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第4部 越谷アパセティックタウン
第59話
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「……ぁぁ……ぐぁ……」
倒れたままあえぐハヤテに対し、緑色のヒーローは馬乗りになってきた。
ハヤテを跨ぎ、剣を逆手持ちし、ハヤテの首に狙いを定める。
慌ててワタルが背後から、緑色のヒーローの右腕を抱き抱えるように止めにかかった。
「ヒーローさん、やめ――うわぁっ!」
緑色のヒーローが腕を振り、ワタルを簡単に飛ばす。
ところが、緑のヒーローは手元が狂ったのか、握り慣れていない武器だったためか、その際に右手に持っていた剣がすっぽ抜けたようだ。ワタルと一緒に剣が飛んでいった。
「……!」
飛ばされてカプセルに叩きつけられたワタルは立ち上がると、その剣に気づき、飛びつくように抱え込んで確保した。
しかし、ハヤテから離れて剣を回収しようとしてきた緑色のヒーローの蹴りが、ワタルの腹部に決まる。
「ぐふっ」
緑色のヒーローの足がめり込んだワタルは、また飛ばされてカプセルのガラスを派手に割った。
「げふっ、ごほっ……ぅっ……」
ワタルの手には剣が確保されたままだったが、生身のまあ全身を強打し、立ち上がれない。
「わ、ワタル!」
電子警棒を拾ったハヤテが、ワタルをさらに追って剣を奪回しようという緑色のヒーローをとめるべく、慌てて向かう。
スタンガン機能をオフにした状態で、電子警棒の突きを入れる。
だが、緑色のヒーローはそれを素早い動きでかわしつつ、逆に膝をハヤテの腹部に深々と入れた。
「ぐうっ」
スーツに膝がめり込み、息が漏れる。
ハヤテは後方に吹っ飛ばされてしまう。
「ぐ……うはあっ……ぁあっ……」
またも仰向けで倒れ、電子警棒が手から放れてしまうハヤテ。
緑色のヒーローはワタルではなくハヤテを追いかけ、また馬乗りになった。
ハヤテの手から離れた、電子警棒を手に持ちつつ――。
「……」
緑色のヒーローが無言で電子警棒のスタンガンのスイッチを入れる。
「――!」
その意味を理解したハヤテが慌てて体に力を入れ、体をくねらせる。
が、まったくダメだった。緑色のヒーローは動かない。
電子警棒のスタンガンが、近づく。
「や、やめてくれっ……!」
ハヤテは必死に訴えるが、無情にも電子警棒の先は、ハヤテのスーツの胸部に差し込まれた。
「うあ゛ああああああああああッ――!」
ハヤテの声が響き渡った。
激しい電流を流されたスーツはところどころでショートし、火花を散らしていく。
さらにスタンガンの電流は続く。
「う゛うがあああ゛あ゛あああああッ――!」
スーツで吸収しきれない電流がハヤテの体を襲う。手足も、体幹も、激しく痙攣していた。
そして。
ハヤテの体を覆っていた黒色基調で赤色の交じる特殊戦闘ボディスーツが、ついに限界を迎えた。
「あ゛っ、ああッ! あッあ゛ッあ゛アァッ――――!!」
はげしいあえぎ声をあげる中、スーツがいたるところで小爆発を起こし、全体が光ったのちに消滅した。
電流がやむ。
緑色のヒーローは馬乗りのままで、ハヤテは上半身が黒のインナーシャツ、下半身は裸という姿に変わった。
「……ぁ……ぁ……」
手足はピクピクと痙攣し、目は見開かれ、口も開いたまま。うめき声だけが漏れていた。
緑色のヒーローが電子警棒を脇に置き、両手でハヤテの生身の首を掴み、とどめと言わんばかりに絞める。
「……ぅ……っ……!」
ハヤテの目がつぶられ、もがく……が、もはや首を絞めてくる手をなんとかする力はなかった。
「は、ハヤテっ」
倒れていたワタルの悲痛な呼びかけもむなしく、ただただハヤテは呼吸を止められ、窒息が近づいていく。
