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幕間の物語6 宇宙鍛冶屋のイォーリン
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ミスル人の乗る宇宙船が暗い宇宙を走っている。
資源があり、文明の無い原生の星を探しているのだ。
一人が叫んだ。
「おい、見つけたぞ! 文明の形跡も見当たらない。人間もいないみたいだ」
「やっとか。こんな辺鄙なところまで来たかいがあったか。これで仕掛けができる。おいみんな準備しろ」
指示を受け、皆が作業にかかった。
この指示を出し、旅団をまとめているのが、イォーリン・ガルムシルド。ミスル人の優れた鍛治職人だ。
ミスル人は皆、優れた鍛冶職人である。
鍛治といっても剣の類ばかりではなく、銃やシールド。ビーム兵器までその仕事の幅はなんでもござれ。その細工も素晴らしく、その仕事を求め、全宇宙から依頼が来る。
各世界の神話に出てくる「ドワーフ」の元になった種族である。実際、その容姿は小人ではなく、どちらかと言えば大きい部類だ。ある巨人族から仕事を受け持ち、巨人たちに気に入られて、「優れた小人」として宇宙に宣伝しまわった。結果、彼らの言葉で「小さき者」を意味する「ドワーフ」として知れ渡ってしまったのだ。
ちなみにミスル人が扱う特殊加工された金属は「ミスリル」として、これもまた各世界の神話に優れた金属として登場する。
数年前、ある帝国が彼らの技術の独占を要求したが、ミスルの長老がこれを拒否した。
結果、ミスルの星は宇宙から消え去った。たまたま星を離れていた200ほどを除き、全滅したのだ。
イォーリンたちはその時の生き残りで、彼らのグループは20人ほどで、鉱物漁をしながら宇宙を旅している。
彼らの鉱物採掘漁は特殊なもので、「アペシュ」という金属生命体を文明のない(住民が鉱物を必要としていない)星に放ち、一定期間その星の貴金属類を食べ成長させてから強力磁石で回収するというものだ。
乗組員のドォーリが、その条件にあった星を見つけたのだ。
イォーリやその娘のライザ、その他全員で球体のアペシュを発射口に詰め込む。
アペシュは基本球体だが、大気圏の熱で目を覚まし手足を伸ばす。後はひたすら鉱物を食べるだけだ。
ちなみに、仮に人類がいたとしても食べたりはしない。確かに人体の血液には鉄分が含まれてい入るが、その量は微々たる物だ。集めたところで効率は悪い。
イォーリンの合図でアペシュが投下された。
数にして数百ほど。大気があるらしく、赤く小さくなっていく球を見守った。
半年もすれば、アペシュも立派に育ち、その体には様々な貴金属が含有される。それを捕獲し、加工し売りさばく。
彼らの目的は、金をため自分たちの新しい星を手に入れる事だ。
ライザが投下口をチェックすると、アペシュが一つ残っていた。
「まったく、この船は本当にボロだね」
そう言いながら、蹴って最後の一つを落とした。
「新しい船買おうぜ、オヤジ」
「もう少しの辛抱だ、今回の漁での獲物で商品を売ったら手ごろな星を買えるんだ」
「取引してるのスカム星でしょ、あいつら怪しい噂しか聞かないし、オヤジ絶対騙されてるって」
「そんな事は無い、もう支払いも残すところあと1回なんだ。安心しろ」
「え、もう支払っちゃってんの!?」
「ああ、だから安心しろ」
「いやいや、ちょっと担当の名前と連絡先教えな!」
ライザはイォーリンから名前と聞き出し、次元ネットワークでその名前を調べる。
「あー、やられた!」
ライザの叫び声にクルーが皆集まって来た
「なんだ」
「どうしたライザ」
皆を一瞥して、父親のイォーリンをまっすぐ見て言う。
「詐欺被害のサイトでそいつ有名人だよ」
「な、なんだと!」
「なんだとじゃなくて! なんで調べててから払わないの?」
「いや、急がないと他の者が欲しがってるって言っとったから、その場でも次から次に商談成立の電話受け取ったし」
「詐欺の常套ってより、もうそれ古典の手口だよ。どーすんの」
「どーしようか」
「はー」
ライザはため息。
周りの皆も何となく事情を察した。
ライザが口を開く。
「とにかく、今回の漁でまた元手を増やして、また金を集め直しだよ。もうこの馬鹿オヤジは当てにならないから、今後は私が仕切るからね。意義のある奴はいる?」
皆ぶるぶると首を横に振る。
ライザは小柄だが怒るとこの中の誰よりも強い。
イォーリンが口を開く。
「仲間にもこの詐欺の事教えとかんと」
「どうやって?」
ライザが聞き返す
「いや、メールとかで」
「だーかーら! メールはダメだって言ってるでしょ!」
ミスル人は宇宙メールなどを使って連絡がとれない。
帝国の監視の目があり、生き残りのミスル人は発見次第捕られ強制労働を強いられる。
先日もグループの数人が捕らえられたらしい事をニュースで知った。
仲間の一人キゥーリが言った。
「そのスカム人、俺たちの事を帝国に売ってないかな」
「支払いが終わったらそうしてたかも、ただスカムの連中も脛に傷を持つ連中だから、帝国とそうそう取引はしないでしょうけど。ただ警戒は必要だね。オヤジ、スカムと最後の取引をする予定だったのはいつ」
