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41 学園祭1
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とうとう学園祭の当日を迎えた。ディオン学園はクラブの数が多いので、校門から校舎にかけて道の両脇にずらっと出店が並んでいる。
予想どおり食べ物の店が多い様子だ。焼き鳥のような串料理の店、小さめのコロッケを売る店なんかもある。売り上げの一部は活動費に回されるので、部費が少ないクラブは必死なのだろう。
普段は閉じている門も午後の3時間だけは開放され、外からのお客さんも大勢やってくる。私たちの調理部もてんてこ舞い状態で、店先から中庭に向かって長い列ができていた。
「苺がもう品切れですわ!」
「代わりにオレンジを使いましょう! メニュー表を書きかえておかなくちゃ」
カキ氷が売れること、売れること。今日はよく晴れて気温も高いせいか、飲み物がわりに買う人で大賑わいだ。ひと月以上かけて氷やシロップの開発に取り組み、そのたびにマルコ爺さんに味見をしてもらったが、爺さんの腹が壊れる事もなく無事にお店を開くことができた。安心して販売できるのはいいけど、とにかく忙しい。
「マンゴー味はいかが? 果肉もたっぷりのせて、300ユノですわ!」
クラリッサの実家があるギールトンでは、マンゴーも栽培しているらしい。マンゴー味はやや高めの値段なのに、瑞々しい果肉が人気で飛ぶように売れていった。中庭には飲食スペースがあるが早々に満席になり、立ち食いの人もたくさんいる。
「最後に自分たちが食べる分も残したいけど、残るのかな……」
「氷だけなら無限に作れるのに……」
「心配いりませんわ。打ち上げ用に苺とマンゴーは残してありますもの」
「さすがクラリッサ嬢! あ、でもサイモン様の分は?」
「さ、サイモン様にはすでに、一皿わたしてあります! 気にしなくてよろしいのです!」
もう研究室に皿を運んでたのか。というかサイモン、学園祭の日まで研究室に篭ってんのか。すごい研究オタク。
私とティナは劇が始まる三十分前まで氷を作り続け、保冷箱にカキ氷を入れてから店を出た。劇は学園の中心にある講堂で公演されるので、中庭を突っ切ってひたすら走る。舞台裏にはすでに他のメンバーが揃っていた。
「さあ、着がえてちょうだい!」
「はい!」
キンバリー嬢がきびきびと指示を出す。私の出番はまだなので、ティナの着替えを手伝った。最初はぼろっちい服で掃除をする場面から始まるのだ。
継母役や義姉役の先輩たちが台本を見ながらブツブツつぶやく声が響き、舞台袖は異様な雰囲気であった。無理もない。講堂内はぎっしりと人で埋まっていて、全員が劇を見るために集まったのかと思うと、否応なしにプレッシャーを感じる。
「ティナ、頑張れよ。あとで俺も出るからな」
「う、うん……。頑張ってきます」
カイラーが三角巾をかぶったティナの頭にぽんぽんと手を乗せると、ティナは少し顔を赤らめて笑った。劇の練習中から二人は少しずつ距離を縮め、とうとう恋人のように親しくなったのだ。
ティナはまだ遠慮がちだけど、カイラーに舌打ちすることもなくなり――それが微妙に残念である。「舌打ち!?」と驚くカイラーは面白かったのに。
「ルシー嬢。魔法使いのマントだよ」
「あ、殿下……。ありがとうございます」
ティナが舞台へ出て行ったあと、殿下が私の頭にふわりと藍色のマントをかぶせた。しかも被せるだけじゃなく、首もとのリボンまで結んでくれる。ふせた睫毛まで金色で、思わずまじまじと見つめてしまった。もしかして色素も魔力で作ってんのかな。
「ルシー様、出番よ!」
「はぁい。では、行ってきます」
「うん。頑張ってね」
舞台では、ティナが演じるアシェンタが舞踏会に行けないと泣いている。私はマントをひらひらさせながら姫の前に姿を現した。
「アシェンタ、泣くのはおよし。私が舞踏会へ行けるようにしてあげよう」
「あなたはだぁれ?」
目に涙を浮かべるティナがめちゃくちゃ可愛い。ぐああ、私もこんな顔に生まれたかったなぁ……。はっ、イカン、台詞を言わなきゃ。
「私は魔法使いさ。まずは庭からカボチャを運んでおいで」
