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第6幕 侍と宇宙船と妖怪大戦争
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赤獅子国
季節は夏に差し掛かっていた。
赤獅子国の国土は数度のデュエルで、日本でいうところの関東と東北を合わせたほどの大きさになっていた。
人口も2000人を超え、城下町は中々の規模になっており、文化レベルも大分上がってきている。
最近になり他の星や、他の次元からの襲撃が増えて来たので、街の周りを城壁で覆い始めた。
今国として抱えている問題は二つ。
宇宙から飛来した鉄亀の駆除。
そして、もう一つは後程説明する。
鉄亀。詳しい生態は不明だが、どうやら地中の鉱物を食べ成長するらしく、最近見つかる物はとても大きく成長している。
また一匹現れたとの連絡を受けて氏康とオルフェ、回収係りの経蔵はそちらに向かった。
「これはまた大きく育ったもんだな」
「今日は私の番だからな、氏康手出しはするなよ」
「分かっている」
「おーし、今日は綺麗に三枚におろしてやる」
その時、宇宙から一隻の宇宙船が飛来してきた。
同時にその宇宙船から大きな怒鳴り声が発せられた。
「てめーら! 私たちのアペシュを横取りしようだなんていい度胸じゃねーか!」
どうやらしゃべっているのは女の様だった。
「なんだ? 氏康あれ知ってるか?」
「いや知らん あぺしゅってなんだ?」
「この鉄亀の事かもしれませんね」
経蔵が二人に言う。
オルフェは宇宙船の方に歩き大きな声で言った。
「人の国に来て、何勝手な事言ってんだ! 何者だお前は!」
すると宇宙船から大型のパワードスーツが出て来た。手には大きな斧らしき武器を持っている。
「国だ? 何言ってんだ、ここには国なんかないだろう! そんな事よりアペシュの反応が少ないのは、お前たちが狩っていたのが原因か。この泥棒猫が!」
「猫じゃない! 私は狼の女王だ!」
「猫は言葉のあやです」
経蔵が静かに突っ込む。
「泥棒なんざ私がひねってやるよ!」
そのパワードスーツは斧を大きく振りかぶって来た。中々のスピードだ。
しかしオルフェのスピードには敵わない。
一瞬でそのパワードスーツの背中に回った。
「そんな大きいのを着てるから動きが鈍いんだよ!」
オルフェの蹴りが炸裂し、パワードスーツは大きく吹っ飛ぶ。
バックパックと足元のブースターで体勢を整える。
パワードスーツが何度攻撃を試みても同じように避けられ蹴り飛ばされる。
「おのれネズミの様にちょこまかと」
「だから! 私はネズミじゃないくて狼の女王だ!」
「捕まえてしまえば、こんな小娘粉砕してくれるものを!」
「良いだろう、力比べにつきやってやる木偶人形」
オルフェはそのパワードスーツの手をがっちりと組んだ。
「やってみろ」
「なめるな!」
パワードスーツはフルパワーでオルフェを振り回そうとするがびくともしない。
「ば、馬鹿な!」
「こんなものか。氏康、そろそろ飽きたから仕留めていいか?」
「殺しちゃだめだぞ。色々聞きたい事もあるしな」
オルフェはそれに笑って返す。
そして、鉄をも斬りさく爪を出し、パワードスーツを斬りさく。
「なんなんだこのパワーとスピードは? どこの星の連中だ……」
そのパワードスーツは動かなくなり、中の人間が排出された。
それはちょっと大柄な女性だった。
城の一角。
病院となっている建物。
パワードスーツに乗っていた女性はベットの上で目を覚ました。
「ここは?」
「目が覚めましたか、ここは病院です。赤獅子国の」
見回りに来た看護師のミリアが笑顔でそれに答えた。
「起きたか! ライザ!」
「ん、オヤジ。それにみんなも」
周りには宇宙船の乗組員がいた。
残りは別部屋にいるらしい。
「じゃあ、私は氏康様に伝えてきますね。ちょっと待っていてください」
そう言ってミリアは部屋から出て行った。
「どーゆー事なんだい、オヤジ」
「どうやら、悪いのは俺たちだったみたいだぞ、ライザ」
「え?」
少し経ち、陽炎が部屋にやって来た。
「皆さん、城主がお待ちです。代表の方は天守までいらしてください」
3人が陽炎に着いて天守閣まで来た。
「すっかり回復したみたいだな」
そこには氏康をはじめ、オルフェ、センドリック、ミリア、村井のきあなど数人がいた。
「自己紹介からだな、俺はこの国の代表を務めている東城氏康だ」
「わ、私はライザ・ガルムシルド。流れで鍛冶職人をしている旅団のリーダーだ」
突然一人の男が土下座をした。ドォーリという名前だそうだ。
「すまなかった、氏康どん。この星には人がすんでるだなんて知らなかったんだ」
「ああ、その事もそうなんだが、状況を説明してくれないか。あの鉄亀はなんなのかなどな」
「鉄亀?」
「あの鉄を食べる変な生き物」
「ああ、アペシュの事か」
「国民が食われないか気が気でなくてな。常に監視体制だ」
「? アペシュは人は食わんぞ」
「え? でも我らの経蔵は人間にも鉄分があるって」
「人間の鉄分の量がどれほどだって話だよ、微々たる量を得るためにアペシュは人は襲わない。効率が悪いからな」
「な、なんじゃそうだったのか。だそうだぞ、経蔵?」
「私だって、『食べられる危険性がある』って指摘したにすぎません」
氏康の指摘に経蔵が顔をそらす。
それを見て少し笑った氏康だが、真顔に戻りライザに向き直す。
「あれが降って来た時は国にどれだけの被害が出るかと不安だったんだ。なぜあんな事を?」
「それについては、オイから説明させてくれ。さっきも謝ったが、本当にすまなかった。この星に人がすんでるとは思わなかったんだ」
「それはどういう事なんだ?」
氏康が聞き、ドォーリが続ける。
「オイたちは無人の星を探して、アペシュを放流して、鉱石を食べて成長したところを捕獲し、その鉱物を取り出し加工するっていう事を生業にしているんだ。あの時のこの星の調査は俺が担当だったんだが、人間的な反応が1万以下という調査結果だったから、文明は無いと判断したんだ」
「まあ、この国は今でも2000ちょっとしか住民はおらんしな」
ライザが質問する。
「この国はどういう国なんだ? どこかの星から避難でもしてきたのか?」
「この国はデュアルの報酬で得た」
「デュエル?」
氏康はライザたちにデュエルや国の成り立ちについて話した。
