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王宮勤めします
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私は婚約者を失った王様の今後を考えた。そもそも王様の喜びって何。あんなに豪華な王宮に住んで、毎日おいしい食事をしてても喜びがないのか。カイザーはまだ15歳なのに。
「カイザーさんはまだ若いんだし、お友達を作ったらどうですか?」
「友達……。君は僕の友達になってくれるか?」
「……いいですけど」
まあこういう流れになるよね。私は予想通りの展開にうなずいた。
「ユリアン、出来れば王都に住んでもらえないだろうか。僕は事情があって王都から離れられないんだ。君が来てくれたらすごく嬉しい」
えー……。
どうしたらいいだろ。断れるものなら断りたい。なんで友達とかややこしいこと言っちゃったんだろう。
「僕、フラトーで仕事があるので……」
「王宮で働いてみないか?」
「王宮? 僕みたいなよく分からない人間を雇えるもんなんですか」
「大丈夫だ。僕がなんとかしてやる。王宮なら住みながら働けるし食事も出る。働きやすいだろう」
住み込み、食事つき……!!
「やります」
あー言ってしまった。好条件すぎて逆らえなかった……。生まれついての貧乏だから、お金の力に抵抗できないんだろうか。ちょっと落ち込む。
カイザーは喜び、私にしつこくいつ王都に来れるのかと聞いてきた。私は仕事の事情を話し、恐らく月末までは働くことになるだろうと彼に説明した。そんなに簡単に今すぐ辞めたりできない。この辺の事情は街で働いたことのない王様には分からないだろう。
昼前にカイザーと公園で別れて、そのまま働いているレストランへ行った。なるべく早めに辞めることを伝えないと迷惑になってしまう。
休みの日なのに店へ来た私に店長は驚いていたが、退職を申し出ると、予想通り月末まで働くならいいよと言ってもらえた。よかった。
レストランから出る前に、アニカさんに声を掛けられる。
「ユリアン君。昨日のお客さんと知り合いだったの?」
「いいえ。僕の顔が好きな人に似てるんだそうです」
「なぁんだ、そうだったのね。じゃあ私もまだ諦める必要なさそうね!」
アニカさんは嬉しそうに言ってホールへ入っていった。いっそアニカさんがカイザーを何とかしてくれたらいいのに。カイザーも近寄ってくる女性から婚約者を選んだら良かったのに。
王宮へ行ったらハインツさんにお見合いがどうなったか聞いてみたい。一体何人とお見合いしたんだ。どうして今も婚約者が決まってないんだ。
レストランを出た私はマンションを月末で引き払う手続きも終わらせ、部屋の中の整理を始めた。もう女性用の服は捨てた方がいいだろうな。こんなの持ってたら怪しまれるだろうし。売れる物は売ってお金にすると少しは足しになった。
問題は王宮でどれぐらい働くかだ。何年働けるだろう。と言うかカイザーは新しい婚約者を見つけるつもりがあるのか。彼は“リヴィ”との婚約は解消すると言っていたし、頃合を見てリヴィに戻り、婚約を解消してもらったらいいかもしれない。
うん、それでいこう。私に王妃さまなんて無理だ。
カイザーは何度かレストランに来たので、私は彼と王都へ向かう日取りを決めた。私がカイザーと親しくするのでアニカさんに誤解され、私は『男が好きな男』という噂が立ってしまった……。
翌月、カイザーは約束どおり迎えを寄こした。公園で待っていてくれと言われた私は出入り口に立っていたけれど、見覚えのある立派な馬車が来たので若干引いた。まさかあの馬車で迎えを寄こすとか……今の私は貴人じゃなくて、得体の知れない少年なのに。
馬車の扉が開くと中から上品そうなおじさんが現れ、私に恭しく礼をした。私も慌てて礼を返す。よく分からない少年に礼なんかしなくて大丈夫なのに。
「ユリアン君ですね。私は王宮で侍従をしております、ホルストと申します」
「ユリアンです。よろしくお願いします」
ホルストさんは私を馬車の中に招きいれた。走り出した馬車の中でホルストさんは仕事について説明をしてくれ、王宮に着く頃には私の不安もなくなっていた。
私はどうやら侍従として働くことになるらしい。侍従というのは王様のお世話をする人。
「カイザーさんが王様だったなんて驚きました。僕のような人間が侍従をしても大丈夫なのですか?」
「ええ。失礼だとは思ったのですが、騎士が何度かあなたと陛下のやりとりを見守っていたのです。それであなたは危険な人物ではないと判断されました。陛下もあなたのお陰で元気を取り戻して来ています」
やっぱり騎士も来てたんだ。そりゃそうだよね、王様が一人で街をぶらついたりしないよね。
私はカイザーと歩いた公園での出来事を思い出していた。あの日、私が婚約者について話している時カイザーは他人事のように「大変そうだな」とか呟き、こいつ殴ってやろうかと思ったっけ。殴らなくてよかった。もしやっちゃってたら騎士に取り押さえられてただろう。危なかった……。
「カイザーさんはまだ若いんだし、お友達を作ったらどうですか?」
「友達……。君は僕の友達になってくれるか?」
「……いいですけど」
まあこういう流れになるよね。私は予想通りの展開にうなずいた。
「ユリアン、出来れば王都に住んでもらえないだろうか。僕は事情があって王都から離れられないんだ。君が来てくれたらすごく嬉しい」
えー……。
どうしたらいいだろ。断れるものなら断りたい。なんで友達とかややこしいこと言っちゃったんだろう。
「僕、フラトーで仕事があるので……」
「王宮で働いてみないか?」
「王宮? 僕みたいなよく分からない人間を雇えるもんなんですか」
「大丈夫だ。僕がなんとかしてやる。王宮なら住みながら働けるし食事も出る。働きやすいだろう」
住み込み、食事つき……!!
