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「私、ドラゴンと話をしてみる。でも吸収されそうになったら、みんなが止めてね」
「わ、分かった! 任せといて」
「気をつけろよ」
「私は全力で逃げる!」
「僕も一緒に行くよ。きみ一人を危険な目に会わせられない」
殿下は私の手をきゅっと握った。私はこくりと頷き、二人でゆっくりとドラゴンへ歩いていく。私たちが近づいてもやはりドラゴンは大人しく、真っ赤な目でじっと私を見ていた。
赤い瞳を見つめ返すと、頭の中にドラゴンの過去が流れ込んでくる。龍族のなかで一匹だけ黒い体と赤い目を持ったせいで迫害され、一人ぼっちになった子供の龍。どこにも居場所がなく、龍脈から出たところで人間に退治され……そして、神殿に封印されたのだ。
悲しくて涙がぼろぼろ溢れた。この子は私と同じだ。見た目がみんなと違うという理由で、一人ぼっちになってしまった可哀相な子なんだ。
「ルシー? どうして泣いてるんだ?」
「この子の過去が見えたんです。ドラゴンって普通は緑色の体なのに、ひとりだけ黒い体だからっていじめられて……それで龍脈から出ちゃったの。私、この子を助けてあげたい……」
私は手を伸ばし、黒い龍の体にそっと触れた。触れた瞬間はぶるっと震えたたものの、赤い瞳はルビーのように澄み渡っていてとても綺麗だ。
――私と一緒においで。これからは私がずっと、あなたのそばにいてあげる。
心で念じると、ドラゴンは「ギャオウ」と小さく鳴いた。黒い鱗から光があふれ、ドラゴンの体から出た光の粒子が私に吸収されていく。
「ルシー……!!」
「ルシー! 大丈夫なの!?」
殿下とティナの声が聞こえる。大丈夫だよ。私の心はちゃんとここにあるから。
ドラゴンの光が入るたびに、体がぽかぽかとして温かい。足りないものがやっと見つかったような感覚で、なんとも不思議な気分だ。
ドラゴンが丸ごと私に吸収されてからそっと目を開けると、心配そうな三人の顔があった。鎧人はなにを考えてるか分からない。
「ふふ。大丈夫、ちゃんと私のままだよ。ほら、体だって人間のままでしょ?」
「もっ、もう、心配させて! でも良かったぁ……。やっとこのゲームをコンプリートできたわ! やったぞー、完璧にクリアしたぞー!!」
「よく分かんねーけど、良かったなぁティナ! わははっ」
カイラーがティナの体を持ち上げ、二人はくるくると回りだした。真夏の浜辺でたわむれる恋人たちのようだ。さすがリア充。
「良かった……。安心したよ」
殿下がほっとしたようにつぶやき、私に向かって両手を広げている。多分、胸に飛び込んでこいってことだろう。私は空気を読み、彼の胸に抱きついた。
好きな人に抱きしめてもらうのって、最高に幸せだ。
「不思議なことだが、恐らくドラゴンの魔力とルシー嬢の魔力が相殺されたんだろう。それでルシー嬢の魔力は恐ろしいほど多かったのだな! やはりルシー嬢は素晴らしい実験ざいりょ……ぐえっ」
殿下が振り上げた杖がサイモンの兜にあたり、ぐわわ~んと変な音が響いた。こいつは本当に天才なのかと疑問を感じる。あんまりデリカシーがないと、クラリッサにも愛想つかされるかもよ。
私たちは皆で講堂へ戻り、待っていた先生たちに全てを報告した。私がドラゴンを吸収したと聞いて場は騒然となったが、サイモンのタブレット板で魔力値を測ると、なんと数値は600まで減っている。
属性まで土に変わり、ちょっと魔力が多い普通の少女になってしまった。怪力がなくなったのはちょっと残念な気もする。
「わ、分かった! 任せといて」
「気をつけろよ」
「私は全力で逃げる!」
「僕も一緒に行くよ。きみ一人を危険な目に会わせられない」
殿下は私の手をきゅっと握った。私はこくりと頷き、二人でゆっくりとドラゴンへ歩いていく。私たちが近づいてもやはりドラゴンは大人しく、真っ赤な目でじっと私を見ていた。
赤い瞳を見つめ返すと、頭の中にドラゴンの過去が流れ込んでくる。龍族のなかで一匹だけ黒い体と赤い目を持ったせいで迫害され、一人ぼっちになった子供の龍。どこにも居場所がなく、龍脈から出たところで人間に退治され……そして、神殿に封印されたのだ。
悲しくて涙がぼろぼろ溢れた。この子は私と同じだ。見た目がみんなと違うという理由で、一人ぼっちになってしまった可哀相な子なんだ。
「ルシー? どうして泣いてるんだ?」
「この子の過去が見えたんです。ドラゴンって普通は緑色の体なのに、ひとりだけ黒い体だからっていじめられて……それで龍脈から出ちゃったの。私、この子を助けてあげたい……」
私は手を伸ばし、黒い龍の体にそっと触れた。触れた瞬間はぶるっと震えたたものの、赤い瞳はルビーのように澄み渡っていてとても綺麗だ。
――私と一緒においで。これからは私がずっと、あなたのそばにいてあげる。
心で念じると、ドラゴンは「ギャオウ」と小さく鳴いた。黒い鱗から光があふれ、ドラゴンの体から出た光の粒子が私に吸収されていく。
「ルシー……!!」
「ルシー! 大丈夫なの!?」
殿下とティナの声が聞こえる。大丈夫だよ。私の心はちゃんとここにあるから。
ドラゴンの光が入るたびに、体がぽかぽかとして温かい。足りないものがやっと見つかったような感覚で、なんとも不思議な気分だ。
ドラゴンが丸ごと私に吸収されてからそっと目を開けると、心配そうな三人の顔があった。鎧人はなにを考えてるか分からない。
「ふふ。大丈夫、ちゃんと私のままだよ。ほら、体だって人間のままでしょ?」
「もっ、もう、心配させて! でも良かったぁ……。やっとこのゲームをコンプリートできたわ! やったぞー、完璧にクリアしたぞー!!」
「よく分かんねーけど、良かったなぁティナ! わははっ」
カイラーがティナの体を持ち上げ、二人はくるくると回りだした。真夏の浜辺でたわむれる恋人たちのようだ。さすがリア充。
「良かった……。安心したよ」
殿下がほっとしたようにつぶやき、私に向かって両手を広げている。多分、胸に飛び込んでこいってことだろう。私は空気を読み、彼の胸に抱きついた。
好きな人に抱きしめてもらうのって、最高に幸せだ。
「不思議なことだが、恐らくドラゴンの魔力とルシー嬢の魔力が相殺されたんだろう。それでルシー嬢の魔力は恐ろしいほど多かったのだな! やはりルシー嬢は素晴らしい実験ざいりょ……ぐえっ」
殿下が振り上げた杖がサイモンの兜にあたり、ぐわわ~んと変な音が響いた。こいつは本当に天才なのかと疑問を感じる。あんまりデリカシーがないと、クラリッサにも愛想つかされるかもよ。
私たちは皆で講堂へ戻り、待っていた先生たちに全てを報告した。私がドラゴンを吸収したと聞いて場は騒然となったが、サイモンのタブレット板で魔力値を測ると、なんと数値は600まで減っている。
属性まで土に変わり、ちょっと魔力が多い普通の少女になってしまった。怪力がなくなったのはちょっと残念な気もする。
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