そしてライザは自分たちの身の上を話した、ある帝国に星を滅ぼされた事などを。
しばらく互いの事を話している中で氏康がある提案をした。
「どうだ、皆もこの国にいたらいいと思う。なんなら散り散りになった仲間たちもここに集めてもいいしな」
「氏康さん、ありがたい話だが帝国に目をつけられてる我々をかくまってもアンタには何も得は無いよ」
「かくまうんじゃない、共に住もうといっているんだ。この国の住民になってくれ」
「聞いてたかい? 帝国は星を滅ぼせる力があるんだよ」
「力で他国を侵略するなど言語道断だ。今は力は無いが、それに対抗する力を得てみせる。そのためにも力を貸してほしいのだよ、ライザ殿」
ライザは周りを見やる。
「おいおい、国のトップがそうは言っても、あんたたちはそれでいいのか? 爆弾を自分たちの腹に入れる様なもんだぞ?」
まずオルフェが答える。
「私は氏康について行くと決めたんだ。それに仲間が増える事はいい事だ」
続いてセンドリック。
「爆弾ってのは、どのみち来る可能性があるんだろう。なら、協力できる者同士協力するのは上策さ。そうは思わないかい」
村井のきあ。
「俺もこの国に来させてもらって日が浅いが、これだけは言える。この国の太陽と緑の大地は最高だよ。あんたたちも宇宙船の生活が長いだろ、さすがに宇宙船の生活は知らないけど、俺たちもわりと特異な状況で暮らしていたからね、ある程度はその気持ちはわかるもんだよ」
ライザは同席している父親のイォーリンと乗組員のドォーリの方を向く。
二人はただ静かにうなずいた。
「氏康さん。私らミスルの民は、あんたの国に厄介になるよ。そしてできる限りのサポートをさせてもらう」
「ありがたい」
氏康はライザと固い握手を交わした。
「そうだ、まず最初に。アペシュを殺すのはやめてくれ。殺してしまうと卵を産めないからな」
「あの鉄亀繁殖するのか?」
ライザたちは北村医師の検査の検査や住民登録などもろもろの手続きを済ませて、虎徹の工房の横に大きな建物を作りそこを自宅兼工房とすることとなった。
職人通し虎徹とライザたちはすぐに仲良くなった。
互いの技に驚き、さらに技術の意見交換も進んだ。
アペシュ・鉄亀も順次捕獲され、正しい手順で鉱物抜きをされ、卵の産卵を待つ状態となった。
更に経蔵の研究所もこの施設に隣接されて、赤獅子国の技術革新が進んだ。
経蔵にしてみれば、ライザたちの技術はオーパーツに近いが、その真面目さでみるみるうちに吸収していった。
そして、生活の利便性を高めるための研究と、氏康用のパワードスーツの開発を始めた。
氏康は機械を着る事をひどく嫌がったが、敵の力が強くなっている事を感じており、しぶしぶ了承した。
その際「サムライとは何なのかの」とだけつぶやいた。
新しい住民が増え、国が抱える一つ目の問題「鉄亀」はこうして解決した。
そして二つ目の問題が始まった。
突如として、大量の妖怪たちが空の裂け目より襲来したのだ。
だが、赤獅子国ではその襲来は予見されていた。
ミリアの予知夢により。
最近になりミリアの予知夢の精度が上がっていた。
昔はおぼろげな複数のビジョンだけだったが、そのビジョンが鮮明になり、その時期も比較的分かるようになっていたのだ。
これはミリアが好意を抱いている氏康と赤獅子国への危機を回避したいという思いからなる力の拡張であったが、本人はまだそれに気づいていない。
最初にそれに気づいたのは警ら中の陽炎だった。
ただちに通信機にて氏康に報告。
氏康は非常事態令を発し、戦力は集められた。
住民たちは緊急避難防空壕へと避難した。
あらかじめ予見されていた事態だっただけに、その対応は迅速に行なわれた。
村井のきあの話では、敵は日本幽国からの妖怪たち。数は少なとくとも1億は超えているとの事。
ライザたちが氏康に聞く。
「いつもこんな襲撃があるのかよ?」
「今回は過去最大規模だな。全く良い時にお主たちが仲間になってくれた」
「ひょっとして、私たち騙されたんじゃないだろうな」
「そうと、言えなくもないかもな」
氏康は笑って返した。ライザはまったくという顔をして仲間たちと戦いの準備に向かった。
結界師たち街を護る形で結界を形成。
赤獅子国の主力は以下だ。
国主東城氏康:燃える剣
黒龍ジンライ:雷撃
狼人族の女王オルフェ:鉄をも斬りさく爪
配下の狼人族20名(今回幼い者たちは後方支援となった)
超能力者センドリック:オーラ攻撃
忍者空牙陽炎:忍術
その配下の忍4名
鞍馬天狗村井のきあ:風の龍
河童のソウジュ:水鉄砲
天邪鬼のマガツ:刀
座敷童のボッコちゃん:大斧
カマイタチのイズナ:鎌
その他戦闘が可能な妖怪10匹
新しく加わったミスル人22名:パワードスーツ
赤翼隊7名:刀(新しく加わった25名は後方支援)
計72名
後方支援としては
テレパシー使い:セバスチャン
千里眼の使い手:ミリア
心読みの妖怪:覚のダイゴ
医者:北村栄次郎たち医療チーム
次元の裂け目を中心に100m四方の空間を結界にて作り
3隊が入れ替わり休みながら交代し戦う作戦で臨んだ。
チーム分けはあえて様々な種族をバラバラにした、同種だけだと対応できない敵が来た時戦えないから。
連携面での不安はあったが、長期戦なので戦いながらも編成を立て直す事をも視野に入れている。
氏康のチームには天邪鬼のマガツが参加していた。
二人は圧倒的な剣さばきでたくさんの妖怪をほふり続ける。
赤翼隊の邦一はその戦いを見て「あれには勝てんな」とつぶやいた。
戦いの中マガツが氏康に話しかけて来た。
「あんたが我らの総大将東城氏康殿か」
「のきあから聞いている。マガツ殿だね。てっきりのきあのチームに参加するのかと」
「あんたの戦いを間近で見たかったからね」
「それはどうして?」
「いつかあんたとやってみたいからだよ」
「なるほど。だが、そのためにも、この戦いを乗り越えんとな」
「全く、好きな事一つするのも難儀な世の中だ」
「それには同感だね」
「天邪鬼が同感と言われて喜ぶとでも?」
「聞いてるよ、天邪鬼とはいえとても心の綺麗な戦士だとね」
「まったく。のきあの旦那とも馴れ合いになってきちまったかな」
「とにかく、今はこやつらを殲滅する事だけだ!」
黒龍ジンライと河童のソウジュのチーム。
ジンライは巨大な龍の姿で雷柱を何本も立て妖怪たちを消していく。
「君が河童のソウジュだね」
