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第一部 そのモフモフは無自覚に世界を救う?
35 奇跡起こしてみました
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セル様の声を聞きつけたのか、オーガが足を止めて周囲を見回している。私がフリッパーでセル様の口を覆った瞬間、親ビンがまた「ウォン」と吠えた。
「んぐ……! っペペ、どうしてだよ。あのままじゃガイが……!」
「ペエ! ペェエ!」
(我慢して、セル様。親ビンだって命がけであなたを守りたいんだよ……!)
オーガは親ビンを追いかけて行き、私たちとは距離が開いた。このまま逃げている間にハル様が私達を見つけてくれたら、こっちの勝利だ。クズ王子の罪の告白は、ハル様の耳にしっかり届いたことだろう。
このまま逃げ切れば、私たちの勝ち――安心しかけた瞬間、オーガが再び空気を震わせながら叫んだ。
「グ、グォ……グルゥァアアアアッ!!」
「ガイ……!」
『親ビン、逃げてぇ! もっと距離をあけて!』
追いかけても獲物が捕まらないことで焦れたのか、オーガが筋肉だらけの巨大な腕を振り回している。親ビンは軽快な動きで腕をよけたけど、暴れだしたオーガの足が親ビンの体にもろに当たった。
「ギャウゥンッ!」
「ガイ! いやだっ、死なないで!」
オーガの足に吹っ飛ばされた親ビンは塀にぶつかり、地面に倒れ伏している。あのままじゃ殺されてしまう。セル様がオーガの足元に駆け寄り、大声で叫んだ。
「ほらっ、僕はここだぞ! 追いかけて来い!」
そして走り出すと同時に、リボンをほどいて私を親ビンの方へぽいっと投げる。私は地面によたよたと着地した。
「投げてごめんね! ペペはガイのことをお願い!」
『ちょっ……セル様ぁ! どうしよ、親ビン。親ビン……?』
親ビンはひゅー、ひゅー、と頼りない呼吸で横たわっていた。オーガに蹴られたときに骨が折れたのか、後ろ脚が変な方向に曲がっている。
『オレのこたァ、いいから……。セル、様……まもれ……』
『お、親ビ…………ふんがぁぁああ! オーガの野郎、私はこっちだぞ! ほら、こっちに来い! 来いって言ってんでしょうがァ!』
セル様の声の方がよく聞こえるのか、オーガは私に見向きもしない。だんだん腹が立ってきた。
『こらっ、オーガ! こっちに来なさ――ぎゃあっ、セル様!?』
セル様が何かにつまづいて転ぶのが見えた。でもオーガはよく見えていないらしく、スピードを緩めることなくセル様めがけて走って行く。もう少しでセル様を踏んでしまう。
『けっ、結界だ! ふんがーっ! 駄目だ、なんも出て来ない! あのままじゃセル様が踏まれちゃう。誰か! 誰か私に力をぉぉぉっ!』
叫んだ瞬間、不思議な声が頭に響いた。小さな子供の声だ。
――だ、れ……?
『はいっ!? だれって言うあんたこそ誰よ!?』
――だれか……。はやく、むかえにきて。ここだよ……。
『いや、ここって言われてもね!? こっちはそれ所じゃないのよ!!』
叫んでいるうちに、体が熱くなってきた。体の奥からマグマが湧き出してくるような熱さだ。
熱い。燃えてるみたいに熱い……!
「ペェ……ペェグァァァアア!!」
熱を解放するように叫ぶと、風船が膨らむみたいに一気に私の体が巨大化した。いや、巨大化しただけじゃない。
私はなぜか空を飛んでいて、上空から大地を見下ろしている。羽ばたきするたびに、白い羽が空中をひらひらと舞っている。
そして――
「クァァアアアアッ!」
もう一度叫ぶと両翼がパァッと輝きだし、地上に向かって雨のように無数の光線が降り注いだ。光を浴びたオーガは溶けるように消えてしまい、セル様が信じられないと言いたげな顔で私を見上げている。私も信じられない気分だけど。
『ど、どうなってんの……? あっ、ワカメが逃げた!』
巨大化した私を見たワカメは魔法陣を展開させ、どこかに転移してしまった。ずる賢いワカメめ!
ぎこちない動きでなんとか地上に降り立ち、セル様にドスドスと走りよる。でもデカくなったせいで踏んでしまいそうだ。今の私はプロクスぐらい大きいかもしれない。
「ペペ……! ペペだよね!?」
「クァッ!」
「な、なんと……本当に聖獣だったとは! キーファ、あの鳥を捕らえろ! キーファ!?」
キーファが逃げたと気づかないエリック殿下が叫んだとき、凄まじい速度で空から何かが落ちてきた。ミサイルのようなそれはバルコニーを直撃し、容赦なく破壊して土台ごとバルコニーを瓦礫に変える。
一階に落ちたエリック殿下は頭を打ったのか、気絶したみたいだ。本当にバカ。
「セルディス、無事か!?」
「あっ、兄上ぇっ! 兄上、兄上ーっ!」
空から落ちてきたのはプロクスに乗ったハル様だった。あの速さで落ちて無傷とか、どういう体をしてるんだろう……。結界で守ったのかな。お兄ちゃんに会えたセル様が、泣きながらハル様に抱きついている。
と、そこへ――
「ウォン! ウォォン!」
不思議なことに、親ビンが軽い足取りで嬉しそうに走ってきたのだ。幻かと思って二度見したけど、確かに死にかけていたはずの親ビンである。一体どういうこと?
