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31 クラブ活動をしたい
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私が氷の魔法を使うようになった事実はあっという間に学園中に広まり、なかには指輪を貸してほしいと言う生徒まで現れた。サイモンに許可を取り、「必ず返してね」という約束のもと貸し出しを行ったが、なぜか氷を出せる者は一人もいなかった。
今のところ、氷の魔法を使えるのは私とティナだけである。
「――というわけなんですが、どういう事でしょうか?」
疑問に思った私はティナを連れてサイモンの研究室を訪れている。私の話を聞いたサイモンはうんうんと頷き、得意げに説明した。
「それは当然の結果だ。氷魔法の指輪は、水と冷気を同時に出す魔法を埋め込んであるからな! つまり二つの魔法を同時に使うようなもので、大量の魔力を必要とする。そんな魔力の化け物、そうそういるわけが……」
――コン!
私がバット杖を床に打ち付けると、サイモンはビクゥ!と肩を跳ね上げた。その化け物がここに二人いるんですけど?
「いやだからつまり、そんな貴重な人材が、簡単に見つかるわけが無いと言いたいのだ! 誤解だ、落ち着きたまえ!」
ワタワタするサイモンを見て、ティナが「ゲームと違う……」と残念そうにつぶやく。そうだよ。インテリお兄さんじゃなくて、ただの狂科学者なんだよ。
「サイモン様。こちらは私の友人のティナなんですが、彼女も氷魔法を使えるんです。例の魔力値を測る道具を貸してくれませんか?」
「ほほう! ルシー嬢の周りには研究対象者が多いな。ぜひ使ってくれたまえ!」
サイモンが差し出した黒い板にティナが手を乗せると、数値がじわりと浮かび上がった。
属性:光 魔力値:1321 魅了:724。
「属性とかは分かるけど、魅了って何?」
「なんかね、魔力には個人ごとに性質があるんだって。聡明さとか、筋力とかに影響を与えるみたい。にしても、魅了ってまさに主人公らしい力だね」
「なっ……属性が光だと!? 数百年に一人の逸材ではないか! フハハハハ、素晴らしい!」
話し合う私とティナの前で、サイモンが高笑いを始めた。この人はすぐに自分の世界に入ってしまうので困ったものだ。
笑っているサイモンを残し、「失礼しました」と部屋を出る。ティナは何かを思いついたのか、にやりと口角を上げた。
「氷魔法でさ、カキ氷とかアイスとか作れるんじゃない? みんなで調理部みたいなクラブを作って、来年の学園祭に出店しようよ! きっと売れると思うんだ」
ああ、言うと思った。この世界にはまだ氷系のお菓子がない。氷は冬のあいだに作り、氷室という特殊な場所で保管している。とても貴重なものなので、氷を使うことが出来るのは王族と一部の貴族だけだ。ガイゼル侯爵家ではもちろん使っておりますが。
そしてディオン学園ではクラブ活動は完全に任意で、やってもやらなくてもいいという事になっている。
「確かに売れそうだけど、売り上げって学園に取られちゃうんじゃないの?」
「それでもいいの。高校生の頃みたいに、お祭り騒ぎしたいんだよぉ。ねえ~、お願い。わたしが部長をするからさ!」
両手を合わせて上目遣いするティナは、殺人的な可愛さであった。
くっ、こんなところで魅了を使ってくるとは……!
「し、仕方ないな。でもクラブを作るなら、先生の誰かに顧問を頼まないと」
「まっかせて! わたし、職員室に行って頼んでくるね!」
そして意気揚々と廊下を歩いていったティナであったが、教室に戻ってきた際にはションボリしていた。ティナを待つあいだにアリシア達にも調理部の話をしたのに、一体なにがあったというのか。
「ティナ、どうしましたの? 調理部はダメでしたの?」
イレーヌが声をかけると、ティナは呻きながら低い声をだした。
「うう……。わたしの成績がよくないから、期末テストの結果を見てからOK出すって言われた。全教科で平均点以上を目指せって。じゃないとダメだって……」
どうやら先生がたには魅了が効かなかったらしい。
世知がらい世の中です。
「じゃあ勉強すればいいじゃない。ちなみに、何の教科が苦手なの?」
ウェンディが明るい声で尋ねると、ティナはゆっくりと顔をあげ――
「魔法学以外、全部」
しーん。
もうアカンね。諦めたほうがいいんじゃね?……という空気になりかけたので、私はパン!と手を打った。
「じゃあ、皆で勉強を教えあいましょう。私は語学と刺繍を担当しようかな」
「ではあたくしは歴史を担当しますわ」
「わたくしは理科を受け持ちます」
「わたしは地理かな」
アリシア、イレーヌ、ウェンディの答えも出たが、数学が得意な者がいない。
「数学を教えられる子がいないわね……どうしようかしら」
「ふふふ……。お困りのようですわね。何なら、わたくしが教えてあげても良くってよ?」
ずっと話を聞いていたのか、クラリッサが満を持して登場。最初から「仲間に入れて」といえばいいのに、意地っ張りなんだから。
「クラリッサ嬢も調理部に入りますか? まだまだ空きがありますけど」
「べっ、別に入りたいわけじゃありませんわ! でもまぁ、入ってほしいのなら入りますけど……」
ツンツンしたあと、急に頬を赤らめてモジモジする。
なんというツンデレ。いや、ツンモジ? よく分からないけど、可愛いものだ。
勉強会は曜日ごとに教科を変え、自習室でやることになった。自習室は図書館の隣にあり、誰でも利用することができる。期末テストまであと一ヶ月ぐらいだ。みんなで頑張ろう。
今のところ、氷の魔法を使えるのは私とティナだけである。
「――というわけなんですが、どういう事でしょうか?」
疑問に思った私はティナを連れてサイモンの研究室を訪れている。私の話を聞いたサイモンはうんうんと頷き、得意げに説明した。
「それは当然の結果だ。氷魔法の指輪は、水と冷気を同時に出す魔法を埋め込んであるからな! つまり二つの魔法を同時に使うようなもので、大量の魔力を必要とする。そんな魔力の化け物、そうそういるわけが……」
――コン!
