上 下
24 / 33

  幕間の物語10 堕天使リビアナ

しおりを挟む
リビアナ
かつては天使であった者

「争い」が好きで、人や動物をそそのかし、常に戦いを起こしそれを見て楽しんでいた。

天使は神の使いとして、人の営みを見守る存在。
様々な事象や感情を受け持つ天使がおり、「愛」「力」「知」などをそれぞれ担当していた。
リビアナは「争」を担当していたが、仕事を抜きに争いが大好きだった。
そういう意味では適材適所な仕事ではあった。

リビアナは元は違う名前だった。
人の争いを大きくしすぎ、世界大戦へと発展させてしまい、神はこの天使を地に堕とした。
要はやり過ぎてしまったのだ。
こうして堕天使となり、名前をリビアナと変えた。それからウサギ耳を着用するようになった。

地に墜ちた際に、天使としての力を失なったが、代わりに次元を渡る力を手に入れた。
その力で元の世界を後にした。自分を裏切った神にはいつか復讐をと思ったが、まずは力を得ることが先決と考えたのだ。

時を経て、色々な世界で暗躍を続ける中で「中央世界」という場所を見つけた。
闘士をどこからかの次元からスカウトしてきて、闘技場で戦わせる。
なんでも戦いの大きさにより、勝者にはご褒美がもらえるんだとか。
戦闘能力の無いリビアナにとってはどうでもいい話だったが、この世界は気に入った。
元は闘技場を中心に変幻自在な一定空間だけの場だったが、やがて人が住み着き、現在は大きな国ほどの大きさに発展している。
様々な世界の情報が入るため、リビアナはここを生活の拠点とすることに決めた。

そのリビアナが現在注目している国がある、それは「赤獅子国」だ。
東城氏康という人間を中心とした国。
国と言っても国民の数は極端に少なく、領土となる国土も小さな島が一つなので、当初はリビアナは全く興味が無かった。
基本、大人数の人間同士が殺し合う戦争がリビアナは大好きだった。
なので超技術が発達し、無人ロボットや無人戦闘機や機械が潰しあう戦闘には全く興味が無かった。
しかし、この赤獅子国は、最近になり様々な闘士を取り込んで急成長をしている。
人口も増え始めたという。

久々に赤獅子国を覗きに来て驚いた。
街がたったの1年ほどで大きく発展しているのだ。
以前来た時は200ほどしか居なかった住民が、どうやら少なくとも10倍にはなっているようだった。

住民に聞き込みをしてみると、大和国、フェンリル、炎王朝のドラゴン、アストリア共和国民、日本幽国の5つの世界の住民がいるという。

リビアナには新しいおもちゃを見つけた喜びだった。
各住民は元の世界とは折り合いがつかずにこの赤獅子国に来たという。という事は、それらをこの国にけしかければ大きな戦いになる。
そのワクワクが止まらないのだ。


早速、日本幽国に渡り代表と話しをする。
赤獅子国に移った村井のきあの一団なき後、その世界は妖怪のみの世界だったが。
自らの糧となる人間を失っていたのだ。

リビアナは総大将の邪凶という妖怪に会った。
人間が昔使っていた城の天守閣にそれはいた。
「主は何者か?」
「何でも屋、とご認識を頂ければと存じます。閣下」
「商人の類か。してどんな商品を扱っている」
「なんでも屋、でございますので、なんでもでございます。あなた様のお望みの物を」
「ほう、では、儂の今の望みとはなんだ?」
「『次元を渡る術』などはいかがでしょうか」
「貴様、なぜそれを」
「お客様の望みは我々望みですので」
「対価は何を望む。金銀の類なら、我ら妖怪には無用の長物、好きなだけくれてやれるぞ」
「いいえ。私は戦争を見せていただければ、それ以上の報酬は必要ありません」
「戦争狂か? 貴様」
「いけませんでしょうか?」
「いいや、大いに結構! よかろう、最高の残虐ショーを貴様に提供してやろう」
「それはそれは、期待しております。閣下殿」
リビアナは一本の刀を邪凶に渡した。
「これは次元刀。次元を斬りさく力がございます」
「ほう」
「切れるのは一太刀のみ、できるだけ大きな一太刀を入れてください」
次元刀。その実はその辺に落ちていた刀を拾い、自身の力を刀に少し注入した代物だ。
「できましたら、攻め込む日だけはお教えください」
「その必要はない」
「というと?」
「今から攻め込む!」
「即断即決。素晴らしい!」

こうして、日本幽国の全ての妖怪が赤獅子国へと侵攻を開始した。

「東城氏康様、でしっけ。さて、この境地をどうしのぐか。楽しみですね」
リビアナは赤獅子国に一足先に向かっており、空高くに次元の裂け目を作り、特等席でその戦いの行方を見守る準備をしていた。
しおりを挟む

処理中です...