ハル様が親ビンの頭を撫でながら私を見上げて言った。
「ガイ、ペペ。よくセルディスを守ってくれた」
「ウォン!」
「クァ」
(はぁ、私も小さいままなら抱っこしてもらえたのに。いつまでデカいままなのかなぁ……。しかもちょっと眠くなってきちゃったし)
「んぐ……! っペペ、どうしてだよ。あのままじゃガイが……!」
「ペエ! ペェエ!」
(我慢して、セル様。親ビンだって命がけであなたを守りたいんだよ……!)
オーガは親ビンを追いかけて行き、私たちとは距離が開いた。このまま逃げている間にハル様が私達を見つけてくれたら、こっちの勝利だ。クズ王子の罪の告白は、ハル様の耳にしっかり届いたことだろう。
このまま逃げ切れば、私たちの勝ち――安心しかけた瞬間、オーガが再び空気を震わせながら叫んだ。
「グ、グォ……グルゥァアアアアッ!!」
「ガイ……!」
『親ビン、逃げてぇ! もっと距離をあけて!』
追いかけても獲物が捕まらないことで焦れたのか、オーガが筋肉だらけの巨大な腕を振り回している。親ビンは軽快な動きで腕をよけたけど、暴れだしたオーガの足が親ビンの体にもろに当たった。
「ギャウゥンッ!」
「ガイ! いやだっ、死なないで!」
オーガの足に吹っ飛ばされた親ビンは塀にぶつかり、地面に倒れ伏している。あのままじゃ殺されてしまう。セル様がオーガの足元に駆け寄り、大声で叫んだ。
「ほらっ、僕はここだぞ! 追いかけて来い!」
そして走り出すと同時に、リボンをほどいて私を親ビンの方へぽいっと投げる。私は地面によたよたと着地した。
「投げてごめんね! ペペはガイのことをお願い!」
『ちょっ……セル様ぁ! どうしよ、親ビン。親ビン……?』
親ビンはひゅー、ひゅー、と頼りない呼吸で横たわっていた。オーガに蹴られたときに骨が折れたのか、後ろ脚が変な方向に曲がっている。
『オレのこたァ、いいから……。セル、様……まもれ……』
『お、親ビ…………ふんがぁぁああ! オーガの野郎、私はこっちだぞ! ほら、こっちに来い! 来いって言ってんでしょうがァ!』
セル様の声の方がよく聞こえるのか、オーガは私に見向きもしない。だんだん腹が立ってきた。
『こらっ、オーガ! こっちに来なさ――ぎゃあっ、セル様!?』
セル様が何かにつまづいて転ぶのが見えた。でもオーガはよく見えていないらしく、スピードを緩めることなくセル様めがけて走って行く。もう少しでセル様を踏んでしまう。
『けっ、結界だ! ふんがーっ! 駄目だ、なんも出て来ない! あのままじゃセル様が踏まれちゃう。誰か! 誰か私に力をぉぉぉっ!』
叫んだ瞬間、不思議な声が頭に響いた。小さな子供の声だ。
――だ、れ……?
『はいっ!? だれって言うあんたこそ誰よ!?』
――だれか……。はやく、むかえにきて。ここだよ……。
『いや、ここって言われてもね!? こっちはそれ所じゃないのよ!!』
叫んでいるうちに、体が熱くなってきた。体の奥からマグマが湧き出してくるような熱さだ。
熱い。燃えてるみたいに熱い……!
「ペェ……ペェグァァァアア!!」
熱を解放するように叫ぶと、風船が膨らむみたいに一気に私の体が巨大化した。いや、巨大化しただけじゃない。
私はなぜか空を飛んでいて、上空から大地を見下ろしている。羽ばたきするたびに、白い羽が空中をひらひらと舞っている。
そして――
「クァァアアアアッ!」
もう一度叫ぶと両翼がパァッと輝きだし、地上に向かって雨のように無数の光線が降り注いだ。光を浴びたオーガは溶けるように消えてしまい、セル様が信じられないと言いたげな顔で私を見上げている。私も信じられない気分だけど。
『ど、どうなってんの……? あっ、ワカメが逃げた!』
巨大化した私を見たワカメは魔法陣を展開させ、どこかに転移してしまった。ずる賢いワカメめ!
ぎこちない動きでなんとか地上に降り立ち、セル様にドスドスと走りよる。でもデカくなったせいで踏んでしまいそうだ。今の私はプロクスぐらい大きいかもしれない。
「ペペ……! ペペだよね!?」
「クァッ!」
「な、なんと……本当に聖獣だったとは! キーファ、あの鳥を捕らえろ! キーファ!?」
キーファが逃げたと気づかないエリック殿下が叫んだとき、凄まじい速度で空から何かが落ちてきた。ミサイルのようなそれはバルコニーを直撃し、容赦なく破壊して土台ごとバルコニーを瓦礫に変える。
一階に落ちたエリック殿下は頭を打ったのか、気絶したみたいだ。本当にバカ。
「セルディス、無事か!?」
「あっ、兄上ぇっ! 兄上、兄上ーっ!」
空から落ちてきたのはプロクスに乗ったハル様だった。あの速さで落ちて無傷とか、どういう体をしてるんだろう……。結界で守ったのかな。お兄ちゃんに会えたセル様が、泣きながらハル様に抱きついている。
と、そこへ――
「ウォン! ウォォン!」
不思議なことに、親ビンが軽い足取りで嬉しそうに走ってきたのだ。幻かと思って二度見したけど、確かに死にかけていたはずの親ビンである。一体どういうこと?
ハル様が親ビンの頭を撫でながら私を見上げて言った。
「ガイ、ペペ。よくセルディスを守ってくれた」
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