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23 護衛する
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次の朝、私の部屋に全員集合してからティナの部屋へ向かった。ノックをすると腕に包帯を巻いたティナが恐るおそる出てくる。
「な、なんの用……?」
「おはよう、ティナさん。私たちはあなたの護衛よ。これからは付きっ切りで守ってあげますわ」
あげますわ、の後にバチンッとウインクをしようとしたが上手くできなかった。ぐしゃっとなった私の左目を見て、ティナがぷっと笑う。
「廊下じゃなんだから、部屋の中へどうぞ」
ティナは私たちを部屋に入れてくれた。腕を動かすと傷むのか、ときどき辛そうな顔をする。椅子の数が三つだったので、私とティナはベッドに並んで座った。
「護衛はありがたいけど、わたしまだ狙われるかもしれないし……。皆に迷惑かけちゃうかも」
「気にしなくていいの。私たちは話し合った上であなたを助けに来たのだから、遠慮なく頼ってちょうだい」
「……いいの?」
ティナは泣きそうな顔で私たち全員の顔を見た。みんなが頷いてティナに笑いかけると、とうとう泣き出してしまった。
「うっ、うわああん! ありがとう! わたし、昨日からずっと怖くて……。もう学園やめて実家に帰ろうかと思ってたよぉ!」
「まだ帰るのは早いですわよ」
「そうそう。入学してひと月も経ってないですし」
「皆で一緒に卒業しましょうよ!」
ティナはボロボロ泣いて私にしがみつく。
どうだ、ティナよ。ガイゼルの令嬢たちは優しいであろう。
「ティナ。その代わり、男性は一人にしぼるのよ。誰か一人と決めてお付き合いしないと、今後もずっと反感を買っちゃうと思うわよ」
「うん……。しばらくは誰ともお付き合いせず、大人しくするよ。なんだか怖くなっちゃったしね」
だろうね。ゲームの画面では「あらら、階段から落ちちゃった~」で済むけど、実際に突き落とされたらたまったもんじゃない。打ち所が悪ければ、死んでいた可能性もある。
私たちはティナの着替えを手伝い、一緒に食堂で朝食をとった。すでに学園内で昨日の事件がウワサになっているのか、ティナを見た生徒たちがさわさわと話す声が聞こえる。「ほら、あれが……」だの、「やっぱりね」だの。
『負けないでよ、ティナ』
『大丈夫。ルシー達がいるからね』
日本語で話すのはなんだか楽しい。ウワサになってしまい心配したが、ティナの顔は明るかった。迎えに行ってよかったな。
「ティナ、大丈夫か?」
ティナが加わって五人になった私たちの前に、紫男と緑男が現れた。髪と瞳が同じ色だ。うわお、この世界の色素ってどうなってんの。メラニン色素はどこかへ行ってしまったのか?
ティナがすっと立ち上がり、ふたりに挨拶をする。
「おはようございます。アレックス様、ライアン様。心配してくださって有難いのですが、わたしはしばらく誰ともお付き合いしない事にしました。勝手なことを言って、本当にごめんなさい」
「なぜだ!」
「俺たちがきみを守るよ!」
これはアカンね。私の出番だろう。ティナの横に立ち、ふたりと顔を合わせる。
「申し訳ありませんけれど、お二人にはティナを任せられませんわ」
「どうしてですか!」
「どうして、ですって? ティナが襲われた理由は分かっているのでしょう。おふたりがティナに近づくことは逆効果です」
「そっ、それは……確かに、そうかも知れませんが」
「焦らないことです。時が来ればティナはおのずと一人の男性を選ぶでしょう。あなた方に出来るのは、彼女に選ばれるように自分を磨くことだけですわ。どうか今はお引取りください」
「わ、分かりました……」
「失礼いたしました……」
紫と緑の少年たちが離れて、ほっと息をつく。はあ、緊張したぁ。ふと横をみると、ティナが頬を赤く染めてブルブル震えている。
「る、ルシー……フェル様! 格好いい!」
「えっ、そう?」
「さすがルシーフェル様ですわ! お見事でした」
さすがと褒められ、勝手に顔がにやけてくる。15年も侯爵令嬢してると態度が偉そうになっちゃうんだけど、今回はそれが上手く働いたみたいで良かった。
でへへと笑っていたら、こちらを見ている金と赤の少年に気づいた。殿下たちは王宮暮らしのはずだが、昨日の件で寮に泊まったのかもしれない。ニヤニヤしながら手を振っている。
