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4 眉毛問題
自分の部屋に戻ってきた私は、眉毛を書けそうな道具を集めた。インクつきのペン、デッサン用の木炭、細い線が書ける鉛筆。
「眉毛となるとこんな所でしょうか。使えそうな物、ありますか?」
「ありがとう、エマ。とりあえず一つずつ試してみるわ」
最初はペンだ。インクが濃いだけに期待値が高まる。私は鏡を見ながら恐るおそるペンを眉毛――とおぼしき産毛にのせ、線を書いた。が、インクがじわっとにじみ、予想外のぶっとい眉毛になってしまう。
「うわ、太っ」
「えっ?」
私の顔をみたエマは「ぶっ」と言って素早く口元を隠し、ぶるぶると体を震わせた。
笑いたいのに我慢してくれてんのね。
「や、でも愛嬌はありますよ! 少なくとも怖さは全く感じません!」
「確かに笑いを誘う顔にはなったけどね。私、女芸人を目指してるわけじゃないからなぁ……」
前世の日本では笑いを取るために、面白おかしいメイクをしてる芸人がいたっけ。お笑い芸人としては正しい眉毛だと思うけど、侯爵令嬢として大切なものを捨ててる気がする。これはいかん。
エマが用意してくれた水で洗顔し、次の道具を試すことにした。デッサン用の木炭だ。にじむのが怖いので、眉頭のあたりから慎重に木炭を動かした、のだが。
「今度は麿になったわ」
「マロが何かは存じ上げませんが、この眉毛も愛嬌があっていいですね。なんかこう、高貴な感じが漂ってます」
エマがなかなか鋭い意見をいうが、私的にこの眉毛も却下だ。麿は確かに平安時代のやんごとなき貴族である。でも私が転生した『ティナ恋』の世界は中世のヨーロッパがモデル。世界観を無視しすぎだろう。
顔を洗って、最後の鉛筆を試す。
「いだ、いだだだ。痛いわぁ……。あ、鉛筆が一番いいかも」
「そうですね、いちばん自然な感じがします。まるで本物の眉毛みたいですよ」
書くときは痛かったものの、鉛筆眉の自然さにうっとりする。
これはいい。自分が美少女に見えてきた。
「お嬢さま、とてもお美しいです! 眉毛があると奥さまにそっくりで……!」
「そうね。自分でもお母さまに瓜二つだと思うわ。眉毛があるだけで、こんなに印象が変わるんだ……」
急に世界が明るくなったように感じ、私は椅子から立ち上がって窓を開けた。初夏の爽やかな風が頬をなでる。私は今、第二の人生を歩み始めたのだ。輝かしい第二の人生を!
ふと後ろを振り返ると、風でエマの眉毛が揺れている。
いくらなんでも伸ばしすぎではなかろうか。
「ねえ、エマ。眉毛のお手入れしたほうがいいんじゃない? ちょっと伸びすぎだと思うんだけど」
「あたし眉毛をいじるの苦手なんですよ。いつも切りすぎて変な眉になって、恋人に馬鹿にされちゃうし」
――恋人だと……!
私は驚愕に目を見張り、しばし硬直した。落ち着くのよ、ルシー。妬みたい気持ちも分かるけど、私は菩薩になると決めたんだから……!