「ジンライくんだね」
ソウジュは吹き矢の要領で水の球を発射する。
その威力は小さな木ならば貫通させられるほどだ。
ただし、戦いの中ではしゃべれないうえ、長時間戦う体力が無い。
「ソウジュは、最近街の皆にカワイイって評判みたいだね」
「それが?」
「この国のマスコットは僕なんだからね」
「マスコット? 聖獣って聞いたけど」
「聖獣だし、皆に愛されるマスコットなの!」
「別にオイラはマスコットなんか目指してない」
「嘘だ! ちょっとカワウソに似てるからって!」
「いや、カワウソという動物は知らないけど」
「ほら! カワウソが動物だってしってるじゃん!」
ジンライは数メートルの巨大な黒龍だが、基本中身は子供である。
これまでは住民に愛されるマスコットは自分だけだと思っていたが、この新しいカワウソ顔の妖怪が、住民に急上昇の人気を得ていると聞き焦っているのだ。
聖獣というのは人からの「感謝の気持ち」を受けて成長し力を得る。
日々、国への電力供給というこれ以上ない感謝の気持ちを受け取ってはいるものの、どうやらマスコット的な人気も必要だと勘違いしているのだ。そのため、最近になり、小さな男の子の姿に変身できるまでになった。
「絶対マスコットの座は渡さないからね!」
「いや、それはいらない……というか」
ソウジュは人気というか、子供たちにおもちゃにされるのが常である。顔を引っ張ったりして常に遊ばれている。
正直それが嫌だった。
マスコットになりたいジンライ、なりたくはないソウジュ。
二人の戦いは日常でこの後も続きそうである。
のきあの生み出した強大な風龍「つむじ」が妖怪たちを裂いていく。
オルフェが近づく。
「なんで前に国に来た時は実力を隠していた」
「戦いが無かったからな。それに、少しの間だけでも太陽を浴びて、好きな家作りが出来て戦いを忘れたかったのかもしれない」
「お前は戦士だ。戦っている姿を見ればわかる」
「いや、俺は宮大工だよオルフェさん」
「いつか手合わせをだぞ、のきあ。お前と戦えば私はもっと強くなれるはずだ」
「なんでそこまで力を求めるんだい?」
「簡単な話だ。一族を、そしてこの国の皆を護るためだ」
「素敵だね、そのまっすぐさ」
「お前も国の代表だったんだろうが」
「俺は結界村の代表ってだけだったのさ。それに、俺はすぐに皆を逃がす事を考える」
「だが今は戦っているではないか」
「まあ正直ここを失うと皆の生きる場所が無いからね。連れて来た以上責任を持って守らないと」
「ふ、やはりお前は戦士だ」
「もうしつこいねオルフェさんは。さ、さっさと片づけて街づくりの続きをしないとね」
「ふふ、そういう事にしといてやろう」
オルフェは跳び妖怪たちを一閃した。
数時間の戦いにより妖怪たちの数も残り数万というところまでになった。
しかしここからは敵も実力のある戦力を投入してくる。
戦う前のヒアリングで要注意しておくべき妖怪は皆に知らされている。
しかし目的はただ一つ。
総大将ぬらりひょんの邪凶と討つ事。
頭を叩いてしまえば怖いものは無い。
そのためには乗り越えなければならないハードルがいくつもあった。
一方、日本幽国。
ある城の天守閣。
そこに妖怪総大将の邪凶がいた。
遣い烏の第一報を聞き愕然とする。
こちらは奇襲で、圧倒的な大群である。
どれほどの地域を占拠したのかを聞きたかったのに、まだ100メートル四方から出る事さえできていないという。
「おのれあのリビアナとかいう奴にはばかれたのか?」
「まだ始まったばかりではりませんか、邪凶様」
姿を現したのは玉藻の前と呼ばれる妖狐。
「しかし、悪戯に戦力を削られるのもおもしくはありませんわよね」
「何か考えがあるのか?」
「弱っている鼠数匹相手ですが、『窮鼠猫を嚙む』なんて言葉もございます。一気に叩きつぶすのが得策かと」
「輪入道、牛鬼、蛟、七人ミサキ、祟り神あたりを投入するか」
「鵺も暴れたそうにしておりましたよ」
「よし、出し惜しみは無しじゃ、一気に落とすぞ。赤獅子国をその名の通り、血の赤で染めてやろうではないか!」
地上からかなりの高さの空に、妖怪たちが出てくるのとは別の次元の裂け目があり、そこからウサギ耳の少女が戦いの様子を見下ろしている。
「赤獅子国、中々どうしてタレントがそれっていますね。この戦力ならば旧ドイツ軍あたりとでもいい戦いが出来そうですね。これは是非とも戦い抜いてもらい、私の次のプレゼントを受け取ってもらわなくては。楽しみですわね。ゾクゾクしますわ」
ミリアが叫ぶ。
「強大な敵が迫ってきます! 皆さん気をつけてください!」
その声をセバスチャンがテレパシーを使い皆に共有する。
「ここからが正念場だ!」
氏康の撃も伝播させる。
皆が気合をあげる。
空の切れ目から明らかにこれまでの妖怪たちとは風格が違う者たちが現れた。
輪入道:巨大な車輪で炎をまとう
牛鬼:巨大な蜘蛛で頭は鬼
蛟:邪悪なる水龍
七人ミサキ:七人の武芸家が死後霊となった姿。七体全て違う武器を使う
赤鬼:怪力を誇る鬼
青鬼:最速を誇る鬼
祟り神:禍々しい気にさらされ自我を失った九十九の神の成れの果て
鵺:猿の顔、虎の身体、尾は蛇という妖獣
のきあから共有されていた要注意妖怪のほぼ全てが一気に投入された。
戦う相手も既に決まっている。
輪入道は氏康
牛鬼は陽炎と配下の忍びたち
蛟はジンライ
七人ミサキは赤翼隊7人
赤鬼はマガツ
青鬼はソウジュ
祟り神はセンドリック
そして鵺はオルフェ
それぞれが一斉に戦闘に入る。
実は氏康たちには作戦があった。
敵は猛攻が上手くいかずに痺れを切らすだろう、そして要注意妖怪たちを投入してくるだろう。
そのタイミングで逆に攻めに出る。
のきあが単身、敵の総大将の邪凶を討ちに行くというものだ。
次元の裂け目に突入する前に氏康のところに寄って声をかける。
「俺のわがままな作戦ですまん」
「自国の決着をその手でつけたいと思うのは当たり前だ。こちらは何とかしておくから、しっかりと討って来てくれ」
「ああ、この命に代えても」
「それはダメだ。必ず生きて帰るんだ。この国ではまだ葬式は無い。まだ、させないでくれよ」
「分かったよ。まったく氏康は時々無茶な事を言うよな。まあ、それが国の代表っぽいけどな」
二人は拳を合わせる。
そして、のきあは風をまとい姿を消し次元の裂け目に乗り込んだ。
のきあは覚のダイゴが敵の心を読み邪凶の本拠地を特定してもらっていた。
