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45 コワモテの謎
翌日の放課後、私とティナは校舎の四階に来ていた。目の前には研究室のドアがある。
「どうしても行かないとダメ?」
「行こうよ。わたし、ちょっと気になってる事があるんだ。サイモン様に調べてもらおう」
「うん……」
仕方なくドアをノックし、サイモンの返事を聞いて部屋に入る。机の周りには三人の少年たちが立っていた。殿下たちもすでに来ていたようだ。
「話は聞いたぞ! 魔力を空気中に逃がす指輪をしていても、テーブルを割るほどの怪力が出たそうではないか。ルシー嬢、眉毛を消して魔力を測定するんだ!」
サイモンめ、他人事だと思って楽しそうな顔で言うな! 殿下とカイラーに並ぶサイモンは見た目だけはイケメンなのに、本当に研究のことしか頭にない。
しかし昨日、眉ナシの状態でテーブルを割ってしまったのは事実。私は研究室内の水と石鹸で顔を洗い、メイクを落とした。
「っ、ぐおっ!? なんだ、この凄まじい気配は!?」
「だろ? すごいオーラを感じるだろ? でも殿下とティナは平気だって言うんだよなぁ」
青ざめて震えるサイモンを見て、カイラーが満足そうにつぶやいた。うるっさいわ。眉毛を書いたり消したりする私の身にもなれ。
私は無言のまま二つの指輪をはずし、例のタブレット板に手の平をのせた。じわりと文字が浮かび上がる。
属性:暴力 魔力値:測定不能 筋力:測定不能 殺気:887
「殺気ってなによ! しかも魔力が測定不能になっちゃったし……!」
「あ、やっぱそうなんだ。だよなぁ、騎士として訓練を受けた俺が、脂汗をかくぐらい恐怖を感じるんだぜ? おかしいと思っ、いだぁ! 足ふむなよ!」
「余計なこと言わないの。ルシー様、ごめんね。もういいよ」
「うん……」
計測器の数値にショックを受けたまま、部屋のすみで眉毛を書く。念のためもういちど測定すると、以前と同じ数値だった。
属性:暴力 魔力値:1473 筋力:測定不能。
「眉毛ありとなしで数値が変わるなんて、完全にふざけてるわ……! こんなもん、破壊してくれる!」
「やっ、やめろォォ! 頼むから、その物騒な杖をしまってくれぇ!」
バット杖を取り出して床にコン!と打ち付けると、サイモンは変なタブレット板を大事そうに抱きしめた。ぐぬぬぅ。
「それで、ティナ嬢。僕たちを呼び出したのは、ルシーのことでなにか分かったからなんだろう?」
両思いだと判明してから、殿下は私のことをルシーと呼ぶようになった。でも他の女子のことは「嬢」を付けて呼ぶので、何だか気恥ずかしい。
「ええと……。この世界がゲームだという事は以前お話しましたけど、シナリオ通りだとすれば、これから地下神殿へ行くことになると思うんです」
「地下神殿なんてあんのか?」
「あるとも! ディオン学園は、龍脈の出口を封印するために建てられたと言われている。龍脈にはドラゴンが棲んでいるからな。しかし極秘事項なのにティナ嬢はよく知っているものだ。ゲームの世界というのは本当らしい! フハハ、楽しくなってきた!」
そりゃ知ってるだろうよ。ティナは前世でしつこく『ティナ恋』プレイしてたし。多分、二十回以上やってるんじゃないかな。
「千年前に倒されたドラゴンは封印されてるだけで、地下神殿の中でまだ生きてるはずなんです。でも封印の力って、千年で弱まるみたいで」
「だから皆で倒しに行くわけだね?」
「はい。でも、あの……ドラゴンが完全復活する条件というのがあって。それが、ルシー様が断罪されちゃうことなんです」
「えっ。私が死ぬと、ドラゴンが復活するの? ど、どういうこと?」
「多分だけどね、ルシー様はドラゴンの生まれ変わりとか、ドラゴンの因子を持ってるとか何かあるんだと思う」
「ちょっと待て! ドラゴンの因子については心当たりがあるぞ!」
突然サイモンがでかい声で叫び、研究室の本棚から分厚い本を出してきた。色あせて表紙がボロボロになった本で、かなり古そうだ。めくるたびに埃が舞うから鼻がむずむずしてくる。
「ほら、ここだ。およそ千年前、ドラゴン退治のために国中から猛者が集まったと書いてある。なかでもマイヤーコフ家の若者が活躍し、ドラゴンが倒れたときには頭からつま先までドラゴンの返り血で真っ赤だったと」
「ま、マイヤーコフ家って……。うちの家じゃないの……」
「ドラゴンの血を大量に浴びたことで、体に龍の因子が入ってしまったんだろう。それが代々受け継がれ、ルシー嬢に色濃く遺伝が現れた。つまりドラゴンはルシー嬢の体を取り込むことで活性化し、完全復活するわけだな! これはおもしろ――あだっ!」
「面白くない。そんな事は絶対にさせない」
