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幕間の物語2 飛行機乗りのウィル
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ウィルバー・アーチは飛行機乗りである。
仲間たちは「ウィル」の愛称で彼を呼び、「意志」の意味につながるその名を彼自身も好んだ。
アーチ家の先祖は初の大陸間飛行を成功させた人物。
そのため彼の周りには常に飛行機があり、5歳の時には初めて一人でプロペラ機を飛ばした逸話を持っている。
そのまま当然の様に軍に入隊し、戦闘機乗りにとなる。
「世界政府」が樹立した「統合軍」。それが彼が所属する陣営だ。
折しもの世界は2度の世界大戦を経て、3度目の世界大戦に突入していた。
この世界の人間たちは2度の世界大戦で学ぶことはできなかったのだ。
世界政府の一方的な仕切りに意をとなえた「第三世界連合」がネットの連携とジャミング装置で、一斉蜂起をし、世界政府に対して宣戦布告、世界の主要都市の機能の壊滅させ、一時的とはいえ優位に立ったのだ。
戦いの舞台は大空へと移り、制空権をどちらが握るかが勝敗を分けた。
優れた戦闘機乗りが戦地の雌雄を決する。
ウィルの愛機はWF-14、通称「ヴィセンテ」と呼ばれる機体。
翼が前を向いている「前進翼」で、その最高速は世界トップ。
ただしその翼のデザインから機体の安定性を保てなかったが、可動式のアフターバーナーの採用でその問題を解決した。
結果ホバリングや水力離陸など、その飛行能力は大きな拡張性をもつに至った。
戦争は元来物量戦と相場が決まっている。
より多くの兵力を持った陣営がその物量で押し切り勝利を迎える。
ジャミング装置の発明は、その物量の効果的な運用を妨げた。結果、制空権を確保することが重要となった。
ウィルはその優れた戦闘技術でこの各都市のジャミング装置を次々と破壊。戦局は徐々に世界政府側へと有利に向かっていった。
しかし戦いの中でウィルは「第三世界連合」のエースと、ある島で漂流生活を送る事となった。
きっかけは赤道直下での空中戦。
相手は死神がマークされた黒い機体を駆る第三世界側のエース。その実態は謎に包まれており、統合軍側では「死神」のコードネームで呼ばれていた。
ウィルとの戦績はそれまでに6戦行われており実質3勝3敗だった。
この闘いで互いの機体はダメージを受け、ある無人島付近に共に不時着。
活きていくために共生生活をおくった。
ウィルは銃やナイフで攻撃する相手をなだめるのに2日もかかった。
第三世界側のエースパイロットは女性だった。
名はエレナ・グラシア。
ラテンの血が流れ、強い眼をした綺麗な女性だ。
「女性がパイロットになれないとは、お前の軍は遅れているな」
「女性にパイロットができる訳が無いだろ!」
「私はお前に4勝しているぞ」
「何言っている俺が4勝だろう」
「なんだお前らの国では算数も教えてないのか。シド、トーキ、ペイキン、ロダ。計4勝だ」
「ロダの戦いは俺の勝ちだろうが!」
「1対1の勝負では私が勝っていた。お前らの汚い援軍が無ければそのまま終わってた」
万事がこの調子だったが、共同生活も3カ月を過ぎた頃にはお互いの主張も聞く様になっていた。
「第三世界にはそれしか回させていなかったのか」
「それに対してお前たち世界連合を名乗る連中は世界の90%の資源を支配していた、ここにどんな平等がある」
「それは俺たちには伝えられていなかった」
「あのテロは第三世界側が仕掛けたものではなかったのか!」
「我々がそれをやって何の得になる、冷静に考えてみろ。その後の状況を。第三世界の指導者たちは一斉に捕縛され監禁、一方的な武装解除宣言の下での武力支配」
「俺たちは戦いの全容をあまりに知らなかった」
「兵隊なんてそんなもんだろう。それはしょうがない」
9か月が過ぎた頃、生活の中で続けていた互いの機体の修理も終了していた。
そして、ウィルはある決断をする。第三世界側の戦いに参加する事を。
まずは全ての情報を表に出してから。そう考えたのだ。
両陣営のエースが協力しているのだ、その力は圧倒的だった。
まず二人は第三世界側の指導者たちの解放を行った。
中には獄中死している凄惨な状況もあったが、約7割の人間を救う事ができた。
そしてこの指導者たちを中心にネットでの情報戦で世論を変えた。
過去のテロ事件の真相や世界政府高官の贅の限り、人権を無視した武力支配の実態など、枚挙に暇がないほどだった。
その流れは大きな波となり、世界はこれ以上の戦争は望まなくなり、代表同士での話し合いの場が持たれる事になった。
しかし、一部の利権を牛耳る連中は一定の戦力を確保し逃げた。
その中には強力な核兵器も含まれていた。
全世界を核のターゲットとして、再度自分たちの優位性を訴えた。
しかし全世界は協力しこれを討つ事を決める。
実行はウィルとエレナの二人のエースに託される。
残存戦力を屠りつつ敵の本拠地へと進む、当然だ、二人に対抗できる戦力はこの世界にはないのだから。
そのまま無事に、元世界政府高官やこの戦争の根源たる存在たちを根絶やしにする事に成功する。
世界が平和へと向かう中、新たに樹立された「新世界政府」へと【招待状】が届く。
書簡の差出人は【世界の根幹】と名乗る者。
そこにはこう書かれたいた。
「闘いに勝利すれば望みのモノを与えよう」
新たな戦いの火種にならない様に、先の戦争の英雄であるウィルが向かう事となった。
