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第3話 掲示板の『サ1』とは(2)
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「そのまま待っていてください」
態度の豹変させ、冷たくそう言って去っていくメイド。
ん? と思っていると、次に立派な服を着た中年の男がやってきた。
「おお、君が応募してくれた子か」
その男は、酷く太っていた。表情もだらしなく緩んでいる。
「うーん、素晴らしい。顔もイケメンだし、よい体をしてそうだ。裸にマント一枚というのもやる気十分でいいね」
「そうなんですか? ありがとうございます!」
「ハイこれが一万ペニー」
いきなり紙幣を握らされた。
「あれ? 先にもらえるんです?」
「君を見ただけでもこの金額の価値はある。終わったら追加でまた払うよ」
まだ仕事内容すらも聞いていないのに――。
よくわからず首をかしげていると、腕を力強く引っ張られた。
「わっ」
「さっそく行こうね、私の寝室に」
学生格闘家である俺も、これだけ体重差があると体を簡単に引きずられてしまう。
格闘技に適正階級というものがいかに大切か。それがよくわかるというものである。
「うわー! すごい部屋ですね!」
小学校の教室くらいはあるのではないかという、だだっ広い寝室。
追放される前に城で与えられていた部屋よりも大きい。
真ん中には天幕付きベッドが置いてあった。
「そうかい? お世辞でもほめてもらえてうれしいよ」
「あ、でもなんで寝室に? ここでやる仕事なんです?」
すると、中年男が迫ってきた。
「もちろんだよ」
そして俺の肩に手をやると、一気にマントをはぎ取ってきた。
「――!?」
「おお……彫刻のような素晴らしい体だ」
……?
「……」
し、しまった……。
やってしまった。
目の前には、白目を剥いている中年オヤジ。
冷や汗が出てきた。
全裸にされたあと、すぐに
「思いっきり蹴ってくれ」
と言われ、困惑しながらも「じゃあローキックを」と言って、念のため手加減して蹴ったのはいいのだが……。
彼は膝を上に上げてガードすることもなく、膝を外側に向けてカットすることもなく。まともに食らって悶絶していた。
俺はすぐに謝った。
だが、中年オヤジは立ち上がり、
「素晴らしい。上も思いっきり頼むよ」
と言ってきたので、嫌な予感がしながらも仕方なくハイキックを放った。
結果はこのとおり、ハイキックはブロックされることもなく、まともに命中。
失神KOである。
いかに階級差があろうとも、当たりどころによってはこうなってしまう。
だいぶ手加減はしたつもりだったのだが、まだ足りなかったようだ。
これ、リクエストのとおり本当に思いっきり蹴っていたら、死んでいたのではないか。ぞっとする。
ちょうど中年オヤジが吹っ飛んだ先がベッドだったため、その状態で呼吸や脈を確認した。
どうやら大事には至らなそうだ。よかった。
そのまま彼の体の向きを整え、寝かせる。
大丈夫だとは思うが、意識が戻ったら唇や手足にしびれがないかどうか確かめたほうがよいかもしれない。
そう思っていたら、ちょうど部屋の出入り口の外に、先ほどのメイド服の女の子が通りかかった。
「メイドさん!」
俺は慌ててマントを着け、彼女に声をかけた。
「はい。なんでしょうか?」
部屋に入ってきた女の子は、やはり冷たい回答。
「ごめんなさい。蹴れって言われて蹴ったら気絶しちゃって」
「……。そうですか」
必死に説明しようとする俺に対し、なんとも落ち着いた対応。
先ほど俺がやったように、中年オヤジの呼吸や脈などを確認している。
「大丈夫だと思います」
そして彼女はそう言うと……
いきなり俺に向かってキックを繰り出してきた。
態度の豹変させ、冷たくそう言って去っていくメイド。
ん? と思っていると、次に立派な服を着た中年の男がやってきた。
「おお、君が応募してくれた子か」
その男は、酷く太っていた。表情もだらしなく緩んでいる。
「うーん、素晴らしい。顔もイケメンだし、よい体をしてそうだ。裸にマント一枚というのもやる気十分でいいね」
「そうなんですか? ありがとうございます!」
「ハイこれが一万ペニー」
いきなり紙幣を握らされた。
「あれ? 先にもらえるんです?」
「君を見ただけでもこの金額の価値はある。終わったら追加でまた払うよ」
まだ仕事内容すらも聞いていないのに――。
よくわからず首をかしげていると、腕を力強く引っ張られた。
「わっ」
「さっそく行こうね、私の寝室に」
学生格闘家である俺も、これだけ体重差があると体を簡単に引きずられてしまう。
格闘技に適正階級というものがいかに大切か。それがよくわかるというものである。
「うわー! すごい部屋ですね!」
小学校の教室くらいはあるのではないかという、だだっ広い寝室。
追放される前に城で与えられていた部屋よりも大きい。
真ん中には天幕付きベッドが置いてあった。
「そうかい? お世辞でもほめてもらえてうれしいよ」
「あ、でもなんで寝室に? ここでやる仕事なんです?」
すると、中年男が迫ってきた。
「もちろんだよ」
そして俺の肩に手をやると、一気にマントをはぎ取ってきた。
「――!?」
「おお……彫刻のような素晴らしい体だ」
……?
「……」
し、しまった……。
やってしまった。
目の前には、白目を剥いている中年オヤジ。
冷や汗が出てきた。
全裸にされたあと、すぐに
「思いっきり蹴ってくれ」
と言われ、困惑しながらも「じゃあローキックを」と言って、念のため手加減して蹴ったのはいいのだが……。
彼は膝を上に上げてガードすることもなく、膝を外側に向けてカットすることもなく。まともに食らって悶絶していた。
俺はすぐに謝った。
だが、中年オヤジは立ち上がり、
「素晴らしい。上も思いっきり頼むよ」
と言ってきたので、嫌な予感がしながらも仕方なくハイキックを放った。
結果はこのとおり、ハイキックはブロックされることもなく、まともに命中。
失神KOである。
いかに階級差があろうとも、当たりどころによってはこうなってしまう。
だいぶ手加減はしたつもりだったのだが、まだ足りなかったようだ。
これ、リクエストのとおり本当に思いっきり蹴っていたら、死んでいたのではないか。ぞっとする。
ちょうど中年オヤジが吹っ飛んだ先がベッドだったため、その状態で呼吸や脈を確認した。
どうやら大事には至らなそうだ。よかった。
そのまま彼の体の向きを整え、寝かせる。
大丈夫だとは思うが、意識が戻ったら唇や手足にしびれがないかどうか確かめたほうがよいかもしれない。
そう思っていたら、ちょうど部屋の出入り口の外に、先ほどのメイド服の女の子が通りかかった。
「メイドさん!」
俺は慌ててマントを着け、彼女に声をかけた。
「はい。なんでしょうか?」
部屋に入ってきた女の子は、やはり冷たい回答。
「ごめんなさい。蹴れって言われて蹴ったら気絶しちゃって」
「……。そうですか」
必死に説明しようとする俺に対し、なんとも落ち着いた対応。
先ほど俺がやったように、中年オヤジの呼吸や脈などを確認している。
「大丈夫だと思います」
そして彼女はそう言うと……
いきなり俺に向かってキックを繰り出してきた。
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