多分、褒めてくれてるんだろう。精神衛生上の理由により、そう思っておく。
「な、なんの用……?」
「おはよう、ティナさん。私たちはあなたの護衛よ。これからは付きっ切りで守ってあげますわ」
あげますわ、の後にバチンッとウインクをしようとしたが上手くできなかった。ぐしゃっとなった私の左目を見て、ティナがぷっと笑う。
「廊下じゃなんだから、部屋の中へどうぞ」
ティナは私たちを部屋に入れてくれた。腕を動かすと傷むのか、ときどき辛そうな顔をする。椅子の数が三つだったので、私とティナはベッドに並んで座った。
「護衛はありがたいけど、わたしまだ狙われるかもしれないし……。皆に迷惑かけちゃうかも」
「気にしなくていいの。私たちは話し合った上であなたを助けに来たのだから、遠慮なく頼ってちょうだい」
「……いいの?」
ティナは泣きそうな顔で私たち全員の顔を見た。みんなが頷いてティナに笑いかけると、とうとう泣き出してしまった。
「うっ、うわああん! ありがとう! わたし、昨日からずっと怖くて……。もう学園やめて実家に帰ろうかと思ってたよぉ!」
「まだ帰るのは早いですわよ」
「そうそう。入学してひと月も経ってないですし」
「皆で一緒に卒業しましょうよ!」
ティナはボロボロ泣いて私にしがみつく。
どうだ、ティナよ。ガイゼルの令嬢たちは優しいであろう。
「ティナ。その代わり、男性は一人にしぼるのよ。誰か一人と決めてお付き合いしないと、今後もずっと反感を買っちゃうと思うわよ」
「うん……。しばらくは誰ともお付き合いせず、大人しくするよ。なんだか怖くなっちゃったしね」
だろうね。ゲームの画面では「あらら、階段から落ちちゃった~」で済むけど、実際に突き落とされたらたまったもんじゃない。打ち所が悪ければ、死んでいた可能性もある。
私たちはティナの着替えを手伝い、一緒に食堂で朝食をとった。すでに学園内で昨日の事件がウワサになっているのか、ティナを見た生徒たちがさわさわと話す声が聞こえる。「ほら、あれが……」だの、「やっぱりね」だの。
『負けないでよ、ティナ』
『大丈夫。ルシー達がいるからね』
日本語で話すのはなんだか楽しい。ウワサになってしまい心配したが、ティナの顔は明るかった。迎えに行ってよかったな。
「ティナ、大丈夫か?」
ティナが加わって五人になった私たちの前に、紫男と緑男が現れた。髪と瞳が同じ色だ。うわお、この世界の色素ってどうなってんの。メラニン色素はどこかへ行ってしまったのか?
ティナがすっと立ち上がり、ふたりに挨拶をする。
「おはようございます。アレックス様、ライアン様。心配してくださって有難いのですが、わたしはしばらく誰ともお付き合いしない事にしました。勝手なことを言って、本当にごめんなさい」
「なぜだ!」
「俺たちがきみを守るよ!」
これはアカンね。私の出番だろう。ティナの横に立ち、ふたりと顔を合わせる。
「申し訳ありませんけれど、お二人にはティナを任せられませんわ」
「どうしてですか!」
「どうして、ですって? ティナが襲われた理由は分かっているのでしょう。おふたりがティナに近づくことは逆効果です」
「そっ、それは……確かに、そうかも知れませんが」
「焦らないことです。時が来ればティナはおのずと一人の男性を選ぶでしょう。あなた方に出来るのは、彼女に選ばれるように自分を磨くことだけですわ。どうか今はお引取りください」
「わ、分かりました……」
「失礼いたしました……」
紫と緑の少年たちが離れて、ほっと息をつく。はあ、緊張したぁ。ふと横をみると、ティナが頬を赤く染めてブルブル震えている。
「る、ルシー……フェル様! 格好いい!」
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さすがと褒められ、勝手に顔がにやけてくる。15年も侯爵令嬢してると態度が偉そうになっちゃうんだけど、今回はそれが上手く働いたみたいで良かった。
でへへと笑っていたら、こちらを見ている金と赤の少年に気づいた。殿下たちは王宮暮らしのはずだが、昨日の件で寮に泊まったのかもしれない。ニヤニヤしながら手を振っている。
多分、褒めてくれてるんだろう。精神衛生上の理由により、そう思っておく。
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