「お、お付き合いしてる方がいたのね。じゃあ、私に眉を整えさせてくれない?」
「えっ、お嬢さまに? そうですね……お願いしてもいいですか?」
エマはそう言って私にハサミを手渡した。しかし顔の手入れ用ではなく、普通のハサミだ。大きいし先が鋭利になっているので、少し危険かもしれない。
「普通のハサミじゃなくて、お顔を手入れするハサミってないの? もっと小さくて先が丸まってるタイプの」
「先が丸いハサミなんてあるんですか? あたしは見たことないですけど」
「ない……ですって? じゃ、じゃあ、お鼻の毛が伸びたときにはどうするのよ。先が尖ってるハサミだったら痛いじゃない?」
この世界には毛抜きやカミソリはあるが、その二つだけでは不便なはずだ。疑問に思う私の前で、エマは悲しげに「ふふ……」と笑った。なにその顔。
「鼻の毛を切る時は、もれなく出血します。鼻毛きりと鼻血は切り離せない関係なのです……そう、ハサミの刃のように」
「そんな関係いるかぁ! 誰もいらんわ!」
「あっ、すごい。眉毛があるだけで、怒っても全然こわくないですよ」
「ほんとに!? やった、嬉しい!」
何てことだ、眉毛にそんな力があるなんて。もしかすると、眉毛を書くことによって私のステータス値に変化が出たのかもしれない。恐怖値とか殺気が減るとか。
――って、今はんな事どうでもいい!
「由々しき事態だわ、お顔の手入れで出血するなんて……! よし、決めた」
「なにをですか?」
「この世界に、顔のお手いれハサミを普及させてみせる! 人助けこそ私の使命だからね……!」
悪役令嬢の道を捨てた今、私に出来ることは前世で得た知識や経験を活かすことだけだ。喪女でも顔の手入れだけは人並みにやっていたし、『ティナ恋』の世界にお手入れハサミを流通させてやる。
「とりあえず先に、エマの眉毛だけ整えましょうか」
私はエマを椅子に座らせ、眉毛を整えた。コームで丁寧にとかしてから少しずつ切り、日本にいたころ最も一般的とされていた眉毛にしてあげる。
「う~ん、やっぱり眉用のコームもあった方がいいわね。髪用のだと目が粗いから、眉毛には向かないわ」
「眉毛用の櫛なんてあるんですか? お嬢さま、詳しいですね」
「ま、まあね。ずっと眉毛で悩んで来たから……それより、明日から忙しくなるわよ。やること目白押しだからね!」
私はエマを下がらせ、窓際に置かれた机に向かった。紙を一枚とりだしてペンを走らせる。ここからは記憶との勝負だ。どれだけ詳細に思い出せるか、出来るかぎりやってみよう。
寝る時間になるまで、ひたすら記憶を掘り出す作業に没頭した。
「眉毛となるとこんな所でしょうか。使えそうな物、ありますか?」
「ありがとう、エマ。とりあえず一つずつ試してみるわ」
最初はペンだ。インクが濃いだけに期待値が高まる。私は鏡を見ながら恐るおそるペンを眉毛――とおぼしき産毛にのせ、線を書いた。が、インクがじわっとにじみ、予想外のぶっとい眉毛になってしまう。
「うわ、太っ」
「えっ?」
私の顔をみたエマは「ぶっ」と言って素早く口元を隠し、ぶるぶると体を震わせた。
笑いたいのに我慢してくれてんのね。
「や、でも愛嬌はありますよ! 少なくとも怖さは全く感じません!」
「確かに笑いを誘う顔にはなったけどね。私、女芸人を目指してるわけじゃないからなぁ……」
前世の日本では笑いを取るために、面白おかしいメイクをしてる芸人がいたっけ。お笑い芸人としては正しい眉毛だと思うけど、侯爵令嬢として大切なものを捨ててる気がする。これはいかん。
エマが用意してくれた水で洗顔し、次の道具を試すことにした。デッサン用の木炭だ。にじむのが怖いので、眉頭のあたりから慎重に木炭を動かした、のだが。
「今度は麿になったわ」
「マロが何かは存じ上げませんが、この眉毛も愛嬌があっていいですね。なんかこう、高貴な感じが漂ってます」
エマがなかなか鋭い意見をいうが、私的にこの眉毛も却下だ。麿は確かに平安時代のやんごとなき貴族である。でも私が転生した『ティナ恋』の世界は中世のヨーロッパがモデル。世界観を無視しすぎだろう。
顔を洗って、最後の鉛筆を試す。
「いだ、いだだだ。痛いわぁ……。あ、鉛筆が一番いいかも」
「そうですね、いちばん自然な感じがします。まるで本物の眉毛みたいですよ」
書くときは痛かったものの、鉛筆眉の自然さにうっとりする。
これはいい。自分が美少女に見えてきた。
「お嬢さま、とてもお美しいです! 眉毛があると奥さまにそっくりで……!」
「そうね。自分でもお母さまに瓜二つだと思うわ。眉毛があるだけで、こんなに印象が変わるんだ……」
急に世界が明るくなったように感じ、私は椅子から立ち上がって窓を開けた。初夏の爽やかな風が頬をなでる。私は今、第二の人生を歩み始めたのだ。輝かしい第二の人生を!