「全く、妖怪が人間の城になんているんじゃねーよ。それを言うと氏康のところに住まわせてもらってる俺も人の事は言えないか」
風龍の力で城に向かい一直線に飛んでいる。
あと少しというところで、突然風の一部が燃え始めた。
「ヒットですわ!」
のきあ火を消し、風の翼を背にまとい体勢を建て直した。
目の前には玉藻の前がいた。
「城の周りには、私の狐火の鳴子を用意しておりましたの。これは思わぬ大物が釣れてしまいましたね」
「大将の護衛かい、お狐さん」
「いいえ、交渉に参りましたの」
「交渉?」
「私をかの国、赤獅子国の一員にさせてもらえませんでしょうか?」
「目が開いてても寝言ってのは言えるらしいね」
「交換条件は邪凶の首と次元の裂け目を閉じる事、ではいかがでしょうか?」
「あんたら妖狐は、人間たちの村に騙し入り、それらを壊滅させていった。それを踏まえた上で、あんたを信用しろというのかい?」
「あれは、死活問題だったので仕方なくですわ。それに実力のある妖怪を一気にそちらに送り込んだのも、私の助言の結果です」
「どういう事だ?」
「おそらく、最後は特攻覚悟、玉砕覚悟でこちらに乗り組んでくると思っておりました。しかし体力が尽きた後では、それはかないません。なので、序盤、体力があるうちにそちらの戦力で、こちらの主力を削ってもらおうという作戦です。そうなれば、特攻も成功しやすいのではありまえせか?」
「どうして邪凶を裏切る」
「裏切る? これは違います。私は常に優勢の側です」
「こちらが優勢だと? 戦況は五分五分だと思うが」
「カマかけの必要はございません。実は私、『くだん』の言葉を聞いていますの」
「あの予言の人面牛・くだんか?」
「はい、彼が言うには、彼女だったのかしら? まあいいわ。私の未来は獅子と天狗とあるそうです。残念な事に、この国にはもう天狗様も元々獅子もありません」
「お前を赤獅子国に入れて、住民に危害が加わらない保証は?」
「なんなら『霊符』を張っていただいてもかまいませんわよ」
「どうやら、本気みたいだな」
「ええ、私も命がかかってますので」
「国に帰って、氏康がどんな判断をするかは補償できない」
「少なくともあなたの補償がいただければ参りますわ」
「分かった。それが最善らしい」
「では握手」
「妖狐の手など怖くて触れるか、これが握手の代わりだ」
のきあは小さな礫を玉藻の前に放った。
「あいたっ!」
「その痛みと共に、殺されていった人間たちの事を忘れるな」
「はいはい、分かっていますとも。さ、商談成立。参りましょう」
再び赤獅子国。
主力同士の戦いもほぼ決着がついている。
残すは赤翼隊と七人ミサキの戦いを残すのみ。
他のメンバーは既に勝利をしているが、あえて手を出さず勝負の行き先を見守りながら雑魚妖怪たちを片づけている。
赤翼の最年少の淡次郎が鎖鎌を持つ相手と対峙している。
独特の間合いに、スピード自慢の淡次郎といえぞ飛び込めず苦戦を強いられている。
更に胴体にいくら刀を通してもダメージを与えている実感が無い。
体力がほぼ尽きており、いくつもの傷を受け、徐々に死期を感じ始める、それと共に淡次郎は集中力が極限にまで高まっていた。
「淡次郎も大丈夫そうだね」
「ええ、やっと周りが見え始めたみたいね」
既に勝利している巴と累が、雑魚妖怪の掃除をしながら話している。
淡次郎は周りを見渡す。今まではそんな余裕すらなかった。
「あー、もう他の隊の人たちも全員終わってる。どうやってこれに勝つっての、斬っても斬っても手ごたえないし。ってあれ、みんな、敵の武器粉々に……。あー、うそ。そんな単純な事なの?」
淡次郎は覚悟を決めて正面に刀を構える。
そこに鎖鎌が飛んでくる。
紙一重でそれを交わし、しゃがみ込み、鎖に刀を巻き取らせた。
そのまま鎌の部分を近くの岩に向かって叩きつける。
鎌にはヒビが入る。
鎖から自分の刀を引き抜き、息を吸い、止めて。
数十とおう連打を鎌に打ち込んだ。
そして鎌は砕け、相手の霊も姿を消した。
それからしばらく時間が経った時、次元の裂け目からのきあが戻って来た。
見知らぬ女性を一人連れ添っている。
のきあが叫ぶ。
「やれ、狐!」
「全く失礼な呼び方ですこと」
すると、狐と呼ばれた女性は刀を取り出し、おもむろに手刀でそれを叩き割った。
それと同時に次元の裂け目がみるみると閉じていった。
「氏康! 今いる妖怪を全て片付ければ俺たちの勝利だ!」
「任せておけ! 緋閃村正【紅蓮の型】!」
氏康の刀が炎に包まれ、その炎が弧を描き、最後の妖怪たちが燃え斬れた。
玉藻の前の周りを、死闘を終えた日本幽国出身の妖怪たちが取り囲んだ。
「のきあ、これはどういう事だ?」
マガツが二刀を玉藻の前に向けて尋ねる。
「勝利の代償ってやつだよ。こいつがいなかったら俺たちは勝てなかった」
「だからって、こいつが人間たちにした事をわすれたのかよ」
ソウジュが言う。
「分かってる。だが最後は氏康に決めてもらう」
この戦いは俺たちがこの国に持ち込んじまったものだからな。
氏康が近づいてくる。
「のきあ、敵の大将は」
「ああ、この手で決着をつけて来た。今回は俺たちの国が迷惑をかけちまったな」
「いや、それはいいんだが。そちらの御仁は?」
「それについて、氏康に相談があるんだが?」
のきあは、この玉藻の前の事を説明した。これまでどれだけの人間を殺してきたか、そしてこの戦いは力を借りなければ終結させられなかった事。
「のきあはどうしたいんだ?」
「約束をした手前、それを守りたい」
「ではそうしよう。玉藻の前殿、こらからはあなたもこの国の住民だ」
「え? あんた、のきあの説明は聞いていたの?」
「ああ、でも、仲間がそう望むんだ。信頼して任せるべきだろう」
「はー、この国大丈夫なの?」
当の玉藻の前があきれている。
「しっかりとした仲間がたくさんいる。大丈夫だ」
氏康は笑って返した。
その笑顔に玉藻の前の毒気もすっかり抜かれてしまった。
「いいわ、約束しましょう。この国に迷惑はかけない様に務めるわ」
「ああ、よろしくな」
こうして、鉄亀の問題と妖怪の大襲撃は解決した。
ミルス人という頼もしい新たな仲間と、玉藻の前という油断ならない妖怪も得て。
空の彼方。
リビアナが頬杖をついている。
「今回は少し消化不良でしたわね。次は数国組み合わせて襲わせてみようかしら。一体どこまで頑張れるかしらね。フフフッ」
