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35 期末テスト
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12月、怒涛のテスト週間がやってきた。そして二週間後には一気に返却され、教室の中に嬉しそうな声や悲鳴のような叫びがあちこちから上がる。
みんなで勉強会をしていたものの、自分の答案用紙をひとに見せびらかす趣味はない。私はひと通り自分の分だけ確認し、他のメンバーの様子をひっそりと確認した。クラリッサは勿論、アリシア達も余裕の表情だ。となると……。
実はすぐ隣にティナがいるのだが、あえて見ないようにしている。見なくてもティナの緊張が伝わってくるのだ。答案用紙を見るたびに息を飲む気配や、ほっとしたようなため息まで聞こえる。
ど、どうだったのよ、ティナ。平均点ちゃんと取れたの? ああ、訊きたいけど訊けない……!
ティナは勉強会の後も、寮の自室で復習に励んでいたらしい。そこまでカキ氷食いたいのかよと若干引きつつも、彼女の頑張りが報われますようにと祈らずにはいられない。
「ティナ! どうでしたの、まさか赤点ではないですわよね?」
堂々とクラリッサが登場。すごいなこの人。場の空気をぶち壊しちゃったぞ。
しかしずばりと訊いてくれたのは良かった。私もティナの方へ顔を向け、恐るおそる並べられた答案用紙に目を走らせる。88、72、68……おっ、なかなかいい数字じゃないの――と思いきや、ティナが震えながらにぎる数学のテスト用紙には62の文字が。び、微妙。
「数学の平均点は……!?」
「確認いたします!」
いつの間にか横に来ていたイレーヌが素早く答え、平均点一覧表を見る。
「数学の平均点は――60.8です!」
「や、やったぁ……! 頑張ったね、ティナ!」
「うん……うん……!!」
ウェンディがティナに抱きつき、二人は涙しながら数字を喜ぶ。
はぁ、ギリギリだけど何とかなって良かった。
「数学のテスト、最後にアレが出てましたわね」
「出てましたね。まさか出題されるとは思わなかった……。ありがとう、クラリッサのお陰だわ」
「わ、わたくしではなく、サイモン様のお陰ですわ!」
アリシアと一緒にお礼をいうと、クラリッサは真っ赤になった。サイモンラブで結構なことである。
今回の数学のテストには、出るわけないと思っていた学院レベルの問題が出題されたのだ。しかも配点が高く、解く過程で5点、回答で5点の計10点。この問題を完璧に解けたのは、一年生では私たちぐらいのものだろう。
ダンスも刺繍の評価もクリアしたし、もうティナを止められる者はいない。ティナは昼休みの時間にテスト用紙を持って職員室へ向かい、とうとう教師陣の了解を得て戻ってきた。
「やったよ! 調理部オーケー出た!」
食堂で待っていた私たちはきゃあっと喜びの声をあげ、思わず拍手してしまった。一ヶ月に渡る苦労が報われて本当に嬉しい。
「ああ、良かった。ところで、顧問の先生は誰になったの?」
「マルコ爺さん先生になったよ」
ティナの返答に「え」と動きが止まる。
てっきり、家庭科全般が得意なオクタビア先生かと思ってたのに。
「意外ですわね。どうしてマルコ爺さん先生ですの?」
「魔法を使うからだって。魔法で作った料理には微量ながら魔力が含まれてるから、腹を壊さないかワシが毒見するとか何とか言ってたよ」
それ、ただ単に味見したいだけなんじゃないの?――と、この場にいる誰もが思ったに違いない。しかしようやく先生のOKが出たことだし、細かいことはまぁいいか。マルコ爺にも食べさせてあげよう。
クラブ活動の申請用紙を出したり、部費をもらったりしている内に一学期が終了した。年末年始は寮が閉鎖するので、生徒たちはみんな故郷へ戻るのだ。
最後の授業を終えたら荷造りし、迎えに来る馬車が混雑しないように日程をずらしてそれぞれ故郷へ旅立つ。ガイゼルからもエマが迎えに来てくれて、懐かしくて抱きついてしまった。
「エマ、久しぶりね!」
「お嬢さまもお元気そうで良かったです。ささ、寒いですから馬車へどうぞ」
「うん」
私たちはお互いに、四ヶ月の間に何があったかを報告しあった。エマによるとお手入れハサミは順調に売れているらしい。もう少し事業を拡大しますかと訊かれたが、今のままにしようと答えた。利益のためではなく、誰かの役に立ちたくて始めたことだから。
そして今まで普通のハサミを作っていた工房が何か影響を受けたのか、先が丸くなった安全なハサミも販売されるようになったとエマは教えてくれた。私としては嬉しい変化だ。便利な道具というものは、老若男女に関係なく、誰でも安心して使えるべきである。
王都へ来たときと同じように、ホテルで二泊して懐かしいガイゼルのお城に戻った。城へ着いた途端、お父さまの熱い抱擁を受け、背骨が折れるかと思った。
みんなで勉強会をしていたものの、自分の答案用紙をひとに見せびらかす趣味はない。私はひと通り自分の分だけ確認し、他のメンバーの様子をひっそりと確認した。クラリッサは勿論、アリシア達も余裕の表情だ。となると……。
実はすぐ隣にティナがいるのだが、あえて見ないようにしている。見なくてもティナの緊張が伝わってくるのだ。答案用紙を見るたびに息を飲む気配や、ほっとしたようなため息まで聞こえる。
ど、どうだったのよ、ティナ。平均点ちゃんと取れたの? ああ、訊きたいけど訊けない……!
