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第8話 イケメンはゲイ用語
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お金は調達できた。
まずは裸マントという非常にまずい格好を脱する必要がある。
俺が向かったのは、王都の街中にある古着屋。
異世界転移してきたばかりのころに発見したお店だ。
まだこの世界のことは詳しいわけではないが、日本にあったような服の小売店は見当たらない。
服は基本的に仕立て屋が作るか、民が時間をかけて自作しているようである。
だが古着の店は存在していた。服など自作できない俺にとっては非常に助かる。
「いらっしゃーい!」
店主と思われる壮年男性の元気な声
俺も返事して中に入る。
特にファッション性など求めないので、安く、ありふれていると思われるものを選び、店主に声をかけた。
すると、店主が俺の顔をじーっと見ている。
その視線から察するに、裸マントに突っ込みたいわけではないようだ。
「え? 俺の顔、なんかついてます?」
「……あ、いえ! 接客はいつも息子にやらせてますので、ちょっと待っててください」
店主らしき人は、一度店の奥に引っ込んだ。
代わりにやってきたのは、きれいな褐色肌と黒髪を持つ女の子……
いや、かわいかったので一瞬女の子かと思ったが、よく見ると男の子だった。
その肌を見せつけるかのような、露出度の高い半ズボンとタンクトップを着ている。歳はだいぶ若い……というか子供だ。間違いなく十代前半と思える。
「お兄さんイケメンだなー。こんな地味な服で大丈夫なの?」
なぜかタメ口である。
そして地味とは言われたものの、こちらはそのほうがいい。あまり目立ちたくないので。
「試着室あるよー。いちおう合わせてみて。こっちこっち」
試着するところがあるとは驚きである。
カーテンに囲まれていて、まるで前の世界の試着室のよう。しかも中に入ると鏡があった。
この世界、鏡はきっと貴重なんだろうなと思う。
イケメンとは言ってもらえたが、今の格好は古いマント一枚。割と惨めな姿が鏡に写っている。
「じゃあ合わせてみよっかー。お兄さんスタイルもいいから何でも似合うかもねー!」
「あ、そう? ありがとう……って、なんでナチュラルに中に入ってきてるの!?」
「ぜひ手伝いをさせてもらおうかと!」
「一人で大丈夫っす!」
「そこをなんとか!」
「ノーサンキュー!」
なんでやねんと思い、右側のカーテンから外に追い出した。
が、左側から復帰された。
「はい出て行って」
左に追い出す。
が、後方から復帰された。
「うーん、お兄さん結構頑固そうだね。困ったなー。どうしよう」
「それこっちのセリフ! 一人で着替えさせて!」
また追い出そうと、右腕を伸ばす。
が、それを褐色少年がスッと横にかわす。
うおっ……となったところで。
俺の腹に、彼の左の拳がめり込んだ。
「が……ぁ……」
未熟な打ち方だとは思うが、まさか子供が左ボディを打ってくるとは思わず。まともにもらってしまった。
「ごめんよお兄さん。ちょっと眠ってて!」
うめき声を出して倒れ込む俺に、そんな声が遠ざかりながら聞こえた。
まずは裸マントという非常にまずい格好を脱する必要がある。
俺が向かったのは、王都の街中にある古着屋。
異世界転移してきたばかりのころに発見したお店だ。
まだこの世界のことは詳しいわけではないが、日本にあったような服の小売店は見当たらない。
服は基本的に仕立て屋が作るか、民が時間をかけて自作しているようである。
だが古着の店は存在していた。服など自作できない俺にとっては非常に助かる。
「いらっしゃーい!」
店主と思われる壮年男性の元気な声
俺も返事して中に入る。
特にファッション性など求めないので、安く、ありふれていると思われるものを選び、店主に声をかけた。
すると、店主が俺の顔をじーっと見ている。
その視線から察するに、裸マントに突っ込みたいわけではないようだ。
「え? 俺の顔、なんかついてます?」
「……あ、いえ! 接客はいつも息子にやらせてますので、ちょっと待っててください」
店主らしき人は、一度店の奥に引っ込んだ。
代わりにやってきたのは、きれいな褐色肌と黒髪を持つ女の子……
いや、かわいかったので一瞬女の子かと思ったが、よく見ると男の子だった。
その肌を見せつけるかのような、露出度の高い半ズボンとタンクトップを着ている。歳はだいぶ若い……というか子供だ。間違いなく十代前半と思える。
「お兄さんイケメンだなー。こんな地味な服で大丈夫なの?」
なぜかタメ口である。
そして地味とは言われたものの、こちらはそのほうがいい。あまり目立ちたくないので。
「試着室あるよー。いちおう合わせてみて。こっちこっち」
試着するところがあるとは驚きである。
カーテンに囲まれていて、まるで前の世界の試着室のよう。しかも中に入ると鏡があった。
この世界、鏡はきっと貴重なんだろうなと思う。
イケメンとは言ってもらえたが、今の格好は古いマント一枚。割と惨めな姿が鏡に写っている。
「じゃあ合わせてみよっかー。お兄さんスタイルもいいから何でも似合うかもねー!」
「あ、そう? ありがとう……って、なんでナチュラルに中に入ってきてるの!?」
「ぜひ手伝いをさせてもらおうかと!」
「一人で大丈夫っす!」
「そこをなんとか!」
「ノーサンキュー!」
なんでやねんと思い、右側のカーテンから外に追い出した。
が、左側から復帰された。
「はい出て行って」
左に追い出す。
が、後方から復帰された。
「うーん、お兄さん結構頑固そうだね。困ったなー。どうしよう」
「それこっちのセリフ! 一人で着替えさせて!」
また追い出そうと、右腕を伸ばす。
が、それを褐色少年がスッと横にかわす。
うおっ……となったところで。
俺の腹に、彼の左の拳がめり込んだ。
「が……ぁ……」
未熟な打ち方だとは思うが、まさか子供が左ボディを打ってくるとは思わず。まともにもらってしまった。
「ごめんよお兄さん。ちょっと眠ってて!」
うめき声を出して倒れ込む俺に、そんな声が遠ざかりながら聞こえた。
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