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第0話 お姉さんだった

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 残暑がまだ、厳しい日。

 会社のエントランスにある無人受付カウンター。
 その前に、彼はいた。

 たまたま、私が第一発見者だった。

 体は一見、少し細身。
 上はアイロンがかかっていないワイシャツ、下は学ランのズボンという服装。
 髪は黒くて短かく、固めてはいなくてノーセットな感じ。
 朴訥な表情で、立っていた。

 カウンターには来客用の電話機が置いてある。
 少なくとも私のいる総務部の電話機は鳴っていなかったが……。
 この見かけ、そしてこの時間、間違いない。
 彼は今日、会社説明と工場見学のために来るはずの、佐藤ダイチくんだ。

 私は慌てて近づき、「こんにちは」と言って挨拶をした。

「私は総務部人事担当の蒼井アオイ桃花トウカと申します。佐藤ダイチくんですね?」

 自己紹介をし、彼の名前を呼んで確認を取った。
 間違ってはいないだろうが、念のため。

 すると彼は、表情を変えないまま……。

「うす」

 ボソッとそう言って、私にお辞儀した。

「――!?」

 え!?
 うす?
 臼?
 私は杵で頭を叩かれたような衝撃を受けた。

 それが、彼――高校三年生のダイチくんとの出会いだった。
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