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34 殿下とカイラーによる計画
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「うまく行ったな」
「ああ。二人を罠にはめたようで、すこし申し訳なかったけどね……」
ルシーとティナの二人を自習室に残し、ウィルとカイラーは先に部屋を出た。カイラーの手には「生徒会にて使用中」の木札が握られている。
実は今日、自習室にルシーとティナしかいなかったのはウィルが仕掛けた罠のためであった。ウィルはルシー達が自習室に入った直後、ドアに「生徒会にて使用中」の木札を掛けたのだ。
ルシー達は放課後になるとすぐに自習室へやってくる。それを知っていたからこそ、二人きりになる状況を作り出せたのだった。
「でもおまえまで二人の違和感に気づいていたとは意外だな。普段は筋トレばかりしているくせに」
「俺だって違和感ぐらい分かる! 殿下はいなかったけど、鉢植え事件のとき、俺は間近でルシー嬢を見てたんだぜ? 今から事件が起こります、なんて言われたら誰だって変だと思うだろ!」
「羨ましいな……。僕も間近でルシー嬢の活躍を見たかったよ」
「活躍したのは俺だっつーの!」
憤慨する相棒を横目で見ながら、生徒会室へ戻る。今日の活動はすでに終わっているため、部屋に残っているのはウィルとカイラーだけだ。
「殿下はルシー嬢とティナの話を信じるのか? 結構すごい話だったけど」
カイラーが筋トレしながら訊いてきた。この男は毎日必ず筋トレしないと気がすまないらしい。
「信じるよ。というより、信じるしかないだろ。彼女たちの動きは、未来を知っていたからこそだ。ルシー嬢たちが悪人でなくて本当に良かった……。未来を知っているなんて、これ以上ない武器だからな」
「そーだな。俺もそう思うぜ。あいつら意外と抜けてるとこあるし、なんか憎めないんだよなぁ……」
「カイラーはティナ嬢を気に入ってるみたいだな」
何気なく口にすると、筋トレ中の男は鉄塊を床にゴン!と落とした。半分冗談で言ったのに、本気な様子である。顔が真っ赤だ。
「べっべべ別に! そんな事ねぇよ、俺は筋トレに生きる男だからな! まぁちょっと、ティナはお人好しでほっとけない気分になる事はあるけど……」
「気にしてるんじゃないか」
「……まぁな。でもティナは男爵家の娘だからさ……。俺があいつと仲良くなっても、親父はいい顔しないと思う」
真っ赤な顔はもとに戻り、暗い表情に変わった。が、やはり筋トレは継続中だ。もう無意識にやってるのかもしれない。
ウィルとしては純情な友人を応援したいところだ。
「安心しろ、カイラー。先ほどルシー嬢は、僕とティナ嬢が結ばれる運命だったと話しただろう。王族と男爵家の令嬢が結婚するんだぞ? 恐らく、身分の問題を超えるような決定的な出来事が起こるはずだ。僕らは彼女たちを手助けしてやればいい」
「そっ、そうか! まだ諦めなくていいんだな!?」
「当たり前だ。そう簡単に諦めてたまるか」
「お、おお……ウィルが本気だ」
ウィルはすでに確信している。この国で最も王太子妃にふさわしいのはルシーフェルだ。身分的にも申し分ないし、何よりルシーは自分の能力を他人のために使う優しさがある。率直に言って、好きだ。ルシーにもウィルを好きになってほしい。
先ほどルシーは前向きな返事を聞かせてくれたのだから、少しずつ外堀を埋めても構わないだろう。とりあえず年末までに、侯爵家に打診しておくか……。
――という恐ろしい計画が進行中なことも知らぬまま、ルシーたちは相変わらず自習室で刺繍をしていた。脳筋だと思ってたのにだの、さすが腹黒だのブツクサ言う彼女たちは、自分たちがターゲットになった事など知る由もなかった。
「ああ。二人を罠にはめたようで、すこし申し訳なかったけどね……」
ルシーとティナの二人を自習室に残し、ウィルとカイラーは先に部屋を出た。カイラーの手には「生徒会にて使用中」の木札が握られている。
実は今日、自習室にルシーとティナしかいなかったのはウィルが仕掛けた罠のためであった。ウィルはルシー達が自習室に入った直後、ドアに「生徒会にて使用中」の木札を掛けたのだ。
ルシー達は放課後になるとすぐに自習室へやってくる。それを知っていたからこそ、二人きりになる状況を作り出せたのだった。
「でもおまえまで二人の違和感に気づいていたとは意外だな。普段は筋トレばかりしているくせに」
「俺だって違和感ぐらい分かる! 殿下はいなかったけど、鉢植え事件のとき、俺は間近でルシー嬢を見てたんだぜ? 今から事件が起こります、なんて言われたら誰だって変だと思うだろ!」
「羨ましいな……。僕も間近でルシー嬢の活躍を見たかったよ」
「活躍したのは俺だっつーの!」
憤慨する相棒を横目で見ながら、生徒会室へ戻る。今日の活動はすでに終わっているため、部屋に残っているのはウィルとカイラーだけだ。
「殿下はルシー嬢とティナの話を信じるのか? 結構すごい話だったけど」
カイラーが筋トレしながら訊いてきた。この男は毎日必ず筋トレしないと気がすまないらしい。
「信じるよ。というより、信じるしかないだろ。彼女たちの動きは、未来を知っていたからこそだ。ルシー嬢たちが悪人でなくて本当に良かった……。未来を知っているなんて、これ以上ない武器だからな」
「そーだな。俺もそう思うぜ。あいつら意外と抜けてるとこあるし、なんか憎めないんだよなぁ……」
「カイラーはティナ嬢を気に入ってるみたいだな」
何気なく口にすると、筋トレ中の男は鉄塊を床にゴン!と落とした。半分冗談で言ったのに、本気な様子である。顔が真っ赤だ。
「べっべべ別に! そんな事ねぇよ、俺は筋トレに生きる男だからな! まぁちょっと、ティナはお人好しでほっとけない気分になる事はあるけど……」
「気にしてるんじゃないか」
「……まぁな。でもティナは男爵家の娘だからさ……。俺があいつと仲良くなっても、親父はいい顔しないと思う」
真っ赤な顔はもとに戻り、暗い表情に変わった。が、やはり筋トレは継続中だ。もう無意識にやってるのかもしれない。
ウィルとしては純情な友人を応援したいところだ。
「安心しろ、カイラー。先ほどルシー嬢は、僕とティナ嬢が結ばれる運命だったと話しただろう。王族と男爵家の令嬢が結婚するんだぞ? 恐らく、身分の問題を超えるような決定的な出来事が起こるはずだ。僕らは彼女たちを手助けしてやればいい」
「そっ、そうか! まだ諦めなくていいんだな!?」
「当たり前だ。そう簡単に諦めてたまるか」
「お、おお……ウィルが本気だ」
ウィルはすでに確信している。この国で最も王太子妃にふさわしいのはルシーフェルだ。身分的にも申し分ないし、何よりルシーは自分の能力を他人のために使う優しさがある。率直に言って、好きだ。ルシーにもウィルを好きになってほしい。
先ほどルシーは前向きな返事を聞かせてくれたのだから、少しずつ外堀を埋めても構わないだろう。とりあえず年末までに、侯爵家に打診しておくか……。
――という恐ろしい計画が進行中なことも知らぬまま、ルシーたちは相変わらず自習室で刺繍をしていた。脳筋だと思ってたのにだの、さすが腹黒だのブツクサ言う彼女たちは、自分たちがターゲットになった事など知る由もなかった。
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