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  幕間の物語12 超人ストロングマン

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私の名前はストロングマン
安易なネーミングだと思うだろうが了承してほしい。
クラーク君(7歳)の案が採用されてしまったのだから。

私は日々この世界を護るため、スーパーヴィランたちと戦っているヒーローだ。

コスチュームは全身タイツで、胸にはストロング、パンツ(股間部分に)マンと書かれたもの。そしてマントだ。
ハッキリと言いたいところだが、こちらはケント君(6歳)の案が採用されてしまったので仕方がない。

人気投票というシステムに不満はない。
しかしだ、そのセレクトを決める方々にセンスが無いと事故が起こる。
更に世の中には賑やかし屋というのが大量にいるらしく、一番問題があろうが面白そうな案が通りやすい。

クラーク君やケント君は多分一生懸命考えてもらったんだろうが、そこは大人がカバーすべきだろう。
愛くるしいネームやイラストだとか勢いだけでセレクトに入れてくるんじゃない!
戦っているヴィランの名前はケイオス・エンペラーやペインメーカー、アンダーテイカーとか俺よりもかっこいい名前が付けられている。
まったく困ったものだ。

ゴホン!

別に不平不満がある訳ではない。
ちょっと物を言いたかっただけだ。
正直今起こっていることに比べれば名前やコスチュームなど些細な問題だ。

事は7日前にさかのぼる。
いつもの様にパトロールをしていると、宇宙から小型の宇宙船が飛来した。
その中にはスーパーパワーを持った男が入っており、船から出るなり辺りを更地にしてしまった。
慌てて急行してみると、その男は私に「久しぶりだな、弟よ」と言って来た。
私は「何を言っている。私に兄弟はいない。一人っ子だ」と返す。
すると「まさか記憶がないのか」と返して来た。「親の名前を言ってみろ」と問われたので「私は両親はジョセフとスージーだ」と答えた。
「お前の名前はカミ=エレ。カリプトン星の戦士だ」と男は言った。
「何を言っている。俺は地球人」
「そんな地球人がいるか。お前その力をなんだと思ってる」
「多少人よりちょっと力は強いし、空も飛べるけし、目からビームも出せるけど、ごく普通の地球人だ」
「アホなのか」
「アホではない! 大学にはヒーローの仕事が忙しくて行っていないだけだ!」
「もういい。頭に衝撃を加えれば思い出すだろう」
男はそう言って俺に殴りかかって来た。
俺はそれを避け渾身の右ストレートをお見舞いした。
その男は宇宙の彼方へ飛んで行った。

その夜、両親との晩飯の際、「おかしな敵が現れてね。俺が宇宙人だって言うんだよ。はっはっはっ! ほんと笑っちゃうよね」と言ったら、母親が真顔で「あなた宇宙人よ」と言って来た。
「何言ってるんだよ母さん」
「家の裏の納屋にあなたの乗った宇宙船が不時着したの。しょうがないから私たちが育てたのよ」
「そんな訳ないだろ! 冗談はやめてくれよ」
「冗談じゃないわよ。あなたその力をなんだと思っていたの?」
「人よりちょっと強いかなって」
「地球人じゃありえないわよ。空も飛んでいるし、目からビームも出るし」
「なんで言ってくれなかった?」
「私たちもとっくに気づいてると思ってたのよ!」


そんな訳で私は宇宙人である事実を知らされたのだ。
皆とちょっと違うとは思っていたけど、まさか自分が宇宙人だったとは。
そんな傷心中の俺の所に再び兄を名乗る男が戻って来た。それも大量の軍勢を連れて。
地球に着くなりその一団は全世界を破壊し始めた。
一人一人は相手にならないが、数が多すぎた。
地球の名だたる遺跡や建物も破壊された。
私はその一団を全て宇宙の彼方に吹き飛ばした。

その戦いの後、なぜか世界は救ってやった私に対して、修理費や賠償金を請求し始めた。
命を懸けて護ってきた相手に完全に裏切られた気分だった。

そんな時世界の根幹を名乗る者から一通の招待状が届いた。
「闘いに勝てば望むモノを与えよう」とそこに書かれていた。
世界の連中は、その闘いに勝って、世界の賠償金にしろと言い出した。

正直全く乗り気ではない。
だが俺はこの闘いに参加する事にした。
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