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28 普通ペンは折れない
カイラーはサイモン氏の手から指輪を奪いとり、私の手の中にころんと転がした。こんな指輪ひとつで本当に何とかなるのかと疑問だが、とりあえず指にはめてみる。利き手はいやだから、左手の中指にしておこう。
「何か掴んでみなよ」
殿下に言われ、サイモンの机に転がっていたペンをぐっと握ってみた。が、なんの変化もない。ヒビも入らず折れたりもしない。
「す、すごい! ペンが折れません!」
「普通ペンは折れねーけどな」
「ルシー嬢は魔力が筋力に変換されるタイプなのか! これは貴重な実験ざいりょ……研究対象だな!」
いま実験材料って言おうとしたよね? サイモンの奴め、私を何だと思っているのか!
ムッとした瞬間、手に余計な力が入り――。
「あっ」
「あぁあ、私の指輪がぁあああ!」
ペンも指輪もパキンと音を立てて壊れてしまった。サイモンは粉々に砕け散った指輪の残骸を見つめ、目に涙を浮かべている。
「ご、ごめんなさい……。弁償します」
「クッ……クックック。フハハハハ! 何と言うことだ、私の指輪が負けるとは! おお、燃えてきたぞ! 次はこれだ!」
サイモンの青い瞳が、ガスコンロのように激しく燃えている。触れるな危険。
私は差し出された指輪を大人しく指にはめた。
「さあ! この鉄塊で思いっきり運動するがいい!」
サイモンは机の下から鉄アレイのようなものを出した。なんだこれはと思いつつ、ガシッと掴んでふん!ふん!と持ち上げる。が、しかし。
「あっ、石にヒビが」
「ぐああああ!」
またしても指輪の石が砕け、床にがくりと膝をつくサイモン。何だか気の毒になってきた。もう止めておいた方がいいかもしれない。
「あの~、もういいですから……」
「何のこれしき、まだまだァ! 次はこれでどうだ!?」
サイモンはいちばん下の引き出しから小さな箱をだし、ぱかりとフタを開けた。オニキスのように真っ黒な石がはめられた指輪だ。よりによってルシー色か……。
「これは最新の研究によって作られた、体内の魔力を空気中に拡散させる指輪だ! さあ、嵌めるがいい!」
「はあ……」
最近の研究でダメだったらどうすりゃいいんだろ。不安に思いつつ指輪をはめて鉄アレイ(?)で運動したが、何の変化もなく指輪も無傷であった。
「……大丈夫みたいだね。あと3個ぐらいはダメになるかと思ってたけど」
「さすが最新版! 変態科学者だけど、成果はちゃんと出たじゃん」
私の後ろで殿下とカイラーが好き勝手にぼそぼそ話し合っている。他人事だからって気楽なものだ。
しかしサイモン氏はゲーム画面では冷静そうなメガネ君だったのに、実物は頭のネジが一本とれちゃった系の人で……転生者がふたり混ざるだけで、インテリ君がマッドサイエンティストになるとは恐ろしい。
「や、やった……。私の勝ちだ! 見たか、殿下、カイラー! 科学の勝利だ!」
「ああ、うん。良かったね」
「すげー、すげー」
ぱちぱちぱち。私はなげやりな二人に混ざり、サイモン氏へ感謝の拍手を送った。ありがとう、狂科学者。あなたのおかげで平穏な学園生活に戻れそうです。
その後は教室に戻ったが、椅子に座った途端アリシアたちの質問ぜめに会って大変だった。何の用でしたのと目をキラキラさせながら訊くので、指輪を見せて説明したらひどくガッカリしていた。何かスンマセン……。
「何か掴んでみなよ」
殿下に言われ、サイモンの机に転がっていたペンをぐっと握ってみた。が、なんの変化もない。ヒビも入らず折れたりもしない。
「す、すごい! ペンが折れません!」
「普通ペンは折れねーけどな」
「ルシー嬢は魔力が筋力に変換されるタイプなのか! これは貴重な実験ざいりょ……研究対象だな!」
いま実験材料って言おうとしたよね? サイモンの奴め、私を何だと思っているのか!
ムッとした瞬間、手に余計な力が入り――。
「あっ」
「あぁあ、私の指輪がぁあああ!」
ペンも指輪もパキンと音を立てて壊れてしまった。サイモンは粉々に砕け散った指輪の残骸を見つめ、目に涙を浮かべている。
「ご、ごめんなさい……。弁償します」
「クッ……クックック。フハハハハ! 何と言うことだ、私の指輪が負けるとは! おお、燃えてきたぞ! 次はこれだ!」
サイモンの青い瞳が、ガスコンロのように激しく燃えている。触れるな危険。
私は差し出された指輪を大人しく指にはめた。
「さあ! この鉄塊で思いっきり運動するがいい!」
サイモンは机の下から鉄アレイのようなものを出した。なんだこれはと思いつつ、ガシッと掴んでふん!ふん!と持ち上げる。が、しかし。
「あっ、石にヒビが」
「ぐああああ!」
またしても指輪の石が砕け、床にがくりと膝をつくサイモン。何だか気の毒になってきた。もう止めておいた方がいいかもしれない。
「あの~、もういいですから……」
「何のこれしき、まだまだァ! 次はこれでどうだ!?」
サイモンはいちばん下の引き出しから小さな箱をだし、ぱかりとフタを開けた。オニキスのように真っ黒な石がはめられた指輪だ。よりによってルシー色か……。
「これは最新の研究によって作られた、体内の魔力を空気中に拡散させる指輪だ! さあ、嵌めるがいい!」
「はあ……」
最近の研究でダメだったらどうすりゃいいんだろ。不安に思いつつ指輪をはめて鉄アレイ(?)で運動したが、何の変化もなく指輪も無傷であった。
「……大丈夫みたいだね。あと3個ぐらいはダメになるかと思ってたけど」
「さすが最新版! 変態科学者だけど、成果はちゃんと出たじゃん」
私の後ろで殿下とカイラーが好き勝手にぼそぼそ話し合っている。他人事だからって気楽なものだ。
しかしサイモン氏はゲーム画面では冷静そうなメガネ君だったのに、実物は頭のネジが一本とれちゃった系の人で……転生者がふたり混ざるだけで、インテリ君がマッドサイエンティストになるとは恐ろしい。
「や、やった……。私の勝ちだ! 見たか、殿下、カイラー! 科学の勝利だ!」
「ああ、うん。良かったね」
「すげー、すげー」
ぱちぱちぱち。私はなげやりな二人に混ざり、サイモン氏へ感謝の拍手を送った。ありがとう、狂科学者。あなたのおかげで平穏な学園生活に戻れそうです。
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