殿下が低い声でつぶやき、サイモンの足をぐりぐりと踏みつけた。痛そうだけど全っ然、同情できない。する気もないけど。
「どうしても行かないとダメ?」
「行こうよ。わたし、ちょっと気になってる事があるんだ。サイモン様に調べてもらおう」
「うん……」
仕方なくドアをノックし、サイモンの返事を聞いて部屋に入る。机の周りには三人の少年たちが立っていた。殿下たちもすでに来ていたようだ。
「話は聞いたぞ! 魔力を空気中に逃がす指輪をしていても、テーブルを割るほどの怪力が出たそうではないか。ルシー嬢、眉毛を消して魔力を測定するんだ!」
サイモンめ、他人事だと思って楽しそうな顔で言うな! 殿下とカイラーに並ぶサイモンは見た目だけはイケメンなのに、本当に研究のことしか頭にない。
しかし昨日、眉ナシの状態でテーブルを割ってしまったのは事実。私は研究室内の水と石鹸で顔を洗い、メイクを落とした。
「っ、ぐおっ!? なんだ、この凄まじい気配は!?」
「だろ? すごいオーラを感じるだろ? でも殿下とティナは平気だって言うんだよなぁ」
青ざめて震えるサイモンを見て、カイラーが満足そうにつぶやいた。うるっさいわ。眉毛を書いたり消したりする私の身にもなれ。
私は無言のまま二つの指輪をはずし、例のタブレット板に手の平をのせた。じわりと文字が浮かび上がる。
属性:暴力 魔力値:測定不能 筋力:測定不能 殺気:887
「殺気ってなによ! しかも魔力が測定不能になっちゃったし……!」
「あ、やっぱそうなんだ。だよなぁ、騎士として訓練を受けた俺が、脂汗をかくぐらい恐怖を感じるんだぜ? おかしいと思っ、いだぁ! 足ふむなよ!」
「余計なこと言わないの。ルシー様、ごめんね。もういいよ」
「うん……」
計測器の数値にショックを受けたまま、部屋のすみで眉毛を書く。念のためもういちど測定すると、以前と同じ数値だった。
属性:暴力 魔力値:1473 筋力:測定不能。
「眉毛ありとなしで数値が変わるなんて、完全にふざけてるわ……! こんなもん、破壊してくれる!」
「やっ、やめろォォ! 頼むから、その物騒な杖をしまってくれぇ!」
バット杖を取り出して床にコン!と打ち付けると、サイモンは変なタブレット板を大事そうに抱きしめた。ぐぬぬぅ。
「それで、ティナ嬢。僕たちを呼び出したのは、ルシーのことでなにか分かったからなんだろう?」
両思いだと判明してから、殿下は私のことをルシーと呼ぶようになった。でも他の女子のことは「嬢」を付けて呼ぶので、何だか気恥ずかしい。
「ええと……。この世界がゲームだという事は以前お話しましたけど、シナリオ通りだとすれば、これから地下神殿へ行くことになると思うんです」
「地下神殿なんてあんのか?」
「あるとも! ディオン学園は、龍脈の出口を封印するために建てられたと言われている。龍脈にはドラゴンが棲んでいるからな。しかし極秘事項なのにティナ嬢はよく知っているものだ。ゲームの世界というのは本当らしい! フハハ、楽しくなってきた!」
そりゃ知ってるだろうよ。ティナは前世でしつこく『ティナ恋』プレイしてたし。多分、二十回以上やってるんじゃないかな。
「千年前に倒されたドラゴンは封印されてるだけで、地下神殿の中でまだ生きてるはずなんです。でも封印の力って、千年で弱まるみたいで」
「だから皆で倒しに行くわけだね?」
「はい。でも、あの……ドラゴンが完全復活する条件というのがあって。それが、ルシー様が断罪されちゃうことなんです」
「えっ。私が死ぬと、ドラゴンが復活するの? ど、どういうこと?」
「多分だけどね、ルシー様はドラゴンの生まれ変わりとか、ドラゴンの因子を持ってるとか何かあるんだと思う」
「ちょっと待て! ドラゴンの因子については心当たりがあるぞ!」
突然サイモンがでかい声で叫び、研究室の本棚から分厚い本を出してきた。色あせて表紙がボロボロになった本で、かなり古そうだ。めくるたびに埃が舞うから鼻がむずむずしてくる。
「ほら、ここだ。およそ千年前、ドラゴン退治のために国中から猛者が集まったと書いてある。なかでもマイヤーコフ家の若者が活躍し、ドラゴンが倒れたときには頭からつま先までドラゴンの返り血で真っ赤だったと」
「ま、マイヤーコフ家って……。うちの家じゃないの……」
「ドラゴンの血を大量に浴びたことで、体に龍の因子が入ってしまったんだろう。それが代々受け継がれ、ルシー嬢に色濃く遺伝が現れた。つまりドラゴンはルシー嬢の体を取り込むことで活性化し、完全復活するわけだな! これはおもしろ――あだっ!」
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