しかし、そのときだった。
「緑のヒーローさん! やめて!」
やや高くてかすれた、子供の声がした。ハヤテにはこの病院に入るまでに散々聞いた声だった。
その声で、緑色のヒーローの手の力が弱まった。
「そのお兄さんと戦わないで!」
追加されたその声で、緑色のヒーローの手がハヤテの首から手が離れる。
さらには、踏圧も弱まった。
そしてなんと、緑色のヒーローが両手で頭を押さえている。
「ハヤテ! このヒーローはまだ『治験中』だと思う! まだ洗脳は完璧じゃないんだ!」
そのワタルの声を聞くや否や、ハヤテは体を転がし、力の入っていない緑色のヒーローの足から逃れ、電子警棒を拾った。
半身のままスタンガンのスイッチをオンにし、緑色のヒーローの臀部に差し込んだ。
「う゛あ゛ああああああっ――!」
無言のままだった緑色のヒーローが、初めて声を出した。
緑色のスーツがショートしていく。
「わ、悪い……もうちょっと我慢……してくれ」
ハヤテはそう言いながら、なおもスタンガンを入れ続けた。
「ああ゛あああッあああ゛ああ゛ああッツッッァッ――――!!」
体を反らし、過電流でスーツを明滅させる緑色のヒーロー。全身から火花を散らす。
やがてスーツに限界が来た。
全体が光り、消滅する。
「……」
あらわになった緑色のヒーローの素の姿は、二十代と思われる、筋骨たくましい短髪の青年だった。
目をギュッとつぶったまま、下着姿でどさりと前方に倒れた。
「お、おい……しっかりしろ……」
「だ、大丈夫……ですか!」
ハヤテもワタルも床を這い、倒れたヒーローのもとへと行く。
だがボロボロの二人よりも、褐色少年のほうが早かったようだ。
「ねえ! 緑のヒーローさん! 大丈夫?」
少年が青年を仰向けに直し、少し肩をゆする。
すると、青年の目が開いた。
びっくりしたように、上半身を起こす。
「……あれ? ここはどこだ? 君たちは?」
どうやら、正気を取り戻したようだった。
倒れたままあえぐハヤテに対し、緑色のヒーローは馬乗りになってきた。
ハヤテを跨ぎ、剣を逆手持ちし、ハヤテの首に狙いを定める。
慌ててワタルが背後から、緑色のヒーローの右腕を抱き抱えるように止めにかかった。
「ヒーローさん、やめ――うわぁっ!」
緑色のヒーローが腕を振り、ワタルを簡単に飛ばす。
ところが、緑のヒーローは手元が狂ったのか、握り慣れていない武器だったためか、その際に右手に持っていた剣がすっぽ抜けたようだ。ワタルと一緒に剣が飛んでいった。
「……!」
飛ばされてカプセルに叩きつけられたワタルは立ち上がると、その剣に気づき、飛びつくように抱え込んで確保した。
しかし、ハヤテから離れて剣を回収しようとしてきた緑色のヒーローの蹴りが、ワタルの腹部に決まる。
「ぐふっ」
緑色のヒーローの足がめり込んだワタルは、また飛ばされてカプセルのガラスを派手に割った。
「げふっ、ごほっ……ぅっ……」
ワタルの手には剣が確保されたままだったが、生身のまあ全身を強打し、立ち上がれない。
「わ、ワタル!」
電子警棒を拾ったハヤテが、ワタルをさらに追って剣を奪回しようという緑色のヒーローをとめるべく、慌てて向かう。
スタンガン機能をオフにした状態で、電子警棒の突きを入れる。
だが、緑色のヒーローはそれを素早い動きでかわしつつ、逆に膝をハヤテの腹部に深々と入れた。
「ぐうっ」
スーツに膝がめり込み、息が漏れる。
ハヤテは後方に吹っ飛ばされてしまう。
「ぐ……うはあっ……ぁあっ……」
またも仰向けで倒れ、電子警棒が手から放れてしまうハヤテ。
緑色のヒーローはワタルではなくハヤテを追いかけ、また馬乗りになった。
ハヤテの手から離れた、電子警棒を手に持ちつつ――。
「……」