私がバット杖を床に打ち付けると、サイモンはビクゥ!と肩を跳ね上げた。その化け物がここに二人いるんですけど?
「いやだからつまり、そんな貴重な人材が、簡単に見つかるわけが無いと言いたいのだ! 誤解だ、落ち着きたまえ!」
ワタワタするサイモンを見て、ティナが「ゲームと違う……」と残念そうにつぶやく。そうだよ。インテリお兄さんじゃなくて、ただの狂科学者なんだよ。
「サイモン様。こちらは私の友人のティナなんですが、彼女も氷魔法を使えるんです。例の魔力値を測る道具を貸してくれませんか?」
「ほほう! ルシー嬢の周りには研究対象者が多いな。ぜひ使ってくれたまえ!」
サイモンが差し出した黒い板にティナが手を乗せると、数値がじわりと浮かび上がった。
属性:光 魔力値:1321 魅了:724。
「属性とかは分かるけど、魅了って何?」
「なんかね、魔力には個人ごとに性質があるんだって。聡明さとか、筋力とかに影響を与えるみたい。にしても、魅了ってまさに主人公らしい力だね」
「なっ……属性が光だと!? 数百年に一人の逸材ではないか! フハハハハ、素晴らしい!」
話し合う私とティナの前で、サイモンが高笑いを始めた。この人はすぐに自分の世界に入ってしまうので困ったものだ。
笑っているサイモンを残し、「失礼しました」と部屋を出る。ティナは何かを思いついたのか、にやりと口角を上げた。
「氷魔法でさ、カキ氷とかアイスとか作れるんじゃない? みんなで調理部みたいなクラブを作って、来年の学園祭に出店しようよ! きっと売れると思うんだ」
ああ、言うと思った。この世界にはまだ氷系のお菓子がない。氷は冬のあいだに作り、氷室という特殊な場所で保管している。とても貴重なものなので、氷を使うことが出来るのは王族と一部の貴族だけだ。ガイゼル侯爵家ではもちろん使っておりますが。
そしてディオン学園ではクラブ活動は完全に任意で、やってもやらなくてもいいという事になっている。
「確かに売れそうだけど、売り上げって学園に取られちゃうんじゃないの?」
「それでもいいの。高校生の頃みたいに、お祭り騒ぎしたいんだよぉ。ねえ~、お願い。わたしが部長をするからさ!」
両手を合わせて上目遣いするティナは、殺人的な可愛さであった。
くっ、こんなところで魅了を使ってくるとは……!
「し、仕方ないな。でもクラブを作るなら、先生の誰かに顧問を頼まないと」
「まっかせて! わたし、職員室に行って頼んでくるね!」
そして意気揚々と廊下を歩いていったティナであったが、教室に戻ってきた際にはションボリしていた。ティナを待つあいだにアリシア達にも調理部の話をしたのに、一体なにがあったというのか。
「ティナ、どうしましたの? 調理部はダメでしたの?」
イレーヌが声をかけると、ティナは呻きながら低い声をだした。
「うう……。わたしの成績がよくないから、期末テストの結果を見てからOK出すって言われた。全教科で平均点以上を目指せって。じゃないとダメだって……」
どうやら先生がたには魅了が効かなかったらしい。
世知がらい世の中です。
「じゃあ勉強すればいいじゃない。ちなみに、何の教科が苦手なの?」
ウェンディが明るい声で尋ねると、ティナはゆっくりと顔をあげ――
「魔法学以外、全部」
しーん。
もうアカンね。諦めたほうがいいんじゃね?……という空気になりかけたので、私はパン!と手を打った。
「じゃあ、皆で勉強を教えあいましょう。私は語学と刺繍を担当しようかな」
「ではあたくしは歴史を担当しますわ」
「わたくしは理科を受け持ちます」
「わたしは地理かな」
アリシア、イレーヌ、ウェンディの答えも出たが、数学が得意な者がいない。
「数学を教えられる子がいないわね……どうしようかしら」
「ふふふ……。お困りのようですわね。何なら、わたくしが教えてあげても良くってよ?」
ずっと話を聞いていたのか、クラリッサが満を持して登場。最初から「仲間に入れて」といえばいいのに、意地っ張りなんだから。
「クラリッサ嬢も調理部に入りますか? まだまだ空きがありますけど」
「べっ、別に入りたいわけじゃありませんわ! でもまぁ、入ってほしいのなら入りますけど……」
ツンツンしたあと、急に頬を赤らめてモジモジする。
なんというツンデレ。いや、ツンモジ? よく分からないけど、可愛いものだ。
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