そして、リビアナは次元の裂け目と共に消えた。
赤獅子国ー国難脱却
住民
人間:2227人(Increase)
狼人:35人
妖怪:56人(Increase)
ミスル人:22人(New)
龍:1頭
人間内訳(一部):侍、超能力者、忍者
防衛隊・赤翼隊:32人(Increase)
季節は夏に差し掛かっていた。
赤獅子国の国土は数度のデュエルで、日本でいうところの関東と東北を合わせたほどの大きさになっていた。
人口も2000人を超え、城下町は中々の規模になっており、文化レベルも大分上がってきている。
最近になり他の星や、他の次元からの襲撃が増えて来たので、街の周りを城壁で覆い始めた。
今国として抱えている問題は二つ。
宇宙から飛来した鉄亀の駆除。
そして、もう一つは後程説明する。
鉄亀。詳しい生態は不明だが、どうやら地中の鉱物を食べ成長するらしく、最近見つかる物はとても大きく成長している。
また一匹現れたとの連絡を受けて氏康とオルフェ、回収係りの経蔵はそちらに向かった。
「これはまた大きく育ったもんだな」
「今日は私の番だからな、氏康手出しはするなよ」
「分かっている」
「おーし、今日は綺麗に三枚におろしてやる」
その時、宇宙から一隻の宇宙船が飛来してきた。
同時にその宇宙船から大きな怒鳴り声が発せられた。
「てめーら! 私たちのアペシュを横取りしようだなんていい度胸じゃねーか!」
どうやらしゃべっているのは女の様だった。
「なんだ? 氏康あれ知ってるか?」
「いや知らん あぺしゅってなんだ?」
「この鉄亀の事かもしれませんね」
経蔵が二人に言う。
オルフェは宇宙船の方に歩き大きな声で言った。
「人の国に来て、何勝手な事言ってんだ! 何者だお前は!」
すると宇宙船から大型のパワードスーツが出て来た。手には大きな斧らしき武器を持っている。
「国だ? 何言ってんだ、ここには国なんかないだろう! そんな事よりアペシュの反応が少ないのは、お前たちが狩っていたのが原因か。この泥棒猫が!」
「猫じゃない! 私は狼の女王だ!」
「猫は言葉のあやです」
経蔵が静かに突っ込む。
「泥棒なんざ私がひねってやるよ!」
そのパワードスーツは斧を大きく振りかぶって来た。中々のスピードだ。
しかしオルフェのスピードには敵わない。
一瞬でそのパワードスーツの背中に回った。
「そんな大きいのを着てるから動きが鈍いんだよ!」
オルフェの蹴りが炸裂し、パワードスーツは大きく吹っ飛ぶ。
バックパックと足元のブースターで体勢を整える。
パワードスーツが何度攻撃を試みても同じように避けられ蹴り飛ばされる。
「おのれネズミの様にちょこまかと」
「だから! 私はネズミじゃないくて狼の女王だ!」
「捕まえてしまえば、こんな小娘粉砕してくれるものを!」
「良いだろう、力比べにつきやってやる木偶人形」
オルフェはそのパワードスーツの手をがっちりと組んだ。
「やってみろ」
「なめるな!」
パワードスーツはフルパワーでオルフェを振り回そうとするがびくともしない。
「ば、馬鹿な!」
「こんなものか。氏康、そろそろ飽きたから仕留めていいか?」
「殺しちゃだめだぞ。色々聞きたい事もあるしな」
オルフェはそれに笑って返す。
そして、鉄をも斬りさく爪を出し、パワードスーツを斬りさく。
「なんなんだこのパワーとスピードは? どこの星の連中だ……」
そのパワードスーツは動かなくなり、中の人間が排出された。
それはちょっと大柄な女性だった。
城の一角。
病院となっている建物。
パワードスーツに乗っていた女性はベットの上で目を覚ました。
「ここは?」
「目が覚めましたか、ここは病院です。赤獅子国の」
見回りに来た看護師のミリアが笑顔でそれに答えた。
「起きたか! ライザ!」
「ん、オヤジ。それにみんなも」
周りには宇宙船の乗組員がいた。
残りは別部屋にいるらしい。
「じゃあ、私は氏康様に伝えてきますね。ちょっと待っていてください」
そう言ってミリアは部屋から出て行った。
「どーゆー事なんだい、オヤジ」
「どうやら、悪いのは俺たちだったみたいだぞ、ライザ」
「え?」
少し経ち、陽炎が部屋にやって来た。
「皆さん、城主がお待ちです。代表の方は天守までいらしてください」
3人が陽炎に着いて天守閣まで来た。
「すっかり回復したみたいだな」
そこには氏康をはじめ、オルフェ、センドリック、ミリア、村井のきあなど数人がいた。
「自己紹介からだな、俺はこの国の代表を務めている東城氏康だ」
「わ、私はライザ・ガルムシルド。流れで鍛冶職人をしている旅団のリーダーだ」
突然一人の男が土下座をした。ドォーリという名前だそうだ。
「すまなかった、氏康どん。この星には人がすんでるだなんて知らなかったんだ」
「ああ、その事もそうなんだが、状況を説明してくれないか。あの鉄亀はなんなのかなどな」
「鉄亀?」
「あの鉄を食べる変な生き物」
「ああ、アペシュの事か」
「国民が食われないか気が気でなくてな。常に監視体制だ」
「? アペシュは人は食わんぞ」
「え? でも我らの経蔵は人間にも鉄分があるって」
「人間の鉄分の量がどれほどだって話だよ、微々たる量を得るためにアペシュは人は襲わない。効率が悪いからな」
「な、なんじゃそうだったのか。だそうだぞ、経蔵?」
「私だって、『食べられる危険性がある』って指摘したにすぎません」
氏康の指摘に経蔵が顔をそらす。
それを見て少し笑った氏康だが、真顔に戻りライザに向き直す。
「あれが降って来た時は国にどれだけの被害が出るかと不安だったんだ。なぜあんな事を?」
「それについては、オイから説明させてくれ。さっきも謝ったが、本当にすまなかった。この星に人がすんでるとは思わなかったんだ」
「それはどういう事なんだ?」
氏康が聞き、ドォーリが続ける。
「オイたちは無人の星を探して、アペシュを放流して、鉱石を食べて成長したところを捕獲し、その鉱物を取り出し加工するっていう事を生業にしているんだ。あの時のこの星の調査は俺が担当だったんだが、人間的な反応が1万以下という調査結果だったから、文明は無いと判断したんだ」
「まあ、この国は今でも2000ちょっとしか住民はおらんしな」
ライザが質問する。
「この国はどういう国なんだ? どこかの星から避難でもしてきたのか?」
「この国はデュアルの報酬で得た」
「デュエル?」
