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50 婚約
学園の危機――いや、国の危機を救ったということで私たちは英雄になり、私とティナは救国の乙女と呼ばれるようになった。
ドラゴン騒動が落ち着いた一週間後には王宮に来るように言われ、今はドレスを着て控え室で待っている。私の隣には、清楚なドレスを着たティナ。ガチガチに緊張している。
「お待たせしました。ルシーフェル嬢、ティナ嬢、どうぞ。陛下がお呼びです」
「はい」
「ひゃ、ひゃいっ!」
私たちは手を繋いで控え室を出て、陛下がおられる謁見の間へ向かった。廊下を歩いているあいだに緊張がとけたのか、ティナの手からこわ張りが抜けてくる。大丈夫だよ、謁見の間にはカイラーもいるはずだから。
巨大な扉が開き、二人でしずしずと絨毯の上を歩いた。足を進めながら周囲を見渡すと、お父さまとお母さままで来ている。二人は私と目が合うとぱちっとウインクしてくれた。
侯爵家だけでなく、二大公爵家の人々もいて、カイラーとサイモンまで神妙な顔で立っている。真面目な顔も出来たのかと意外な気分だ。
私とティナは大きな椅子に座る陛下の前で歩みをとめ、そっと顔を下げた。陛下の隣に殿下も立っておられるが、二人はあまり似ていない。
陛下は絵本に出てくるような、いかにも王様的なお姿をしている。ぷくっと出たお腹に、くりっとカールした鼻の下のおヒゲ。殿下は王妃さまに似たんだな……。
「顔を上げてごらん。ルシーフェル嬢、ティナ嬢――二人とも、国の危機を救ってくれてありがとう。二人に褒美を与えたいのだが、なにか希望はあるかな?」
陛下が優しげな声で仰ったので、私はティナに向かって手で合図を送った。ティナが先に言っていいよ、という意味で。
「で、ではっ……わたしは、カイラー様との婚約を希望いたしますっ……!」
ティナが緊張した声で言うと、陛下は顔を動かしてカイラーの隣に立つ人物を見た。グレイ公爵だ。カイラーとそっくりな顔のオジ様で、わたしのお父さまに負けず劣らずといった体つき。毎日筋トレしてそう。
「どうかな、グレイ公爵?」
「うちの息子も世話になったようですからな。認めましょう」
公爵が答えると、カイラーが口の動きで「よっし!」とつぶやいてガッツポーズをした。ティナはお礼を言いながら声をつまらせ、しきりにハンカチで目元を拭いている。良かったね。
「ルシーフェル嬢はいかがかな? 何でも言ってごらん」
陛下の声で顔を上げると、殿下の青い瞳とばっちり目が合った。なにかをしきりに訴えている。分かっておりますとも……。私は覚悟を決め、厳かに言葉を口にする。
「では、私も婚約を――殿下との婚約を、希望いたします。お返事が遅くなり、申し訳ありません」
「そうか、受けてくれるか! 良かったではないか、ウィルよ!」
「はい……!」
殿下は段上から降りてきて、私の手を取った。うやうやしく口付け、私をぎゅっと抱きしめると周囲からわぁっと歓声が上がる。そして、空気がふるえるような拍手の音。いつの間にかカイラーも横に来て、ティナと抱き合っていた。
こうしてドラゴン騒動は幕を閉じ、ティナとカイラー、そして私と殿下は正式な婚約者となった。季節は夏にかわり、抜けるような青空がきれいな日だった。
ドラゴン騒動が落ち着いた一週間後には王宮に来るように言われ、今はドレスを着て控え室で待っている。私の隣には、清楚なドレスを着たティナ。ガチガチに緊張している。
「お待たせしました。ルシーフェル嬢、ティナ嬢、どうぞ。陛下がお呼びです」
「はい」
「ひゃ、ひゃいっ!」
私たちは手を繋いで控え室を出て、陛下がおられる謁見の間へ向かった。廊下を歩いているあいだに緊張がとけたのか、ティナの手からこわ張りが抜けてくる。大丈夫だよ、謁見の間にはカイラーもいるはずだから。
巨大な扉が開き、二人でしずしずと絨毯の上を歩いた。足を進めながら周囲を見渡すと、お父さまとお母さままで来ている。二人は私と目が合うとぱちっとウインクしてくれた。
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「顔を上げてごらん。ルシーフェル嬢、ティナ嬢――二人とも、国の危機を救ってくれてありがとう。二人に褒美を与えたいのだが、なにか希望はあるかな?」
陛下が優しげな声で仰ったので、私はティナに向かって手で合図を送った。ティナが先に言っていいよ、という意味で。
「で、ではっ……わたしは、カイラー様との婚約を希望いたしますっ……!」
ティナが緊張した声で言うと、陛下は顔を動かしてカイラーの隣に立つ人物を見た。グレイ公爵だ。カイラーとそっくりな顔のオジ様で、わたしのお父さまに負けず劣らずといった体つき。毎日筋トレしてそう。
「どうかな、グレイ公爵?」
「うちの息子も世話になったようですからな。認めましょう」
公爵が答えると、カイラーが口の動きで「よっし!」とつぶやいてガッツポーズをした。ティナはお礼を言いながら声をつまらせ、しきりにハンカチで目元を拭いている。良かったね。
「ルシーフェル嬢はいかがかな? 何でも言ってごらん」
陛下の声で顔を上げると、殿下の青い瞳とばっちり目が合った。なにかをしきりに訴えている。分かっておりますとも……。私は覚悟を決め、厳かに言葉を口にする。
「では、私も婚約を――殿下との婚約を、希望いたします。お返事が遅くなり、申し訳ありません」
「そうか、受けてくれるか! 良かったではないか、ウィルよ!」
「はい……!」
殿下は段上から降りてきて、私の手を取った。うやうやしく口付け、私をぎゅっと抱きしめると周囲からわぁっと歓声が上がる。そして、空気がふるえるような拍手の音。いつの間にかカイラーも横に来て、ティナと抱き合っていた。
こうしてドラゴン騒動は幕を閉じ、ティナとカイラー、そして私と殿下は正式な婚約者となった。季節は夏にかわり、抜けるような青空がきれいな日だった。
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