シンキクサイレン

秋村ふみ

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 僕の休み時間のすごし方は、たいてい屋上にいるか、教室の机にうつぶせになっているかのどちらかである。うつぶせになっているといっても、寝ているわけではない。寝ているフリをしているだけだ。うつぶせになっている間は、目の前は真っ暗闇だ。その間、耳は敏感になっている。だから、教室でのクラスの人間の雑談内容がしっかりと僕の耳に入ってくる。
 その雑談内容の中に、『御手洗陽菜(みたらいはるな)』の名前がたまに出てきていた。大半が、彼女に対する悪口だ。『御手洗』という苗字だからなのだろう。『トイレのひと』とか『花子さん』とか、あだ名で彼女を呼んでいる者もいた。
 でも彼女がどう言われようが、僕には関係のないことだった。僕とはクラスも違うし、顔も知らない。ただ、けなされている彼女を「かわいそうな人だな」と思うことはあった。
 それが今回の屋上の出来事で、僕と無関係だったはずの彼女と急接近することになるとは、予想もしなかった。
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