氏康はライザたちにデュエルや国の成り立ちについて話した。
そしてライザは自分たちの身の上を話した、ある帝国に星を滅ぼされた事などを。
しばらく互いの事を話している中で氏康がある提案をした。
「どうだ、皆もこの国にいたらいいと思う。なんなら散り散りになった仲間たちもここに集めてもいいしな」
「氏康さん、ありがたい話だが帝国に目をつけられてる我々をかくまってもアンタには何も得は無いよ」
「かくまうんじゃない、共に住もうといっているんだ。この国の住民になってくれ」
「聞いてたかい? 帝国は星を滅ぼせる力があるんだよ」
「力で他国を侵略するなど言語道断だ。今は力は無いが、それに対抗する力を得てみせる。そのためにも力を貸してほしいのだよ、ライザ殿」
ライザは周りを見やる。
「おいおい、国のトップがそうは言っても、あんたたちはそれでいいのか? 爆弾を自分たちの腹に入れる様なもんだぞ?」
まずオルフェが答える。
「私は氏康について行くと決めたんだ。それに仲間が増える事はいい事だ」
続いてセンドリック。
「爆弾ってのは、どのみち来る可能性があるんだろう。なら、協力できる者同士協力するのは上策さ。そうは思わないかい」
村井のきあ。
「俺もこの国に来させてもらって日が浅いが、これだけは言える。この国の太陽と緑の大地は最高だよ。あんたたちも宇宙船の生活が長いだろ、さすがに宇宙船の生活は知らないけど、俺たちもわりと特異な状況で暮らしていたからね、ある程度はその気持ちはわかるもんだよ」
ライザは同席している父親のイォーリンと乗組員のドォーリの方を向く。
二人はただ静かにうなずいた。
「氏康さん。私らミスルの民は、あんたの国に厄介になるよ。そしてできる限りのサポートをさせてもらう」
「ありがたい」
氏康はライザと固い握手を交わした。
「そうだ、まず最初に。アペシュを殺すのはやめてくれ。殺してしまうと卵を産めないからな」
「あの鉄亀繁殖するのか?」
ライザたちは北村医師の検査の検査や住民登録などもろもろの手続きを済ませて、虎徹の工房の横に大きな建物を作りそこを自宅兼工房とすることとなった。
職人通し虎徹とライザたちはすぐに仲良くなった。
互いの技に驚き、さらに技術の意見交換も進んだ。
アペシュ・鉄亀も順次捕獲され、正しい手順で鉱物抜きをされ、卵の産卵を待つ状態となった。
更に経蔵の研究所もこの施設に隣接されて、赤獅子国の技術革新が進んだ。
経蔵にしてみれば、ライザたちの技術はオーパーツに近いが、その真面目さでみるみるうちに吸収していった。
そして、生活の利便性を高めるための研究と、氏康用のパワードスーツの開発を始めた。
氏康は機械を着る事をひどく嫌がったが、敵の力が強くなっている事を感じており、しぶしぶ了承した。
その際「サムライとは何なのかの」とだけつぶやいた。
新しい住民が増え、国が抱える一つ目の問題「鉄亀」はこうして解決した。
そして二つ目の問題が始まった。
突如として、大量の妖怪たちが空の裂け目より襲来したのだ。
だが、赤獅子国ではその襲来は予見されていた。
ミリアの予知夢により。
最近になりミリアの予知夢の精度が上がっていた。
昔はおぼろげな複数のビジョンだけだったが、そのビジョンが鮮明になり、その時期も比較的分かるようになっていたのだ。
これはミリアが好意を抱いている氏康と赤獅子国への危機を回避したいという思いからなる力の拡張であったが、本人はまだそれに気づいていない。
最初にそれに気づいたのは警ら中の陽炎だった。
ただちに通信機にて氏康に報告。
氏康は非常事態令を発し、戦力は集められた。
住民たちは緊急避難防空壕へと避難した。
あらかじめ予見されていた事態だっただけに、その対応は迅速に行なわれた。
村井のきあの話では、敵は日本幽国からの妖怪たち。数は少なとくとも1億は超えているとの事。
ライザたちが氏康に聞く。
「いつもこんな襲撃があるのかよ?」
「今回は過去最大規模だな。全く良い時にお主たちが仲間になってくれた」
「ひょっとして、私たち騙されたんじゃないだろうな」
「そうと、言えなくもないかもな」
氏康は笑って返した。ライザはまったくという顔をして仲間たちと戦いの準備に向かった。
結界師たち街を護る形で結界を形成。
赤獅子国の主力は以下だ。
国主東城氏康:燃える剣
黒龍ジンライ:雷撃
狼人族の女王オルフェ:鉄をも斬りさく爪
配下の狼人族20名(今回幼い者たちは後方支援となった)
超能力者センドリック:オーラ攻撃
忍者空牙陽炎:忍術
その配下の忍4名
鞍馬天狗村井のきあ:風の龍
河童のソウジュ:水鉄砲
天邪鬼のマガツ:刀
座敷童のボッコちゃん:大斧
カマイタチのイズナ:鎌
その他戦闘が可能な妖怪10匹
新しく加わったミスル人22名:パワードスーツ
赤翼隊7名:刀(新しく加わった25名は後方支援)
計72名
後方支援としては
テレパシー使い:セバスチャン
千里眼の使い手:ミリア
心読みの妖怪:覚のダイゴ
医者:北村栄次郎たち医療チーム
次元の裂け目を中心に100m四方の空間を結界にて作り
3隊が入れ替わり休みながら交代し戦う作戦で臨んだ。
チーム分けはあえて様々な種族をバラバラにした、同種だけだと対応できない敵が来た時戦えないから。
連携面での不安はあったが、長期戦なので戦いながらも編成を立て直す事をも視野に入れている。
氏康のチームには天邪鬼のマガツが参加していた。
二人は圧倒的な剣さばきでたくさんの妖怪をほふり続ける。
赤翼隊の邦一はその戦いを見て「あれには勝てんな」とつぶやいた。
戦いの中マガツが氏康に話しかけて来た。
「あんたが我らの総大将東城氏康殿か」
「のきあから聞いている。マガツ殿だね。てっきりのきあのチームに参加するのかと」
「あんたの戦いを間近で見たかったからね」
「それはどうして?」
「いつかあんたとやってみたいからだよ」
「なるほど。だが、そのためにも、この戦いを乗り越えんとな」
「全く、好きな事一つするのも難儀な世の中だ」
「それには同感だね」
「天邪鬼が同感と言われて喜ぶとでも?」
「聞いてるよ、天邪鬼とはいえとても心の綺麗な戦士だとね」
「まったく。のきあの旦那とも馴れ合いになってきちまったかな」
「とにかく、今はこやつらを殲滅する事だけだ!」
黒龍ジンライと河童のソウジュのチーム。
ジンライは巨大な龍の姿で雷柱を何本も立て妖怪たちを消していく。
