28 / 51
28 普通ペンは折れない
しおりを挟む
カイラーはサイモン氏の手から指輪を奪いとり、私の手の中にころんと転がした。こんな指輪ひとつで本当に何とかなるのかと疑問だが、とりあえず指にはめてみる。利き手はいやだから、左手の中指にしておこう。
「何か掴んでみなよ」
殿下に言われ、サイモンの机に転がっていたペンをぐっと握ってみた。が、なんの変化もない。ヒビも入らず折れたりもしない。
「す、すごい! ペンが折れません!」
「普通ペンは折れねーけどな」
「ルシー嬢は魔力が筋力に変換されるタイプなのか! これは貴重な実験ざいりょ……研究対象だな!」
いま実験材料って言おうとしたよね? サイモンの奴め、私を何だと思っているのか!
ムッとした瞬間、手に余計な力が入り――。
「あっ」
「あぁあ、私の指輪がぁあああ!」
ペンも指輪もパキンと音を立てて壊れてしまった。サイモンは粉々に砕け散った指輪の残骸を見つめ、目に涙を浮かべている。
「ご、ごめんなさい……。弁償します」
「クッ……クックック。フハハハハ! 何と言うことだ、私の指輪が負けるとは! おお、燃えてきたぞ! 次はこれだ!」
サイモンの青い瞳が、ガスコンロのように激しく燃えている。触れるな危険。
私は差し出された指輪を大人しく指にはめた。
「さあ! この鉄塊で思いっきり運動するがいい!」
サイモンは机の下から鉄アレイのようなものを出した。なんだこれはと思いつつ、ガシッと掴んでふん!ふん!と持ち上げる。が、しかし。
「あっ、石にヒビが」
「ぐああああ!」
またしても指輪の石が砕け、床にがくりと膝をつくサイモン。何だか気の毒になってきた。もう止めておいた方がいいかもしれない。
「あの~、もういいですから……」
「何のこれしき、まだまだァ! 次はこれでどうだ!?」
サイモンはいちばん下の引き出しから小さな箱をだし、ぱかりとフタを開けた。オニキスのように真っ黒な石がはめられた指輪だ。よりによってルシー色か……。
「これは最新の研究によって作られた、体内の魔力を空気中に拡散させる指輪だ! さあ、嵌めるがいい!」
「はあ……」
最近の研究でダメだったらどうすりゃいいんだろ。不安に思いつつ指輪をはめて鉄アレイ(?)で運動したが、何の変化もなく指輪も無傷であった。
「……大丈夫みたいだね。あと3個ぐらいはダメになるかと思ってたけど」
「さすが最新版! 変態科学者だけど、成果はちゃんと出たじゃん」
私の後ろで殿下とカイラーが好き勝手にぼそぼそ話し合っている。他人事だからって気楽なものだ。
しかしサイモン氏はゲーム画面では冷静そうなメガネ君だったのに、実物は頭のネジが一本とれちゃった系の人で……転生者がふたり混ざるだけで、インテリ君がマッドサイエンティストになるとは恐ろしい。
「や、やった……。私の勝ちだ! 見たか、殿下、カイラー! 科学の勝利だ!」
「ああ、うん。良かったね」
「すげー、すげー」
ぱちぱちぱち。私はなげやりな二人に混ざり、サイモン氏へ感謝の拍手を送った。ありがとう、狂科学者。あなたのおかげで平穏な学園生活に戻れそうです。
その後は教室に戻ったが、椅子に座った途端アリシアたちの質問ぜめに会って大変だった。何の用でしたのと目をキラキラさせながら訊くので、指輪を見せて説明したらひどくガッカリしていた。何かスンマセン……。
「何か掴んでみなよ」
殿下に言われ、サイモンの机に転がっていたペンをぐっと握ってみた。が、なんの変化もない。ヒビも入らず折れたりもしない。
「す、すごい! ペンが折れません!」
「普通ペンは折れねーけどな」
「ルシー嬢は魔力が筋力に変換されるタイプなのか! これは貴重な実験ざいりょ……研究対象だな!」
いま実験材料って言おうとしたよね? サイモンの奴め、私を何だと思っているのか!
