9 / 51
9 思いがけぬ出会い
机の上に、木炭と粘土、蜜蝋、松脂。そして数種類の植物性油脂と、着色料。
「ではこれから、アイブロウ作りを開始します」
「お嬢さま、こちらがレシピです」
「ありがとう」
めでたくセラとの絆を得た私は、本格的にアイブロウ作りに乗り出していた。ゲーム開始まで半年をきった今、のんびりしていられない。
王立ディオン学園は王都にあり、ガイゼルから馬車で三日もかかる。当然ながら通うのは無理なので、私は女子寮に入ることになるだろう。一人でも自分の眉毛を守れるようにしておかねばならない。
「ペンの状態に加工するのは難しいでしょうね。となると、固形にして筆で眉毛を書くのがいいかもしれないわ」
なぜか『ティナ恋』の世界には化粧道具がほとんどない。あるのは白粉と口紅ぐらいで、アイブロウや眉ペンシルなんてものは一切ないのだ。眉毛なしには厳しい世界である。
私は小皿に木炭だの粘土だの、溶かした蜜蝋だのを混ぜながら、何度もちょうどいい濃度と書きやすい硬さを試した。松脂は硬すぎて駄目だな。蜜蝋のほうがいいかもしれない。
やがて――。
「で、出来たぁ……! この色、硬さ! 私専用のアイブロウよ!」
「おめでとうございます、お嬢さま!」
出来上がったアイブロウは私の髪に合わせた漆黒で、まさにルシーフェル専用である。試しに細い筆で眉毛を書き、おでこから水を垂らしたけど眉毛が消えることはない。完璧だ。ウォータープルーフだ。
嬉しくてブルブルしていると、エマが大きな箱を持ってきた。
「お嬢さま、工房から商品が届きました」
「えっ、もう? 親方ってば仕事が早いわね」
頼んでから一週間ぐらいしか経ってないのに。ハサミってそんなに簡単に作れるものなのかな?
何はともあれ工房から届いた箱を開けると、頼んだ通りのお手入れハサミと眉用コーム、そして眉毛専用ハサミが入っている。
「あれ? 先が尖った小さなハサミも頼んだんですか?」
「ええ、これは眉毛専用のハサミよ。細かい調整が可能だから、こだわるタイプの人はこっちがいいかもね。エマ、ちょっと試させてくれる?」
「はい、どうぞ!」
慣れたもので、エマはすかさず椅子に座った。私は眉用コームを使いながら、専用ハサミを使ってはみ出た眉毛を切る。うむ、切れ味やよし! 親方はいい仕事をするものだ。
「完璧だわね。どう?」
「おお~……。眉毛の濃さが一定になりました。確かに眉毛用のコームを使った方がいいですね」
「でしょ。さて、商品も出来上がったし、次の段階に進みましょう」
私は机に向かい、数枚の便箋を取り出した。
狙うべき顧客はすでに決まっている。
「何日がいいかな……。この世界って梅雨がないのよね」
「ツユ? よく分かりませんが、来月なら中庭の紫陽花が見ごろですよ」
「そうね、来月――6月にしましょうか」
日にちを決め、さらさらとペンを走らせる。侯爵令嬢たる私の誘いなら、彼女たちはきっと来てくれるだろう。脅すみたいで申し訳ないけど、今回だけは必ず来てほしい。
「書けたわ。エマ、手紙を出しておいてくれる?」
「はい、畏まりました」
今のところとても順調だ。使用人たちは私を慕って眉毛を任せてくれるし、セラも「姉上ブランコのろ~」と誘ってくれるし。
ある一つの問題を除いては。
翌日の早朝、私はバルコニーからロープを垂らして自室から脱走した。別に逃げているわけではない。ジョギングをするためである。
侯爵令嬢ともなると自由に運動も出来ず、体がなまってきたのだ。加えて料理長がべっこう飴から何がしかのインスピレーションを得たのか、デザートが増え――つまり、太ってしまった。
同じものを食べているのに、お父さまとお母さまに変化がないのは何故だろう。理不尽だ!と思いつつ、今はとにかく痩せるしかない。せっかく眉毛の悩みから解放されたのに、太った体で学園に入学するのは嫌だ。
しかしお父さまに運動したいと頼んでも、「ルシーは完璧だ! どこに痩せる必要が!?」といわれるのは分かっているので、こっそり脱出したのだった。
「ぜぇ、はぁ……。あ~しんど。アラサーの頃だって、運動量が少なかったのに……」
城下町の端にある森に入り、少し休憩することにした。ちなみに現在、眉毛は書いていない。侯爵令嬢だとバレるのはまずいため、頭にほっかむりを被っているからだ。眉毛どころか、目と鼻しか出ていない。コソ泥スタイルである。
「はぁ~、早朝の森の空気はおいしいなあ」
深呼吸しながら森の道を歩いていると、早朝なのに前方から少年がやってくる。ジョギング仲間かなと思ったが、どうも違うようだ。高身長だし頭は小さいし。八頭身ぐらいありそうな、抜群のプロポーション。奴にジョギングは必要あるまい。
近づくにつれ、少年の顔もよく見えるようになった。キラッキラの蜂蜜ブロンドに、サファイアのような青い瞳。作り物みたいに綺麗な顔だ。
なんだこいつは、本当に人間か?
いや待て、あの顔は……!!
「そこの人、道を教えてくれないだろうか」
「へっ、へえ!? あっしに何の御用で? あっしは通りすがりの、ただの岡持ちで……!」
「……オカモチ? 何のことか分からないけど、僕はガイゼル侯爵の工房を訪ねたいんだ。道を知らないか?」
「ああ、工房ならこの道を抜けて城下町に入り、花屋の角を左、本屋の角を右、突き当たったら斜め右に曲がって……」
「思ったよりもややこしいな……。僕に同行して、道案内をしてほしい。ちゃんと礼はするから」
「とんでもございません! あっしのような卑しい身分の者が、殿下とご一緒するなんて……!」
「…………さっきから不思議なんだけど、なぜ女性なのに変な話し方をするんだ? そして――なぜ僕が王子だと知っている?」
「おっといけねぇ、仕事の時間だ! すいやせん、あっしはこれで!!」
「あっ、待ってくれ。もう少し話を――」
待ってられるか!
ゲーム開始まえに攻略対象に関わったら、私の人生が変わるかもしれないのに!
私は猛ダッシュで王太子のそばを離れ、屋敷に戻った。限界以上の力を出したせいか足がふるえ、ロープを登るのが大変であった。今日は厄日かもしれない。部屋で大人しくしていよう。
「ではこれから、アイブロウ作りを開始します」
「お嬢さま、こちらがレシピです」
「ありがとう」
めでたくセラとの絆を得た私は、本格的にアイブロウ作りに乗り出していた。ゲーム開始まで半年をきった今、のんびりしていられない。
王立ディオン学園は王都にあり、ガイゼルから馬車で三日もかかる。当然ながら通うのは無理なので、私は女子寮に入ることになるだろう。一人でも自分の眉毛を守れるようにしておかねばならない。
「ペンの状態に加工するのは難しいでしょうね。となると、固形にして筆で眉毛を書くのがいいかもしれないわ」
なぜか『ティナ恋』の世界には化粧道具がほとんどない。あるのは白粉と口紅ぐらいで、アイブロウや眉ペンシルなんてものは一切ないのだ。眉毛なしには厳しい世界である。
私は小皿に木炭だの粘土だの、溶かした蜜蝋だのを混ぜながら、何度もちょうどいい濃度と書きやすい硬さを試した。松脂は硬すぎて駄目だな。蜜蝋のほうがいいかもしれない。
やがて――。
「で、出来たぁ……! この色、硬さ! 私専用のアイブロウよ!」
「おめでとうございます、お嬢さま!」
出来上がったアイブロウは私の髪に合わせた漆黒で、まさにルシーフェル専用である。試しに細い筆で眉毛を書き、おでこから水を垂らしたけど眉毛が消えることはない。完璧だ。ウォータープルーフだ。
嬉しくてブルブルしていると、エマが大きな箱を持ってきた。
「お嬢さま、工房から商品が届きました」
「えっ、もう? 親方ってば仕事が早いわね」
頼んでから一週間ぐらいしか経ってないのに。ハサミってそんなに簡単に作れるものなのかな?