お腹の大きくなったエレナが一言
「子供が父親を知らずに育つことは許さない」
と送り出した。
仲間たちは「ウィル」の愛称で彼を呼び、「意志」の意味につながるその名を彼自身も好んだ。
アーチ家の先祖は初の大陸間飛行を成功させた人物。
そのため彼の周りには常に飛行機があり、5歳の時には初めて一人でプロペラ機を飛ばした逸話を持っている。
そのまま当然の様に軍に入隊し、戦闘機乗りにとなる。
「世界政府」が樹立した「統合軍」。それが彼が所属する陣営だ。
折しもの世界は2度の世界大戦を経て、3度目の世界大戦に突入していた。
この世界の人間たちは2度の世界大戦で学ぶことはできなかったのだ。
世界政府の一方的な仕切りに意をとなえた「第三世界連合」がネットの連携とジャミング装置で、一斉蜂起をし、世界政府に対して宣戦布告、世界の主要都市の機能の壊滅させ、一時的とはいえ優位に立ったのだ。
戦いの舞台は大空へと移り、制空権をどちらが握るかが勝敗を分けた。
優れた戦闘機乗りが戦地の雌雄を決する。
ウィルの愛機はWF-14、通称「ヴィセンテ」と呼ばれる機体。
翼が前を向いている「前進翼」で、その最高速は世界トップ。
ただしその翼のデザインから機体の安定性を保てなかったが、可動式のアフターバーナーの採用でその問題を解決した。
結果ホバリングや水力離陸など、その飛行能力は大きな拡張性をもつに至った。
戦争は元来物量戦と相場が決まっている。
より多くの兵力を持った陣営がその物量で押し切り勝利を迎える。
ジャミング装置の発明は、その物量の効果的な運用を妨げた。結果、制空権を確保することが重要となった。
ウィルはその優れた戦闘技術でこの各都市のジャミング装置を次々と破壊。戦局は徐々に世界政府側へと有利に向かっていった。
しかし戦いの中でウィルは「第三世界連合」のエースと、ある島で漂流生活を送る事となった。
きっかけは赤道直下での空中戦。
相手は死神がマークされた黒い機体を駆る第三世界側のエース。その実態は謎に包まれており、統合軍側では「死神」のコードネームで呼ばれていた。
ウィルとの戦績はそれまでに6戦行われており実質3勝3敗だった。
この闘いで互いの機体はダメージを受け、ある無人島付近に共に不時着。
活きていくために共生生活をおくった。
ウィルは銃やナイフで攻撃する相手をなだめるのに2日もかかった。
第三世界側のエースパイロットは女性だった。
名はエレナ・グラシア。
ラテンの血が流れ、強い眼をした綺麗な女性だ。
「女性がパイロットになれないとは、お前の軍は遅れているな」
「女性にパイロットができる訳が無いだろ!」
「私はお前に4勝しているぞ」
「何言っている俺が4勝だろう」
「なんだお前らの国では算数も教えてないのか。シド、トーキ、ペイキン、ロダ。計4勝だ」
「ロダの戦いは俺の勝ちだろうが!」
「1対1の勝負では私が勝っていた。お前らの汚い援軍が無ければそのまま終わってた」
万事がこの調子だったが、共同生活も3カ月を過ぎた頃にはお互いの主張も聞く様になっていた。
「第三世界にはそれしか回させていなかったのか」
「それに対してお前たち世界連合を名乗る連中は世界の90%の資源を支配していた、ここにどんな平等がある」
「それは俺たちには伝えられていなかった」
「あのテロは第三世界側が仕掛けたものではなかったのか!」
「我々がそれをやって何の得になる、冷静に考えてみろ。その後の状況を。第三世界の指導者たちは一斉に捕縛され監禁、一方的な武装解除宣言の下での武力支配」
「俺たちは戦いの全容をあまりに知らなかった」
「兵隊なんてそんなもんだろう。それはしょうがない」
9か月が過ぎた頃、生活の中で続けていた互いの機体の修理も終了していた。
そして、ウィルはある決断をする。第三世界側の戦いに参加する事を。
まずは全ての情報を表に出してから。そう考えたのだ。
両陣営のエースが協力しているのだ、その力は圧倒的だった。
まず二人は第三世界側の指導者たちの解放を行った。
中には獄中死している凄惨な状況もあったが、約7割の人間を救う事ができた。
そしてこの指導者たちを中心にネットでの情報戦で世論を変えた。
過去のテロ事件の真相や世界政府高官の贅の限り、人権を無視した武力支配の実態など、枚挙に暇がないほどだった。
その流れは大きな波となり、世界はこれ以上の戦争は望まなくなり、代表同士での話し合いの場が持たれる事になった。
しかし、一部の利権を牛耳る連中は一定の戦力を確保し逃げた。
その中には強力な核兵器も含まれていた。
全世界を核のターゲットとして、再度自分たちの優位性を訴えた。
しかし全世界は協力しこれを討つ事を決める。
実行はウィルとエレナの二人のエースに託される。
残存戦力を屠りつつ敵の本拠地へと進む、当然だ、二人に対抗できる戦力はこの世界にはないのだから。
そのまま無事に、元世界政府高官やこの戦争の根源たる存在たちを根絶やしにする事に成功する。
世界が平和へと向かう中、新たに樹立された「新世界政府」へと【招待状】が届く。
書簡の差出人は【世界の根幹】と名乗る者。
そこにはこう書かれたいた。
「闘いに勝利すれば望みのモノを与えよう」
新たな戦いの火種にならない様に、先の戦争の英雄であるウィルが向かう事となった。
お腹の大きくなったエレナが一言
「子供が父親を知らずに育つことは許さない」
と送り出した。
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