぽいので年齢も合わせてみた。男になった私の顔はどちらかと言うと中性的で幼い感じなのだ。だけど話してみると幼さがないので、仕事でも差し支えなく働けている。ゴダでの経験があったのもよかった。

「今年15なら僕の一つ下だな。君のエフレイン語は少し他国のなまりが混じっているように感じるが、出身を聞いてもいいだろうか?」

「……。母が隣の国の出身なんです。僕は元々ゴダに住んでて」

「ああ、ゴダに。じゃあ冬は寒かっただろう」

「ええ、とっても」

 冬にホテルから逃げ出した時、寒さで死ぬかと思ったっけ。あの時のおばあさんは元気だろうか。あなたのおかげで今でも平穏に暮らしています。

 カイザーが急に足を止めたので、手を繋いでいた私は彼に引っぱられて後ろにのけ反るような姿勢になった。何で急に止まるんだ。

「……本当に……」

「え?」

「本当に似ているな。顔も、話し方も」

 立ち止まったカイザーが私の方へゆっくりと顔を近付けてくる。何するつもりなんだろう。まさかキスとかじゃないよね? 男にキスとかしないよね?

 私は一応ギリギリまで待とうとしたけれど、カイザーの鼻と私の鼻が触れたときに我慢の限界を迎えた。カイザーの口元に手を当ててぐいっと遠ざける。

「……何してるんですか? 僕は男ですよ。それに婚約者だっていますから」

 目の前にいるんだけどね。問題の婚約者が。

「婚約者がいるのか。どんな人なんだ?」

「どんなって……。見た目はすごく綺麗なんですけど、しつこい人です」

「しつこいのか」

「ええ、とっても。嫌がる僕を、無理やり自分の故郷まで連れてくるような人です」

「大変そうだな」

「…………………………。ついでに言うと、婚約もいつの間にか決まってました。ひどい話でしょう」

「ひどいな。もし良ければ、僕が君の婚約を解消してやろうか?」

「え?」

「僕は王宮にツテがあるから……君がどうしても嫌というのなら、婚約をなかったことにも出来る」

 他人の婚約は解消しようとしてくれるのか。じゃあ自分の婚約はどう思ってるんだろう。
 エフレインの王にはまだ婚約者がいない事になっているようだし、そろそろ新しい人を見つけたらどうかな。王様から逃げ出した失礼な婚約者なんてもう忘れたらいいのに。

「僕の婚約者のことはもういいです。大丈夫です。でもあなたは自分の婚約者をどうするんですか?」

「リヴィのことか?」

「はい。リヴィさんと婚約したのは大失敗って言ってましたよね。解消しないんですか?」

 カイザーは私から目を逸らし、暗い顔でうつむいている。元気のない彼に厳しいことを言うのは可哀相な気もするけど、どうしてもこれだけは聞いておきたかった。

 あなたは私をどうするつもりなの。
 捕まえたらまた王宮の中に閉じ込めるつもりなの?

 道のわきにたたずむ私たちの横を鳥や人が通りすぎて行く。私はカイザーを見つめたまま、静かに彼の答えを待っていた。

「僕は……僕はまだ、リヴィのことが諦められない。でももし彼女に会えたら……」

 顔を上げたカイザーは真っ青だった。口にするのがつらいのかもしれない。

「どうしてもリヴィが僕を好きになれないと言うのなら、その時は婚約を解消しようと思っているよ……」

 カイザーの目には涙がにじんでいる。私はハンカチで彼の目じりにたまった涙を拭いてあげた。
 つらい事を言わせてごめんね、王様。でもあなたもちゃんと反省してくれたみたいで良かった。

「でも解消したあと、僕はどうやって生きていけばいいんだろう。何を喜びにして生きていけばいいのか分からないよ……。君はどう思う?」

 重っ。何て重たい男なんだ。ほんとに何でこんな奴を拾っちゃったんだろう。
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