怪しいおばあさんに従い、庭からカボチャだのねずみだのを運んでくるアシェンタ。もちろん、どれもハリボテで作ったものだ。しかし絵がものすごく上手いので安っぽく見えない。演劇部、すごいわ……。
「さあ、魔法をかけるよ」
予想どおり食べ物の店が多い様子だ。焼き鳥のような串料理の店、小さめのコロッケを売る店なんかもある。売り上げの一部は活動費に回されるので、部費が少ないクラブは必死なのだろう。
普段は閉じている門も午後の3時間だけは開放され、外からのお客さんも大勢やってくる。私たちの調理部もてんてこ舞い状態で、店先から中庭に向かって長い列ができていた。
「苺がもう品切れですわ!」
「代わりにオレンジを使いましょう! メニュー表を書きかえておかなくちゃ」
カキ氷が売れること、売れること。今日はよく晴れて気温も高いせいか、飲み物がわりに買う人で大賑わいだ。ひと月以上かけて氷やシロップの開発に取り組み、そのたびにマルコ爺さんに味見をしてもらったが、爺さんの腹が壊れる事もなく無事にお店を開くことができた。安心して販売できるのはいいけど、とにかく忙しい。
「マンゴー味はいかが? 果肉もたっぷりのせて、300ユノですわ!」
クラリッサの実家があるギールトンでは、マンゴーも栽培しているらしい。マンゴー味はやや高めの値段なのに、瑞々しい果肉が人気で飛ぶように売れていった。中庭には飲食スペースがあるが早々に満席になり、立ち食いの人もたくさんいる。
「最後に自分たちが食べる分も残したいけど、残るのかな……」
「氷だけなら無限に作れるのに……」
「心配いりませんわ。打ち上げ用に苺とマンゴーは残してありますもの」
「さすがクラリッサ嬢! あ、でもサイモン様の分は?」
「さ、サイモン様にはすでに、一皿わたしてあります! 気にしなくてよろしいのです!」
もう研究室に皿を運んでたのか。というかサイモン、学園祭の日まで研究室に篭ってんのか。すごい研究オタク。
私とティナは劇が始まる三十分前まで氷を作り続け、保冷箱にカキ氷を入れてから店を出た。劇は学園の中心にある講堂で公演されるので、中庭を突っ切ってひたすら走る。舞台裏にはすでに他のメンバーが揃っていた。
「さあ、着がえてちょうだい!」
「はい!」
キンバリー嬢がきびきびと指示を出す。私の出番はまだなので、ティナの着替えを手伝った。最初はぼろっちい服で掃除をする場面から始まるのだ。
継母役や義姉役の先輩たちが台本を見ながらブツブツつぶやく声が響き、舞台袖は異様な雰囲気であった。無理もない。講堂内はぎっしりと人で埋まっていて、全員が劇を見るために集まったのかと思うと、否応なしにプレッシャーを感じる。
「ティナ、頑張れよ。あとで俺も出るからな」
「う、うん……。頑張ってきます」
カイラーが三角巾をかぶったティナの頭にぽんぽんと手を乗せると、ティナは少し顔を赤らめて笑った。劇の練習中から二人は少しずつ距離を縮め、とうとう恋人のように親しくなったのだ。
ティナはまだ遠慮がちだけど、カイラーに舌打ちすることもなくなり――それが微妙に残念である。「舌打ち!?」と驚くカイラーは面白かったのに。
「ルシー嬢。魔法使いのマントだよ」
「あ、殿下……。ありがとうございます」
ティナが舞台へ出て行ったあと、殿下が私の頭にふわりと藍色のマントをかぶせた。しかも被せるだけじゃなく、首もとのリボンまで結んでくれる。ふせた睫毛まで金色で、思わずまじまじと見つめてしまった。もしかして色素も魔力で作ってんのかな。
「ルシー様、出番よ!」
「はぁい。では、行ってきます」
「うん。頑張ってね」
舞台では、ティナが演じるアシェンタが舞踏会に行けないと泣いている。私はマントをひらひらさせながら姫の前に姿を現した。
「アシェンタ、泣くのはおよし。私が舞踏会へ行けるようにしてあげよう」
「あなたはだぁれ?」
目に涙を浮かべるティナがめちゃくちゃ可愛い。ぐああ、私もこんな顔に生まれたかったなぁ……。はっ、イカン、台詞を言わなきゃ。
「私は魔法使いさ。まずは庭からカボチャを運んでおいで」
怪しいおばあさんに従い、庭からカボチャだのねずみだのを運んでくるアシェンタ。もちろん、どれもハリボテで作ったものだ。しかし絵がものすごく上手いので安っぽく見えない。演劇部、すごいわ……。
「さあ、魔法をかけるよ」
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