ふと後ろを振り返ると、風でエマの眉毛が揺れている。
いくらなんでも伸ばしすぎではなかろうか。
「ねえ、エマ。眉毛のお手入れしたほうがいいんじゃない? ちょっと伸びすぎだと思うんだけど」
「あたし眉毛をいじるの苦手なんですよ。いつも切りすぎて変な眉になって、恋人に馬鹿にされちゃうし」
――恋人だと……!
私は驚愕に目を見張り、しばし硬直した。落ち着くのよ、ルシー。妬みたい気持ちも分かるけど、私は菩薩になると決めたんだから……!
「お、お付き合いしてる方がいたのね。じゃあ、私に眉を整えさせてくれない?」
「えっ、お嬢さまに? そうですね……お願いしてもいいですか?」
エマはそう言って私にハサミを手渡した。しかし顔の手入れ用ではなく、普通のハサミだ。大きいし先が鋭利になっているので、少し危険かもしれない。
「普通のハサミじゃなくて、お顔を手入れするハサミってないの? もっと小さくて先が丸まってるタイプの」
「先が丸いハサミなんてあるんですか? あたしは見たことないですけど」
「ない……ですって? じゃ、じゃあ、お鼻の毛が伸びたときにはどうするのよ。先が尖ってるハサミだったら痛いじゃない?」
この世界には毛抜きやカミソリはあるが、その二つだけでは不便なはずだ。疑問に思う私の前で、エマは悲しげに「ふふ……」と笑った。なにその顔。
「鼻の毛を切る時は、もれなく出血します。鼻毛きりと鼻血は切り離せない関係なのです……そう、ハサミの刃のように」
「そんな関係いるかぁ! 誰もいらんわ!」
「あっ、すごい。眉毛があるだけで、怒っても全然こわくないですよ」
「ほんとに!? やった、嬉しい!」
何てことだ、眉毛にそんな力があるなんて。もしかすると、眉毛を書くことによって私のステータス値に変化が出たのかもしれない。恐怖値とか殺気が減るとか。
――って、今はんな事どうでもいい!
「由々しき事態だわ、お顔の手入れで出血するなんて……! よし、決めた」
「なにをですか?」
「この世界に、顔のお手いれハサミを普及させてみせる! 人助けこそ私の使命だからね……!」
悪役令嬢の道を捨てた今、私に出来ることは前世で得た知識や経験を活かすことだけだ。喪女でも顔の手入れだけは人並みにやっていたし、『ティナ恋』の世界にお手入れハサミを流通させてやる。
「とりあえず先に、エマの眉毛だけ整えましょうか」
私はエマを椅子に座らせ、眉毛を整えた。コームで丁寧にとかしてから少しずつ切り、日本にいたころ最も一般的とされていた眉毛にしてあげる。
「う~ん、やっぱり眉用のコームもあった方がいいわね。髪用のだと目が粗いから、眉毛には向かないわ」
「眉毛用の櫛なんてあるんですか? お嬢さま、詳しいですね」
「ま、まあね。ずっと眉毛で悩んで来たから……それより、明日から忙しくなるわよ。やること目白押しだからね!」
私はエマを下がらせ、窓際に置かれた机に向かった。紙を一枚とりだしてペンを走らせる。ここからは記憶との勝負だ。どれだけ詳細に思い出せるか、出来るかぎりやってみよう。
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