「君が河童のソウジュだね」
「ジンライくんだね」
ソウジュは吹き矢の要領で水の球を発射する。
その威力は小さな木ならば貫通させられるほどだ。
ただし、戦いの中ではしゃべれないうえ、長時間戦う体力が無い。
「ソウジュは、最近街の皆にカワイイって評判みたいだね」
「それが?」
「この国のマスコットは僕なんだからね」
「マスコット? 聖獣って聞いたけど」
「聖獣だし、皆に愛されるマスコットなの!」
「別にオイラはマスコットなんか目指してない」
「嘘だ! ちょっとカワウソに似てるからって!」
「いや、カワウソという動物は知らないけど」
「ほら! カワウソが動物だってしってるじゃん!」
ジンライは数メートルの巨大な黒龍だが、基本中身は子供である。
これまでは住民に愛されるマスコットは自分だけだと思っていたが、この新しいカワウソ顔の妖怪が、住民に急上昇の人気を得ていると聞き焦っているのだ。
聖獣というのは人からの「感謝の気持ち」を受けて成長し力を得る。
日々、国への電力供給というこれ以上ない感謝の気持ちを受け取ってはいるものの、どうやらマスコット的な人気も必要だと勘違いしているのだ。そのため、最近になり、小さな男の子の姿に変身できるまでになった。
「絶対マスコットの座は渡さないからね!」
「いや、それはいらない……というか」
ソウジュは人気というか、子供たちにおもちゃにされるのが常である。顔を引っ張ったりして常に遊ばれている。
正直それが嫌だった。
マスコットになりたいジンライ、なりたくはないソウジュ。
二人の戦いは日常でこの後も続きそうである。
のきあの生み出した強大な風龍「つむじ」が妖怪たちを裂いていく。
オルフェが近づく。
「なんで前に国に来た時は実力を隠していた」
「戦いが無かったからな。それに、少しの間だけでも太陽を浴びて、好きな家作りが出来て戦いを忘れたかったのかもしれない」
「お前は戦士だ。戦っている姿を見ればわかる」
「いや、俺は宮大工だよオルフェさん」
「いつか手合わせをだぞ、のきあ。お前と戦えば私はもっと強くなれるはずだ」
「なんでそこまで力を求めるんだい?」
「簡単な話だ。一族を、そしてこの国の皆を護るためだ」
「素敵だね、そのまっすぐさ」
「お前も国の代表だったんだろうが」
「俺は結界村の代表ってだけだったのさ。それに、俺はすぐに皆を逃がす事を考える」
「だが今は戦っているではないか」
「まあ正直ここを失うと皆の生きる場所が無いからね。連れて来た以上責任を持って守らないと」
「ふ、やはりお前は戦士だ」
「もうしつこいねオルフェさんは。さ、さっさと片づけて街づくりの続きをしないとね」
「ふふ、そういう事にしといてやろう」
オルフェは跳び妖怪たちを一閃した。
数時間の戦いにより妖怪たちの数も残り数万というところまでになった。
しかしここからは敵も実力のある戦力を投入してくる。
戦う前のヒアリングで要注意しておくべき妖怪は皆に知らされている。
しかし目的はただ一つ。
総大将ぬらりひょんの邪凶と討つ事。
頭を叩いてしまえば怖いものは無い。
そのためには乗り越えなければならないハードルがいくつもあった。
一方、日本幽国。
ある城の天守閣。
そこに妖怪総大将の邪凶がいた。
遣い烏の第一報を聞き愕然とする。
こちらは奇襲で、圧倒的な大群である。
どれほどの地域を占拠したのかを聞きたかったのに、まだ100メートル四方から出る事さえできていないという。
「おのれあのリビアナとかいう奴にはばかれたのか?」
「まだ始まったばかりではりませんか、邪凶様」
姿を現したのは玉藻の前と呼ばれる妖狐。
「しかし、悪戯に戦力を削られるのもおもしくはありませんわよね」
「何か考えがあるのか?」
「弱っている鼠数匹相手ですが、『窮鼠猫を嚙む』なんて言葉もございます。一気に叩きつぶすのが得策かと」
「輪入道、牛鬼、蛟、七人ミサキ、祟り神あたりを投入するか」
「鵺も暴れたそうにしておりましたよ」
「よし、出し惜しみは無しじゃ、一気に落とすぞ。赤獅子国をその名の通り、血の赤で染めてやろうではないか!」
地上からかなりの高さの空に、妖怪たちが出てくるのとは別の次元の裂け目があり、そこからウサギ耳の少女が戦いの様子を見下ろしている。
「赤獅子国、中々どうしてタレントがそれっていますね。この戦力ならば旧ドイツ軍あたりとでもいい戦いが出来そうですね。これは是非とも戦い抜いてもらい、私の次のプレゼントを受け取ってもらわなくては。楽しみですわね。ゾクゾクしますわ」
ミリアが叫ぶ。
「強大な敵が迫ってきます! 皆さん気をつけてください!」
その声をセバスチャンがテレパシーを使い皆に共有する。
「ここからが正念場だ!」
氏康の撃も伝播させる。
皆が気合をあげる。
空の切れ目から明らかにこれまでの妖怪たちとは風格が違う者たちが現れた。
輪入道:巨大な車輪で炎をまとう
牛鬼:巨大な蜘蛛で頭は鬼
蛟:邪悪なる水龍
七人ミサキ:七人の武芸家が死後霊となった姿。七体全て違う武器を使う
赤鬼:怪力を誇る鬼
青鬼:最速を誇る鬼
祟り神:禍々しい気にさらされ自我を失った九十九の神の成れの果て
鵺:猿の顔、虎の身体、尾は蛇という妖獣
のきあから共有されていた要注意妖怪のほぼ全てが一気に投入された。
戦う相手も既に決まっている。
輪入道は氏康
牛鬼は陽炎と配下の忍びたち
蛟はジンライ
七人ミサキは赤翼隊7人
赤鬼はマガツ
青鬼はソウジュ
祟り神はセンドリック
そして鵺はオルフェ
それぞれが一斉に戦闘に入る。
実は氏康たちには作戦があった。
敵は猛攻が上手くいかずに痺れを切らすだろう、そして要注意妖怪たちを投入してくるだろう。
そのタイミングで逆に攻めに出る。
のきあが単身、敵の総大将の邪凶を討ちに行くというものだ。
次元の裂け目に突入する前に氏康のところに寄って声をかける。
「俺のわがままな作戦ですまん」
「自国の決着をその手でつけたいと思うのは当たり前だ。こちらは何とかしておくから、しっかりと討って来てくれ」
「ああ、この命に代えても」
「それはダメだ。必ず生きて帰るんだ。この国ではまだ葬式は無い。まだ、させないでくれよ」
「分かったよ。まったく氏康は時々無茶な事を言うよな。まあ、それが国の代表っぽいけどな」
二人は拳を合わせる。
そして、のきあは風をまとい姿を消し次元の裂け目に乗り込んだ。
