コワモテの悪役令嬢に転生した ~ざまあ回避のため、今後は奉仕の精神で生きて参ります~

千堂みくま

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 演劇部は伝統あるクラブなためか、結構、部費が多い。まだお金に余裕があるとのことで、私たちは王子さまの衣装に使う生地を買うために王都の街へ繰り出した。

 ディオン学園では前もって先生に届出をだし、了承されると王都へ買い物にも行ける。但し誰でも納得できる理由があってこそで、例えばデートだからなんて理由ではもちろん却下されるだろう。清く正しいお付き合いしか認められていないのだ。

「町民たちのエリアへ参りましょう! あちらの方が安く手に入りますわ」

 王都の事情に詳しいクラリッサが先頭を歩き、私たちを案内してくれた。殿下の妃を目指していただけあって、王都についても勉強してきたようだ。私は故郷から出たこともなかったので、クラリッサの努力を心から尊敬する。私も少しは王都のこと知っておかないとな。

 クラリッサが案内してくれた店は、坂の途中にあるこじんまりとした店だった。おばあさんが一人で店番をしているような小さい店だけど、値段のわりに上等な生地が揃っている。王子さまの衣装としてもおかしくはない。

「カイラー様は髪も瞳も赤いですから、赤以外の色にしましょう」

「ティナが着るドレスの色にも合うようにしなくちゃね」

 ティナは桃色の髪をしているので、ドレスは薄い黄緑色にしたのだ。私たちはいろいろ迷った挙句、全体的には白でまとめ、裏地が緑いろのマントをカイラーに着せることにした。カイラーは攻略対象だけあって背が高く、嫌味のように脚が長いので生地は多めに買っておく。

 帰り道にはみんなでカフェに入り、好きな飲み物を買って休憩した。高校生の頃を思い出し、懐かしい気分になる。ミルクティーを飲んでいたウェインディが、んふふと口元をにやけさせながらティナに言った。

「カイラー様とティナっていい感じだよね」

「んぐっ!?」

 ティナはゲホゲホとむせ始めたが、他のメンバーまで「そうそう」と言い出す。
 やっぱり他の人も気づいてたのね。

「あたくしもそう思いましたわ。特にカイラー様は間違いありませんわね」

「ええ。ティナに気がありますわ。あれは劇だからではなく、本気で恋する男の目だと思います」

「ティナはどうですの? カイラー様のことをどう思ってますの?」

 クラリッサがぐいっとティナに迫り、私たちもティナの回答を待った。いくらなんでも、気づいてるでしょ。ティナは口元をハンカチで拭いたあと、赤い顔でぼそぼそと話し出した。

「ど、どうって……。好かれるのは嬉しいと思ってるよ。カイラー様、カッコいいし。でもカッコいいのに子犬みたいに懐いてくるから、そのギャップが結構きゅんとするというか……」

 前世にはいなかったタイプだもんね。紗里奈の頃もカッコいい男子と付き合ってたけど、割とクールな奴が多かったように思う。まあ私には詳しい事情は分からないけど。

「でもカイラー様は公爵家の御曹司で、わたしは男爵家の娘だから……。わたしからカイラー様に近づこうとは思ってないよ。身分が離れすぎてるもの」

 本当はこの先の展開でどうにでもなるだろうけど、今は両思いにならない方が安全だろう。ティナもちゃんと分かっているようだ。
 しかしティナの切ない告白を聞いたクラリッサ達は目を潤ませ、「ティナ……!」と声を震わせた。

「あたくし、影ながら応援しますわ!」

「わたしも! 結ばれない恋って切ないよねっ……!」

「卒業生代表になるほど好成績をとれば、可能性はあるのではないかしら?」

「その方法がありましたわね! ティナ、まだ諦めるのは早いですわよ!」

 予想どおりの展開だ。でも期末のテスト勉強でひいひい言ってたティナに、「卒業生代表になれ」というのも無謀なような。

「が、がんばってみるね……」

 ティナは口元をひくつかせながら、何とか言葉を出した。ゲームだと知っている私は何も言えず、生ぬるい視線で彼女たちを見守る。
 もしティナが本気でカイラーを好きになったら、私も応援してあげよう。頑張ってね、ティナ。
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