ティナは勉強会の後も、寮の自室で復習に励んでいたらしい。そこまでカキ氷食いたいのかよと若干引きつつも、彼女の頑張りが報われますようにと祈らずにはいられない。
「ティナ! どうでしたの、まさか赤点ではないですわよね?」
堂々とクラリッサが登場。すごいなこの人。場の空気をぶち壊しちゃったぞ。
しかしずばりと訊いてくれたのは良かった。私もティナの方へ顔を向け、恐るおそる並べられた答案用紙に目を走らせる。88、72、68……おっ、なかなかいい数字じゃないの――と思いきや、ティナが震えながらにぎる数学のテスト用紙には62の文字が。び、微妙。
「数学の平均点は……!?」
「確認いたします!」
いつの間にか横に来ていたイレーヌが素早く答え、平均点一覧表を見る。
「数学の平均点は――60.8です!」
「や、やったぁ……! 頑張ったね、ティナ!」
「うん……うん……!!」
ウェンディがティナに抱きつき、二人は涙しながら数字を喜ぶ。
はぁ、ギリギリだけど何とかなって良かった。
「数学のテスト、最後にアレが出てましたわね」
「出てましたね。まさか出題されるとは思わなかった……。ありがとう、クラリッサのお陰だわ」
「わ、わたくしではなく、サイモン様のお陰ですわ!」
アリシアと一緒にお礼をいうと、クラリッサは真っ赤になった。サイモンラブで結構なことである。
今回の数学のテストには、出るわけないと思っていた学院レベルの問題が出題されたのだ。しかも配点が高く、解く過程で5点、回答で5点の計10点。この問題を完璧に解けたのは、一年生では私たちぐらいのものだろう。
ダンスも刺繍の評価もクリアしたし、もうティナを止められる者はいない。ティナは昼休みの時間にテスト用紙を持って職員室へ向かい、とうとう教師陣の了解を得て戻ってきた。
「やったよ! 調理部オーケー出た!」
食堂で待っていた私たちはきゃあっと喜びの声をあげ、思わず拍手してしまった。一ヶ月に渡る苦労が報われて本当に嬉しい。
「ああ、良かった。ところで、顧問の先生は誰になったの?」
「マルコ爺さん先生になったよ」
ティナの返答に「え」と動きが止まる。
てっきり、家庭科全般が得意なオクタビア先生かと思ってたのに。
「意外ですわね。どうしてマルコ爺さん先生ですの?」
「魔法を使うからだって。魔法で作った料理には微量ながら魔力が含まれてるから、腹を壊さないかワシが毒見するとか何とか言ってたよ」
それ、ただ単に味見したいだけなんじゃないの?――と、この場にいる誰もが思ったに違いない。しかしようやく先生のOKが出たことだし、細かいことはまぁいいか。マルコ爺にも食べさせてあげよう。
クラブ活動の申請用紙を出したり、部費をもらったりしている内に一学期が終了した。年末年始は寮が閉鎖するので、生徒たちはみんな故郷へ戻るのだ。
最後の授業を終えたら荷造りし、迎えに来る馬車が混雑しないように日程をずらしてそれぞれ故郷へ旅立つ。ガイゼルからもエマが迎えに来てくれて、懐かしくて抱きついてしまった。
「エマ、久しぶりね!」
「お嬢さまもお元気そうで良かったです。ささ、寒いですから馬車へどうぞ」
「うん」
私たちはお互いに、四ヶ月の間に何があったかを報告しあった。エマによるとお手入れハサミは順調に売れているらしい。もう少し事業を拡大しますかと訊かれたが、今のままにしようと答えた。利益のためではなく、誰かの役に立ちたくて始めたことだから。
そして今まで普通のハサミを作っていた工房が何か影響を受けたのか、先が丸くなった安全なハサミも販売されるようになったとエマは教えてくれた。私としては嬉しい変化だ。便利な道具というものは、老若男女に関係なく、誰でも安心して使えるべきである。
王都へ来たときと同じように、ホテルで二泊して懐かしいガイゼルのお城に戻った。城へ着いた途端、お父さまの熱い抱擁を受け、背骨が折れるかと思った。
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