何はともあれ工房から届いた箱を開けると、頼んだ通りのお手入れハサミと眉用コーム、そして眉毛専用ハサミが入っている。
「あれ? 先が尖った小さなハサミも頼んだんですか?」
「ええ、これは眉毛専用のハサミよ。細かい調整が可能だから、こだわるタイプの人はこっちがいいかもね。エマ、ちょっと試させてくれる?」
「はい、どうぞ!」
慣れたもので、エマはすかさず椅子に座った。私は眉用コームを使いながら、専用ハサミを使ってはみ出た眉毛を切る。うむ、切れ味やよし! 親方はいい仕事をするものだ。
「完璧だわね。どう?」
「おお~……。眉毛の濃さが一定になりました。確かに眉毛用のコームを使った方がいいですね」
「でしょ。さて、商品も出来上がったし、次の段階に進みましょう」
私は机に向かい、数枚の便箋を取り出した。
狙うべき顧客はすでに決まっている。
「何日がいいかな……。この世界って梅雨がないのよね」
「ツユ? よく分かりませんが、来月なら中庭の紫陽花が見ごろですよ」
「そうね、来月――6月にしましょうか」
日にちを決め、さらさらとペンを走らせる。侯爵令嬢たる私の誘いなら、彼女たちはきっと来てくれるだろう。脅すみたいで申し訳ないけど、今回だけは必ず来てほしい。
「書けたわ。エマ、手紙を出しておいてくれる?」
「はい、畏まりました」
今のところとても順調だ。使用人たちは私を慕って眉毛を任せてくれるし、セラも「姉上ブランコのろ~」と誘ってくれるし。
ある一つの問題を除いては。
翌日の早朝、私はバルコニーからロープを垂らして自室から脱走した。別に逃げているわけではない。ジョギングをするためである。
侯爵令嬢ともなると自由に運動も出来ず、体がなまってきたのだ。加えて料理長がべっこう飴から何がしかのインスピレーションを得たのか、デザートが増え――つまり、太ってしまった。
同じものを食べているのに、お父さまとお母さまに変化がないのは何故だろう。理不尽だ!と思いつつ、今はとにかく痩せるしかない。せっかく眉毛の悩みから解放されたのに、太った体で学園に入学するのは嫌だ。
しかしお父さまに運動したいと頼んでも、「ルシーは完璧だ! どこに痩せる必要が!?」といわれるのは分かっているので、こっそり脱出したのだった。
「ぜぇ、はぁ……。あ~しんど。アラサーの頃だって、運動量が少なかったのに……」
城下町の端にある森に入り、少し休憩することにした。ちなみに現在、眉毛は書いていない。侯爵令嬢だとバレるのはまずいため、頭にほっかむりを被っているからだ。眉毛どころか、目と鼻しか出ていない。コソ泥スタイルである。
「はぁ~、早朝の森の空気はおいしいなあ」
深呼吸しながら森の道を歩いていると、早朝なのに前方から少年がやってくる。ジョギング仲間かなと思ったが、どうも違うようだ。高身長だし頭は小さいし。八頭身ぐらいありそうな、抜群のプロポーション。奴にジョギングは必要あるまい。
近づくにつれ、少年の顔もよく見えるようになった。キラッキラの蜂蜜ブロンドに、サファイアのような青い瞳。作り物みたいに綺麗な顔だ。
なんだこいつは、本当に人間か?
いや待て、あの顔は……!!
「そこの人、道を教えてくれないだろうか」
「へっ、へえ!? あっしに何の御用で? あっしは通りすがりの、ただの岡持ちで……!」
「……オカモチ? 何のことか分からないけど、僕はガイゼル侯爵の工房を訪ねたいんだ。道を知らないか?」
「ああ、工房ならこの道を抜けて城下町に入り、花屋の角を左、本屋の角を右、突き当たったら斜め右に曲がって……」
「思ったよりもややこしいな……。僕に同行して、道案内をしてほしい。ちゃんと礼はするから」
「とんでもございません! あっしのような卑しい身分の者が、殿下とご一緒するなんて……!」
「…………さっきから不思議なんだけど、なぜ女性なのに変な話し方をするんだ? そして――なぜ僕が王子だと知っている?」
「おっといけねぇ、仕事の時間だ! すいやせん、あっしはこれで!!」
「あっ、待ってくれ。もう少し話を――」
待ってられるか!
ゲーム開始まえに攻略対象に関わったら、私の人生が変わるかもしれないのに!
私は猛ダッシュで王太子のそばを離れ、屋敷に戻った。限界以上の力を出したせいか足がふるえ、ロープを登るのが大変であった。今日は厄日かもしれない。部屋で大人しくしていよう。
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。