褐色ショタを犯しても宇宙人なら合法だよな?

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落

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第6話

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「タケトさん。郵便物」

 会社から帰って落ち着いてからダイキに渡されたのは、会社の健康診断をやった機関からの封筒だった。
 健診結果の通知だろう。

「はい、ハサミ」

 彼が一緒にハサミをよこしてきた。
 この有能さよ……と言いたいところではあるが、実は昨年、健康診断の結果は開封すらしていなかったりする。
 もちろん理由は面倒だから。

 しかし、彼がせっかく持ってきたハサミをそのまま要らんと返却するわけにもいかない。
 キッチンテーブルに座り、封筒の端を切り、中身を取り出す。

「……ん?」

 結果を見ると『要精密検査』と書かれていた。
 そして『精密検査実施医療機関 殿』という宛名になっている紹介状も同封されていた。
 見慣れてないワードが並ぶ各検査項目の、結果を見ていく。

 ……。

 異常値になっているのは『HbA1c』。9.7という数値が書かれている。
 俺はあまり詳しくない……というよりも、かなり詳しくない。糖尿病だと高くなるという程度の認識だ。

 とりあえず、見てしまったからには仕方ない。
 それに、二十五歳で糖尿というのはいかがなものかというのもある。
 俺は病院に行くことにした。

 今の業務量を考えると平日を一日潰すのは痛いが、休日出勤や徹夜でカバーすればいい。



 ◇



「……もう一度、お願いします」

 大学病院の先生に、俺は聞き返した。
 検査は血を採るくらいですぐ終わるのだろう……と思っていたら、時間をかけて大がかりな検査をやることになり、少し嫌な予感はしていた。
 だがそれでも聞き返さずにはいられない病名だった。

 俺の隣では、一緒についてきたダイキがこちらを見ている。が、目を合わせてその表情を確認する気持ちの余裕はなかった。

「はい。すい臓がん、ステージⅣbです」
「俺、今までどこも悪くないと思っていたんですけど……」
「すい臓も、転移が見られたリンパ節や肝臓も、自覚症状が出やすいところではありません。黄疸が出ればわかりやすいですが、見たところ出ていませんしね。腰・背中の痛みや、体重の減少などの症状が出る場合もありますが、もし出ていたとしても、それらをすい臓がんによるものだと見破るのは、ご自身では難しいと思います」
「……」

 そこから先の説明の声は、急速に遠くなっていくように感じた。
 ただ、離れた臓器へ転移している場合、がん細胞が血液やリンパ液の流れに乗って全身に回っていると考えられるため、手術は不可能。化学療法や放射線による治療となるということ。そのようなことを言っていた。

 そして最後に言われた一言は、ふたたび近く、くっきりとした声で聞こえた。

「余命は三か月程度とみておいて下さい」



 病院から出ると、すぐにダイキが聞いてきた。

「タケトさん、スイゾウガンってそんなに重たい病気なの?」
「まあ、重いな」

 俺にとっては初めて聞く病名ではない。
 父親と祖父がすい臓がんで亡くなっているためだ。
 がんは遺伝的な要因もあり、家族にがんをやった人がいるのであれば要注意――そんなことを誰かが言っていた気がする。
 それでも、自分は大丈夫だろうと楽観的に考えていた。
 いや、考えることすらもなかった、と言うべきか。それくらい健康には無頓着だった。

「余命ってことは……タケトさんが死ぬってこと?」
「そうだ」
「オレ、やだよ」

 外を歩いているにもかかわらず、彼が腕を絡めてくる。

「嫌だといっても、医者の言うことが事実なんだろ」
「……オレ、こんなことになると思ってなかった」
「それは俺もだ」

 正直まだ、実感はない。
 診断が出た以上、俺の実感など何の関係もなく、事実なのだろう。
 が、まだ飲み込み切れていない。

 俺の父親も、がんを告げられた日は実感のない様子だった。「何かの間違いではないか」と言っていたのをよく覚えている。それと同じようなものか。

 ただ、記憶が正しければ……。
 父親はその後すぐに暴力的になり、手が付けられなくなった。
 おそらく病死が実感できるようになるにつれて、「なぜ自分がこんな目に遭うのか」と考えるようになるからだろう。
 俺もそうなる可能性が大いにあるはずだ。
 もし俺がそうなったら……?

 そうなる前に、やることがある。

 俺は足を止めた。
 急に止まったため、絡められていたダイキの腕が外れた。

「タケトさん?」

 彼も止まり、俺を見上げている。

「ダイキ、お前はもう、うちに来るな」
「え?」

「残りの命がわずか。こんな状態でお前がうちに来たら、間違いなく襲う。お前が抵抗しても無理やりやるだろう」
「……」
「お前はいつも夜に来る。いつも昼間どこにいるのかは知らないが、俺は気づいているぞ。実は帰るところはちゃんとあるんだろ? お前の捜索願だって出ている気配はないしな。だからもう俺から離れろ。うちには来るな」
「で、でも」
「来ても追い出す。いいな?」



(続く)
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