緑色のヒーローが無言で電子警棒のスタンガンのスイッチを入れる。
「――!」
その意味を理解したハヤテが慌てて体に力を入れ、体をくねらせる。
が、まったくダメだった。緑色のヒーローは動かない。
電子警棒のスタンガンが、近づく。
「や、やめてくれっ……!」
ハヤテは必死に訴えるが、無情にも電子警棒の先は、ハヤテのスーツの胸部に差し込まれた。
「うあ゛ああああああああああッ――!」
ハヤテの声が響き渡った。
激しい電流を流されたスーツはところどころでショートし、火花を散らしていく。
さらにスタンガンの電流は続く。
「う゛うがあああ゛あ゛あああああッ――!」
スーツで吸収しきれない電流がハヤテの体を襲う。手足も、体幹も、激しく痙攣していた。
そして。
ハヤテの体を覆っていた黒色基調で赤色の交じる特殊戦闘ボディスーツが、ついに限界を迎えた。
「あ゛っ、ああッ! あッあ゛ッあ゛アァッ――――!!」
はげしいあえぎ声をあげる中、スーツがいたるところで小爆発を起こし、全体が光ったのちに消滅した。
電流がやむ。
緑色のヒーローは馬乗りのままで、ハヤテは上半身が黒のインナーシャツ、下半身は裸という姿に変わった。
「……ぁ……ぁ……」
手足はピクピクと痙攣し、目は見開かれ、口も開いたまま。うめき声だけが漏れていた。
緑色のヒーローが電子警棒を脇に置き、両手でハヤテの生身の首を掴み、とどめと言わんばかりに絞める。
「……ぅ……っ……!」
ハヤテの目がつぶられ、もがく……が、もはや首を絞めてくる手をなんとかする力はなかった。
「は、ハヤテっ」
倒れていたワタルの悲痛な呼びかけもむなしく、ただただハヤテは呼吸を止められ、窒息が近づいていく。
しかし、そのときだった。
「緑のヒーローさん! やめて!」
やや高くてかすれた、子供の声がした。ハヤテにはこの病院に入るまでに散々聞いた声だった。
その声で、緑色のヒーローの手の力が弱まった。
「そのお兄さんと戦わないで!」
追加されたその声で、緑色のヒーローの手がハヤテの首から手が離れる。
さらには、踏圧も弱まった。
そしてなんと、緑色のヒーローが両手で頭を押さえている。
「ハヤテ! このヒーローはまだ『治験中』だと思う! まだ洗脳は完璧じゃないんだ!」
そのワタルの声を聞くや否や、ハヤテは体を転がし、力の入っていない緑色のヒーローの足から逃れ、電子警棒を拾った。
半身のままスタンガンのスイッチをオンにし、緑色のヒーローの臀部に差し込んだ。
「う゛あ゛ああああああっ――!」
無言のままだった緑色のヒーローが、初めて声を出した。
緑色のスーツがショートしていく。
「わ、悪い……もうちょっと我慢……してくれ」
ハヤテはそう言いながら、なおもスタンガンを入れ続けた。
「ああ゛あああッあああ゛ああ゛ああッツッッァッ――――!!」
体を反らし、過電流でスーツを明滅させる緑色のヒーロー。全身から火花を散らす。
やがてスーツに限界が来た。
全体が光り、消滅する。
「……」
あらわになった緑色のヒーローの素の姿は、二十代と思われる、筋骨たくましい短髪の青年だった。
目をギュッとつぶったまま、下着姿でどさりと前方に倒れた。
「お、おい……しっかりしろ……」
「だ、大丈夫……ですか!」
ハヤテもワタルも床を這い、倒れたヒーローのもとへと行く。
だがボロボロの二人よりも、褐色少年のほうが早かったようだ。
「ねえ! 緑のヒーローさん! 大丈夫?」
少年が青年を仰向けに直し、少し肩をゆする。
すると、青年の目が開いた。
びっくりしたように、上半身を起こす。
「……あれ? ここはどこだ? 君たちは?」
どうやら、正気を取り戻したようだった。
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