「1年後じゃよ」
「それまではまず安心でしょう。とにかく手を考えましょう」
アペシュが育つには半年ほどはかかる。
クルーをその成長を待ちつつ、色々な問題に対処しなければならなかった。
資源があり、文明の無い原生の星を探しているのだ。
一人が叫んだ。
「おい、見つけたぞ! 文明の形跡も見当たらない。人間もいないみたいだ」
「やっとか。こんな辺鄙なところまで来たかいがあったか。これで仕掛けができる。おいみんな準備しろ」
指示を受け、皆が作業にかかった。
この指示を出し、旅団をまとめているのが、イォーリン・ガルムシルド。ミスル人の優れた鍛治職人だ。
ミスル人は皆、優れた鍛冶職人である。
鍛治といっても剣の類ばかりではなく、銃やシールド。ビーム兵器までその仕事の幅はなんでもござれ。その細工も素晴らしく、その仕事を求め、全宇宙から依頼が来る。
各世界の神話に出てくる「ドワーフ」の元になった種族である。実際、その容姿は小人ではなく、どちらかと言えば大きい部類だ。ある巨人族から仕事を受け持ち、巨人たちに気に入られて、「優れた小人」として宇宙に宣伝しまわった。結果、彼らの言葉で「小さき者」を意味する「ドワーフ」として知れ渡ってしまったのだ。
ちなみにミスル人が扱う特殊加工された金属は「ミスリル」として、これもまた各世界の神話に優れた金属として登場する。
数年前、ある帝国が彼らの技術の独占を要求したが、ミスルの長老がこれを拒否した。
結果、ミスルの星は宇宙から消え去った。たまたま星を離れていた200ほどを除き、全滅したのだ。
イォーリンたちはその時の生き残りで、彼らのグループは20人ほどで、鉱物漁をしながら宇宙を旅している。
彼らの鉱物採掘漁は特殊なもので、「アペシュ」という金属生命体を文明のない(住民が鉱物を必要としていない)星に放ち、一定期間その星の貴金属類を食べ成長させてから強力磁石で回収するというものだ。
乗組員のドォーリが、その条件にあった星を見つけたのだ。
イォーリやその娘のライザ、その他全員で球体のアペシュを発射口に詰め込む。
アペシュは基本球体だが、大気圏の熱で目を覚まし手足を伸ばす。後はひたすら鉱物を食べるだけだ。
ちなみに、仮に人類がいたとしても食べたりはしない。確かに人体の血液には鉄分が含まれてい入るが、その量は微々たる物だ。集めたところで効率は悪い。
イォーリンの合図でアペシュが投下された。
数にして数百ほど。大気があるらしく、赤く小さくなっていく球を見守った。
半年もすれば、アペシュも立派に育ち、その体には様々な貴金属が含有される。それを捕獲し、加工し売りさばく。
彼らの目的は、金をため自分たちの新しい星を手に入れる事だ。
ライザが投下口をチェックすると、アペシュが一つ残っていた。
「まったく、この船は本当にボロだね」
そう言いながら、蹴って最後の一つを落とした。
「新しい船買おうぜ、オヤジ」
「もう少しの辛抱だ、今回の漁での獲物で商品を売ったら手ごろな星を買えるんだ」
「取引してるのスカム星でしょ、あいつら怪しい噂しか聞かないし、オヤジ絶対騙されてるって」
「そんな事は無い、もう支払いも残すところあと1回なんだ。安心しろ」
「え、もう支払っちゃってんの!?」
「ああ、だから安心しろ」
「いやいや、ちょっと担当の名前と連絡先教えな!」
ライザはイォーリンから名前と聞き出し、次元ネットワークでその名前を調べる。
「あー、やられた!」
ライザの叫び声にクルーが皆集まって来た
「なんだ」
「どうしたライザ」
皆を一瞥して、父親のイォーリンをまっすぐ見て言う。
「詐欺被害のサイトでそいつ有名人だよ」
「な、なんだと!」
「なんだとじゃなくて! なんで調べててから払わないの?」
「いや、急がないと他の者が欲しがってるって言っとったから、その場でも次から次に商談成立の電話受け取ったし」
「詐欺の常套ってより、もうそれ古典の手口だよ。どーすんの」
「どーしようか」
「はー」
ライザはため息。
周りの皆も何となく事情を察した。
ライザが口を開く。
「とにかく、今回の漁でまた元手を増やして、また金を集め直しだよ。もうこの馬鹿オヤジは当てにならないから、今後は私が仕切るからね。意義のある奴はいる?」
皆ぶるぶると首を横に振る。
ライザは小柄だが怒るとこの中の誰よりも強い。
イォーリンが口を開く。
「仲間にもこの詐欺の事教えとかんと」
「どうやって?」
ライザが聞き返す
「いや、メールとかで」
「だーかーら! メールはダメだって言ってるでしょ!」
ミスル人は宇宙メールなどを使って連絡がとれない。
帝国の監視の目があり、生き残りのミスル人は発見次第捕られ強制労働を強いられる。
先日もグループの数人が捕らえられたらしい事をニュースで知った。
仲間の一人キゥーリが言った。
「そのスカム人、俺たちの事を帝国に売ってないかな」
「支払いが終わったらそうしてたかも、ただスカムの連中も脛に傷を持つ連中だから、帝国とそうそう取引はしないでしょうけど。ただ警戒は必要だね。オヤジ、スカムと最後の取引をする予定だったのはいつ」
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