「やります」
あー言ってしまった。好条件すぎて逆らえなかった……。生まれついての貧乏だから、お金の力に抵抗できないんだろうか。ちょっと落ち込む。
カイザーは喜び、私にしつこくいつ王都に来れるのかと聞いてきた。私は仕事の事情を話し、恐らく月末までは働くことになるだろうと彼に説明した。そんなに簡単に今すぐ辞めたりできない。この辺の事情は街で働いたことのない王様には分からないだろう。
昼前にカイザーと公園で別れて、そのまま働いているレストランへ行った。なるべく早めに辞めることを伝えないと迷惑になってしまう。
休みの日なのに店へ来た私に店長は驚いていたが、退職を申し出ると、予想通り月末まで働くならいいよと言ってもらえた。よかった。
レストランから出る前に、アニカさんに声を掛けられる。
「ユリアン君。昨日のお客さんと知り合いだったの?」
「いいえ。僕の顔が好きな人に似てるんだそうです」
「なぁんだ、そうだったのね。じゃあ私もまだ諦める必要なさそうね!」
アニカさんは嬉しそうに言ってホールへ入っていった。いっそアニカさんがカイザーを何とかしてくれたらいいのに。カイザーも近寄ってくる女性から婚約者を選んだら良かったのに。
王宮へ行ったらハインツさんにお見合いがどうなったか聞いてみたい。一体何人とお見合いしたんだ。どうして今も婚約者が決まってないんだ。
レストランを出た私はマンションを月末で引き払う手続きも終わらせ、部屋の中の整理を始めた。もう女性用の服は捨てた方がいいだろうな。こんなの持ってたら怪しまれるだろうし。売れる物は売ってお金にすると少しは足しになった。
問題は王宮でどれぐらい働くかだ。何年働けるだろう。と言うかカイザーは新しい婚約者を見つけるつもりがあるのか。彼は“リヴィ”との婚約は解消すると言っていたし、頃合を見てリヴィに戻り、婚約を解消してもらったらいいかもしれない。
うん、それでいこう。私に王妃さまなんて無理だ。
カイザーは何度かレストランに来たので、私は彼と王都へ向かう日取りを決めた。私がカイザーと親しくするのでアニカさんに誤解され、私は『男が好きな男』という噂が立ってしまった……。
翌月、カイザーは約束どおり迎えを寄こした。公園で待っていてくれと言われた私は出入り口に立っていたけれど、見覚えのある立派な馬車が来たので若干引いた。まさかあの馬車で迎えを寄こすとか……今の私は貴人じゃなくて、得体の知れない少年なのに。
馬車の扉が開くと中から上品そうなおじさんが現れ、私に恭しく礼をした。私も慌てて礼を返す。よく分からない少年に礼なんかしなくて大丈夫なのに。
「ユリアン君ですね。私は王宮で侍従をしております、ホルストと申します」
「ユリアンです。よろしくお願いします」
ホルストさんは私を馬車の中に招きいれた。走り出した馬車の中でホルストさんは仕事について説明をしてくれ、王宮に着く頃には私の不安もなくなっていた。
私はどうやら侍従として働くことになるらしい。侍従というのは王様のお世話をする人。
「カイザーさんが王様だったなんて驚きました。僕のような人間が侍従をしても大丈夫なのですか?」
「ええ。失礼だとは思ったのですが、騎士が何度かあなたと陛下のやりとりを見守っていたのです。それであなたは危険な人物ではないと判断されました。陛下もあなたのお陰で元気を取り戻して来ています」
やっぱり騎士も来てたんだ。そりゃそうだよね、王様が一人で街をぶらついたりしないよね。
私はカイザーと歩いた公園での出来事を思い出していた。あの日、私が婚約者について話している時カイザーは他人事のように「大変そうだな」とか呟き、こいつ殴ってやろうかと思ったっけ。殴らなくてよかった。もしやっちゃってたら騎士に取り押さえられてただろう。危なかった……。
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