のきあは覚のダイゴが敵の心を読み邪凶の本拠地を特定してもらっていた。
「全く、妖怪が人間の城になんているんじゃねーよ。それを言うと氏康のところに住まわせてもらってる俺も人の事は言えないか」
風龍の力で城に向かい一直線に飛んでいる。
あと少しというところで、突然風の一部が燃え始めた。
「ヒットですわ!」
のきあ火を消し、風の翼を背にまとい体勢を建て直した。
目の前には玉藻の前がいた。
「城の周りには、私の狐火の鳴子を用意しておりましたの。これは思わぬ大物が釣れてしまいましたね」
「大将の護衛かい、お狐さん」
「いいえ、交渉に参りましたの」
「交渉?」
「私をかの国、赤獅子国の一員にさせてもらえませんでしょうか?」
「目が開いてても寝言ってのは言えるらしいね」
「交換条件は邪凶の首と次元の裂け目を閉じる事、ではいかがでしょうか?」
「あんたら妖狐は、人間たちの村に騙し入り、それらを壊滅させていった。それを踏まえた上で、あんたを信用しろというのかい?」
「あれは、死活問題だったので仕方なくですわ。それに実力のある妖怪を一気にそちらに送り込んだのも、私の助言の結果です」
「どういう事だ?」
「おそらく、最後は特攻覚悟、玉砕覚悟でこちらに乗り組んでくると思っておりました。しかし体力が尽きた後では、それはかないません。なので、序盤、体力があるうちにそちらの戦力で、こちらの主力を削ってもらおうという作戦です。そうなれば、特攻も成功しやすいのではありまえせか?」
「どうして邪凶を裏切る」
「裏切る? これは違います。私は常に優勢の側です」
「こちらが優勢だと? 戦況は五分五分だと思うが」
「カマかけの必要はございません。実は私、『くだん』の言葉を聞いていますの」
「あの予言の人面牛・くだんか?」
「はい、彼が言うには、彼女だったのかしら? まあいいわ。私の未来は獅子と天狗とあるそうです。残念な事に、この国にはもう天狗様も元々獅子もありません」
「お前を赤獅子国に入れて、住民に危害が加わらない保証は?」
「なんなら『霊符』を張っていただいてもかまいませんわよ」
「どうやら、本気みたいだな」
「ええ、私も命がかかってますので」
「国に帰って、氏康がどんな判断をするかは補償できない」
「少なくともあなたの補償がいただければ参りますわ」
「分かった。それが最善らしい」
「では握手」
「妖狐の手など怖くて触れるか、これが握手の代わりだ」
のきあは小さな礫を玉藻の前に放った。
「あいたっ!」
「その痛みと共に、殺されていった人間たちの事を忘れるな」
「はいはい、分かっていますとも。さ、商談成立。参りましょう」
再び赤獅子国。
主力同士の戦いもほぼ決着がついている。
残すは赤翼隊と七人ミサキの戦いを残すのみ。
他のメンバーは既に勝利をしているが、あえて手を出さず勝負の行き先を見守りながら雑魚妖怪たちを片づけている。
赤翼の最年少の淡次郎が鎖鎌を持つ相手と対峙している。
独特の間合いに、スピード自慢の淡次郎といえぞ飛び込めず苦戦を強いられている。
更に胴体にいくら刀を通してもダメージを与えている実感が無い。
体力がほぼ尽きており、いくつもの傷を受け、徐々に死期を感じ始める、それと共に淡次郎は集中力が極限にまで高まっていた。
「淡次郎も大丈夫そうだね」
「ええ、やっと周りが見え始めたみたいね」
既に勝利している巴と累が、雑魚妖怪の掃除をしながら話している。
淡次郎は周りを見渡す。今まではそんな余裕すらなかった。
「あー、もう他の隊の人たちも全員終わってる。どうやってこれに勝つっての、斬っても斬っても手ごたえないし。ってあれ、みんな、敵の武器粉々に……。あー、うそ。そんな単純な事なの?」
淡次郎は覚悟を決めて正面に刀を構える。
そこに鎖鎌が飛んでくる。
紙一重でそれを交わし、しゃがみ込み、鎖に刀を巻き取らせた。
そのまま鎌の部分を近くの岩に向かって叩きつける。
鎌にはヒビが入る。
鎖から自分の刀を引き抜き、息を吸い、止めて。
数十とおう連打を鎌に打ち込んだ。
そして鎌は砕け、相手の霊も姿を消した。
それからしばらく時間が経った時、次元の裂け目からのきあが戻って来た。
見知らぬ女性を一人連れ添っている。
のきあが叫ぶ。
「やれ、狐!」
「全く失礼な呼び方ですこと」
すると、狐と呼ばれた女性は刀を取り出し、おもむろに手刀でそれを叩き割った。
それと同時に次元の裂け目がみるみると閉じていった。
「氏康! 今いる妖怪を全て片付ければ俺たちの勝利だ!」
「任せておけ! 緋閃村正【紅蓮の型】!」
氏康の刀が炎に包まれ、その炎が弧を描き、最後の妖怪たちが燃え斬れた。
玉藻の前の周りを、死闘を終えた日本幽国出身の妖怪たちが取り囲んだ。
「のきあ、これはどういう事だ?」
マガツが二刀を玉藻の前に向けて尋ねる。
「勝利の代償ってやつだよ。こいつがいなかったら俺たちは勝てなかった」
「だからって、こいつが人間たちにした事をわすれたのかよ」
ソウジュが言う。
「分かってる。だが最後は氏康に決めてもらう」
この戦いは俺たちがこの国に持ち込んじまったものだからな。
氏康が近づいてくる。
「のきあ、敵の大将は」
「ああ、この手で決着をつけて来た。今回は俺たちの国が迷惑をかけちまったな」
「いや、それはいいんだが。そちらの御仁は?」
「それについて、氏康に相談があるんだが?」
のきあは、この玉藻の前の事を説明した。これまでどれだけの人間を殺してきたか、そしてこの戦いは力を借りなければ終結させられなかった事。
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空の彼方。
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「今回は少し消化不良でしたわね。次は数国組み合わせて襲わせてみようかしら。一体どこまで頑張れるかしらね。フフフッ」
そして、リビアナは次元の裂け目と共に消えた。
赤獅子国ー国難脱却
住民
人間:2227人(Increase)
狼人:35人
妖怪:56人(Increase)
ミスル人:22人(New)
龍:1頭
人間内訳(一部):侍、超能力者、忍者
防衛隊・赤翼隊:32人(Increase)
0
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