ムッとした瞬間、手に余計な力が入り――。
「あっ」
「あぁあ、私の指輪がぁあああ!」
ペンも指輪もパキンと音を立てて壊れてしまった。サイモンは粉々に砕け散った指輪の残骸を見つめ、目に涙を浮かべている。
「ご、ごめんなさい……。弁償します」
「クッ……クックック。フハハハハ! 何と言うことだ、私の指輪が負けるとは! おお、燃えてきたぞ! 次はこれだ!」
サイモンの青い瞳が、ガスコンロのように激しく燃えている。触れるな危険。
私は差し出された指輪を大人しく指にはめた。
「さあ! この鉄塊で思いっきり運動するがいい!」
サイモンは机の下から鉄アレイのようなものを出した。なんだこれはと思いつつ、ガシッと掴んでふん!ふん!と持ち上げる。が、しかし。
「あっ、石にヒビが」
「ぐああああ!」
またしても指輪の石が砕け、床にがくりと膝をつくサイモン。何だか気の毒になってきた。もう止めておいた方がいいかもしれない。
「あの~、もういいですから……」
「何のこれしき、まだまだァ! 次はこれでどうだ!?」
サイモンはいちばん下の引き出しから小さな箱をだし、ぱかりとフタを開けた。オニキスのように真っ黒な石がはめられた指輪だ。よりによってルシー色か……。
「これは最新の研究によって作られた、体内の魔力を空気中に拡散させる指輪だ! さあ、嵌めるがいい!」
「はあ……」
最近の研究でダメだったらどうすりゃいいんだろ。不安に思いつつ指輪をはめて鉄アレイ(?)で運動したが、何の変化もなく指輪も無傷であった。
「……大丈夫みたいだね。あと3個ぐらいはダメになるかと思ってたけど」
「さすが最新版! 変態科学者だけど、成果はちゃんと出たじゃん」
私の後ろで殿下とカイラーが好き勝手にぼそぼそ話し合っている。他人事だからって気楽なものだ。
しかしサイモン氏はゲーム画面では冷静そうなメガネ君だったのに、実物は頭のネジが一本とれちゃった系の人で……転生者がふたり混ざるだけで、インテリ君がマッドサイエンティストになるとは恐ろしい。
「や、やった……。私の勝ちだ! 見たか、殿下、カイラー! 科学の勝利だ!」
「ああ、うん。良かったね」
「すげー、すげー」
ぱちぱちぱち。私はなげやりな二人に混ざり、サイモン氏へ感謝の拍手を送った。ありがとう、狂科学者。あなたのおかげで平穏な学園生活に戻れそうです。
その後は教室に戻ったが、椅子に座った途端アリシアたちの質問ぜめに会って大変だった。何の用でしたのと目をキラキラさせながら訊くので、指輪を見せて説明したらひどくガッカリしていた。何かスンマセン……。
12
あなたにおすすめの小説
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
前世持ちのファビアは、ちょっと変わった子爵令嬢に育っていた。その彼女の望みは、一生ケーキを食べて暮らす事! その為に彼女は魔法学園に通う事にした。
継母の策略を蹴散らし、非常識な義妹に振り回されつつも、ケーキの為に頑張ります!
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜
水月華
恋愛
レティシア・ド・リュシリューは婚約者と言い争いをしている時に、前世の記憶を思い出す。
そして自分のいる世界が、大好きだった乙女ゲームの“イーリスの祝福”の悪役令嬢役であると気がつく。
母親は早くに亡くし、父親には母親が亡くなったのはレティシアのせいだと恨まれ、兄には自分より優秀である為に嫉妬され憎まれている。
家族から冷遇されているため、ほとんどの使用人からも冷遇されている。
そんな境遇だからこそ、愛情を渇望していた。
淑女教育にマナーに、必死で努力したことで第一王子の婚約者に選ばれるが、お互いに中々歩み寄れずにすれ違ってしまう。
そんな不遇な少女に転生した。
レティシアは、悪役令嬢である自分もヒロインも大好きだ。だからこそ、ヒロインが本当に好きな人と結ばれる様に、悪役令嬢として立ち回ることを決意する。
目指すは断罪後に亡命し、新たな人生をスタートさせること。
前世の記憶が戻った事で、家族のクズっぷりを再認識する。ならば一緒に破滅させて復讐しようとレティシアには2つの目標が出来る。
上手く計画に沿って悪役令嬢を演じているはずが、本人が気が付かないところで計画がバレ、逆にヒロインと婚約者を含めた攻略対象者達に外堀を埋められる⁉︎
更に家族が改心して、望んでいない和解もさせられそうになるレティシアだが、果たして彼女は幸せになれるのか⁉︎
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる