46 / 51
46 恋か使命か
しおりを挟む
「封印されてるドラゴンは暗黒龍って呼ばれてて、真っ黒な鱗と赤い目を持ってるの。しかも、無属性のブレス攻撃をしてくるし……なんか……」
ティナはそこまで言うと口をつぐみ、ちらりと私を見た。いや、ティナだけじゃなくて他の三人も私を見てる。分かってるよ。私がドラゴンに似てるって言いたいんでしょ。
はぁ、まさかコワモテと魔力の属性(暴力)がドラゴン由来だったとは……。確かにドラゴンの顔って眉毛もないし、コワモテの部類に入るだろうけどさぁ。
「落とし穴についてはどうなるか分からないけど、ドラゴンの封印が弱まるにつれて、小さな地震が起きたりすると思います」
「地震が起きたら、先生がたは地下が怪しいと調べたりするだろうな」
「んで、ドラゴンの封印が解けかけてる事に気づくと。ふうん、分かりやすいじゃん」
「ちょっと待て。地下神殿に行くメンバーは誰なんだ? まさか、私まで行く事になるんじゃあるまいな!?」
タブレット板を大事そうに抱きしめていたサイモンが青い顔で叫ぶと、ティナは事もなげにうん、と頷く。
「行きますよ。だってこの学園でいちばん強いの、わたし達ですもん。先生たちは魔力が弱くて戦えないし」
やはり主要キャラのステータスは特別仕様になっているようだ。他の生徒の魔力値を測ったら、かなり低めの数値が出るのかもしれない。
青ざめるサイモンの肩をカイラーがぽんとたたいた。
「という事だから、諦めろサイモン。おまえにぴったりの鎧を開発すりゃいいじゃん」
「鎧……そうだな! 神殿に行くまでに、攻撃を吸収する鎧を開発する!」
サイモンの研究が始まってしまったので、邪魔にならないように部屋を出た。
殿下が不安げな顔で私を見つめてくる。
「ルシーは地下神殿に近づかない方がいい。ドラゴンは恐らく、きみを狙ってくるはずだ」
「えっ」
「そうだな、狙ってくるだろーなぁ。俺たちで倒してくるから、地上で待ってたほうがいいんじゃねえ?」
「すぐに戻ってくるからね。ルシー様は上で待ってて」
「うん……」
確かに、私がいたらむしろ邪魔なのかもしれない。ドラゴンが私を取り込むことによって完全復活するなら、私は大人しく待ってたほうがいいんだろうな……。
殿下たちとは校舎で別れ、私とティナは女子寮へ向かった。もう時刻は夕方になっており、空は茜色に染まっている。ティナがおもむろに口を開いた。
「このゲームのサブタイトル、覚えてる?」
「恋か使命かなんて、わたしには選べない……ってやつでしょ。何か気になるの?」
道を歩きながら、ティナが何か考え込んでいる。昨日からこんな調子だ。
「ティナ恋は、恋愛の達成度と使命の達成度が数値で見えるようになってるの。ゲームが終了した時点でふたつの数値が出るんだけど、何度やっても使命の達成度が低かったんだよね。ずっと何でかなぁって思ってた」
「へえ、使命の達成度なんてあるんだ」
「うん。今だから分かるけど、多分ヒロインはルシーを助けるべきだったんだと思う。仲良くなって、一緒にドラゴンの問題を解決すればよかったんだわ」
「でもそれだと、恋のほうが進まないんじゃないの? ああ、だから恋か使命かなんて選べないってサブタイトルなわけね」
「そうなんだよね~……。ルシーと仲良くなるって事は、攻略対象たちをほったらかす事になるし。でも今のわたし達、仲良くなってしかも恋もうまくいってるよね。ゲームと現実の世界って別物なんだね……」
「そうだねぇ……」
ゲームでは嫌われていたルシーフェルも、現実となったこの世界では皆に優しくしてもらっている。もちろん私が変わったというのもあるだろうけど、顔だけで嫌われたりはしていない。
「わたし、ドラゴンを倒してくるよ。そして救国の乙女になって…………こっ、公爵家のお嫁さんになれるように、頑張る!」
「ふふっ。うん、頑張ろうね」
ティナは本気でカイラーのことが好きなのだ。男爵家の令嬢のままではカイラーと結ばれるのは難しいけど、救国の乙女ともなれば話は変わってくる。ゲームでもその方法で殿下のお妃さまになったんだろうな。
『ティナ恋』はロクでもないゲームかと思ってたけど、今となっては楽しい思い出のほうが多い。ゲームのシナリオが終わる瞬間まで気を抜けないけど、皆が幸せになれるようにがんばろう。
ティナはそこまで言うと口をつぐみ、ちらりと私を見た。いや、ティナだけじゃなくて他の三人も私を見てる。分かってるよ。私がドラゴンに似てるって言いたいんでしょ。
はぁ、まさかコワモテと魔力の属性(暴力)がドラゴン由来だったとは……。確かにドラゴンの顔って眉毛もないし、コワモテの部類に入るだろうけどさぁ。
「落とし穴についてはどうなるか分からないけど、ドラゴンの封印が弱まるにつれて、小さな地震が起きたりすると思います」
「地震が起きたら、先生がたは地下が怪しいと調べたりするだろうな」
「んで、ドラゴンの封印が解けかけてる事に気づくと。ふうん、分かりやすいじゃん」
「ちょっと待て。地下神殿に行くメンバーは誰なんだ? まさか、私まで行く事になるんじゃあるまいな!?」
タブレット板を大事そうに抱きしめていたサイモンが青い顔で叫ぶと、ティナは事もなげにうん、と頷く。
「行きますよ。だってこの学園でいちばん強いの、わたし達ですもん。先生たちは魔力が弱くて戦えないし」
やはり主要キャラのステータスは特別仕様になっているようだ。他の生徒の魔力値を測ったら、かなり低めの数値が出るのかもしれない。
青ざめるサイモンの肩をカイラーがぽんとたたいた。
「という事だから、諦めろサイモン。おまえにぴったりの鎧を開発すりゃいいじゃん」
「鎧……そうだな! 神殿に行くまでに、攻撃を吸収する鎧を開発する!」
サイモンの研究が始まってしまったので、邪魔にならないように部屋を出た。
殿下が不安げな顔で私を見つめてくる。
「ルシーは地下神殿に近づかない方がいい。ドラゴンは恐らく、きみを狙ってくるはずだ」
「えっ」
「そうだな、狙ってくるだろーなぁ。俺たちで倒してくるから、地上で待ってたほうがいいんじゃねえ?」
「すぐに戻ってくるからね。ルシー様は上で待ってて」
「うん……」
確かに、私がいたらむしろ邪魔なのかもしれない。ドラゴンが私を取り込むことによって完全復活するなら、私は大人しく待ってたほうがいいんだろうな……。
殿下たちとは校舎で別れ、私とティナは女子寮へ向かった。もう時刻は夕方になっており、空は茜色に染まっている。ティナがおもむろに口を開いた。
「このゲームのサブタイトル、覚えてる?」
「恋か使命かなんて、わたしには選べない……ってやつでしょ。何か気になるの?」
道を歩きながら、ティナが何か考え込んでいる。昨日からこんな調子だ。
「ティナ恋は、恋愛の達成度と使命の達成度が数値で見えるようになってるの。ゲームが終了した時点でふたつの数値が出るんだけど、何度やっても使命の達成度が低かったんだよね。ずっと何でかなぁって思ってた」
「へえ、使命の達成度なんてあるんだ」
「うん。今だから分かるけど、多分ヒロインはルシーを助けるべきだったんだと思う。仲良くなって、一緒にドラゴンの問題を解決すればよかったんだわ」
「でもそれだと、恋のほうが進まないんじゃないの? ああ、だから恋か使命かなんて選べないってサブタイトルなわけね」
「そうなんだよね~……。ルシーと仲良くなるって事は、攻略対象たちをほったらかす事になるし。でも今のわたし達、仲良くなってしかも恋もうまくいってるよね。ゲームと現実の世界って別物なんだね……」
「そうだねぇ……」
ゲームでは嫌われていたルシーフェルも、現実となったこの世界では皆に優しくしてもらっている。もちろん私が変わったというのもあるだろうけど、顔だけで嫌われたりはしていない。
「わたし、ドラゴンを倒してくるよ。そして救国の乙女になって…………こっ、公爵家のお嫁さんになれるように、頑張る!」
「ふふっ。うん、頑張ろうね」
ティナは本気でカイラーのことが好きなのだ。男爵家の令嬢のままではカイラーと結ばれるのは難しいけど、救国の乙女ともなれば話は変わってくる。ゲームでもその方法で殿下のお妃さまになったんだろうな。
『ティナ恋』はロクでもないゲームかと思ってたけど、今となっては楽しい思い出のほうが多い。ゲームのシナリオが終わる瞬間まで気を抜けないけど、皆が幸せになれるようにがんばろう。
9
あなたにおすすめの小説
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる