<竜騎傭兵> ナイン・スペード・ドラグドライブ

蒲生たかし

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第10話 バハムート・スレイヤーズ

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【覇竜】

西暦1000年頃
中東で初めて竜が発見された

正確な表現では初めて人が竜に遭遇し
そして
殲滅させられたのだ

竜の口から光が走ったかと思うと
その痕には爆炎が沸き上がり
街が
国が
一夜にして消滅した

その原初の竜は
覇竜
当時の現地の伝承の怪物の名をとり
バハムートとも呼ばれ
人々はそれに恐怖した


人はありとあらゆる武器で対抗したが
成す術はなく
ただひたすらに蹂躙された

皆が絶望した時
一人の青年が
その竜に向かい
いくつかの声を発し
暴れ竜を制したのだ


これを機に
世界各国で突如として
覇竜が現れ
中東での出来事と
同じ事が起こった

竜による蹂躙
竜と会話をする者の登場


竜を制した者は支配者となった
当然である
人にコレに立ち向かう術はなかったからだ

国は王族ではなく
竜使いの物となる

その後突如として均衡が訪れる

各竜たちと支配者は
互いの領土を侵略せぬよう
けん制し合い
距離を保った

互いの竜を
傷つけたくない
失いたく
という思いからだ

その結果
小さな小競り合いこそあれ
大きな戦争は無くなった

覇竜の存在で国境線は敷かれ
西暦は竜暦と替わり
宗教は竜と同義となった


やがて
ドラゴンは人々の生活に入り込み
人の生活は大いに発展した

人類史における
竜革命がなされたのだ


各国の覇竜は大きな城や洞窟や地下に潜み
滅多に人の前に表さなくなった

時が進み人々が覇竜の脅威を忘れ始めた頃
世界では使役するドラゴンたちにより
戦線が拡大していった

人は馬ではなく竜に乗り
騎兵は竜に乗った戦士の意となる
そして竜騎傭兵の時代がはじまった

竜歴912年の現在に話は戻る

ナインはドラゴンレースの途中
学園都市ザクスオードの街で
小型とはいえその覇竜が立ちはだかっている

レースは一時的に中断
現有戦力で
対覇竜戦闘となった

戦力は
街の防衛隊の竜騎が僅か
元トランプ傭兵団のアクセルとナイン
火竜傭兵団のドナテロ
獅子竜傭兵団のティジャーン
が主だったところ
ドナテロがアクセルとナインに言い放つ
「慣れあうつもりはない
 あんな化石竜は俺と相棒のダビデだけで十分だ」
アクセルが問う
「あんた覇竜とやった事はあるのかい?」
「ただデカいだけだろう
 あんなノロマ
 敵じゃないね」
「なんも分かってないんだな
 覇竜はなめていい相手じゃない」
「なんだい
 元トランプ傭兵団ってのは臆病者の集まりなのかい?」
ナインが銃を抜きドナテロの前に立つ
「上等だ
 覇竜の前にこの火竜乗りをやってやるよ」
「お前が挑発にのってどうすんだよ」
「アクセルこそ
 ここまで言われて黙ってんのかよ」
「言いたい奴には言わせておけばいい
 そんな事より
 俺たちはもっと重要な案件と向き合ってる最中なんだよ」

そこにラット・モーガンと
飛竜乗りのウィルバー・アーチの二人が遅れて合流した
「えらいことになってるな」
「ラットの旦那
 それと飛竜乗りのアーチさんか」
アクセルが二人に気づき声をかける
「あんたらがいてくれて状況は少しはマシになったかな」
「覇竜相手じゃこの老兵は何の役にもたちゃせんよ」
「俺もただ飛ぶだけが能だ
 どうにもならんだろ」
「そんな事は無い
 今回は段取りが全てだからな」

覇竜と戦った経験のあるアクセルが口を開く
「いいかお前ら
 これから作戦を……」
だが
その全てを言い終わらない段階で
火竜乗りのドナテロと獅子竜乗りのディジャーンが
覇竜に向かって突撃していた
「お前ら!
 これから俺が作戦を伝えるってのに!」
「そこで見てろトランプチキン共!」
ドナテロが中指を立てながら覇竜に向かう
「面白そうな相手なんだ
 楽しまないと~!」
ティジャーンの方は能天気に駆けていった

覇竜の閃光が走るが
流石に二人とも名のある傭兵団のエース格だけあり
ドナテロもティジャーンもそれを上手く避ける
かわしざまに二人ともそれぞれの武器で覇竜を攻撃するが
硬い鱗の前では全ての弾丸がはじかれる
ドナテロの火竜の吐く炎も覇竜の前には無力だった

ドナテロとティジャーンがアクセルの元に戻ってくる
ティジャーンは笑顔で
「ダメだった~」
汗を拭いながら目も合わせず
ドナテロも口を開く
「作戦ってのを
 聞いてやってもいいんだが」
「お前どんな面の皮だよ」
アクセルがぼやく

「そもそも覇竜って倒し方あんの」
ナインが覇竜を見たままアクセルに聞く
「あるにはある」
そう答えるアクセルに次はドナテロが問う
「早く言えよ」
「閃光を吐く寸前に炸裂弾を口にぶち込む
 これで覇竜の顔面が爆ぜる」
ナインが察して言う
「だけどそれって」
「そう
 一瞬でも遅れれば
 閃光に焼かれてこっちが爆ぜる」
ドナテロが慌てて言う
「まさか
 作戦って
 それをやろうってんじゃ」
「そんな博打を打つわけねーだろ
 こんな戦いに命かける意味なんて微塵も無え」
「じゃあどうすんだ」
「だから
 それを説明するって言ってんだろうが」

戦闘参加者は
街で一番頑丈な要塞に集まった
「まず初めに
 アイツを殺るのはあきらめ
 目標は捕獲に設定する」
「現実的だな」とラット
「そこで大事なのは
 口を封じる事と動きを止める事
 これを同時に一気にこなす」
「それが出来れば苦労は無いな」今度はアーチ
「そのためにこれを使う」
アクセルは警備兵に依頼していたものを
皆の前に置いた
最初にラットが口を開く
「これは
 ドラゴン用のさるぐつわと
 麻酔弾かね」
重ねてドナテロが噛みつく
「ふざけんなよ!
 さっきの見てなかったのかよ
 麻酔弾なんか
 奴の鱗にはじかれて終いだろうが」
「だーかーらー
 そのための作戦があるって言ってんでしょうが
 お前
 自分の火竜団でも
 話は最後まで聞けって言われてない?」
「うっ
 うるせーよ!
 言われてねーし!」
周りの人間が全員思った
言われてんなコレ

「まず皆に知っておいてもらいたいのは
 覇竜のあの閃光は連発はできない
 今回のアイツの場合
 インターバルは3分ほどだ
 その間に全ての片を付ける
 じゃあ段取りを伝えようか」


戦闘参加者が全員所定の場所に着いた

合図はアクセルの遠距離射撃
覇竜は打たれた方向に首を向ける
その死角になった方向から
ドナテロと火竜が一気に距離を縮める
巨大な覇竜の足元から火炎と弾丸を見舞う
覇竜の背びれに電気が走った

ドナテロはアクセルの言葉を思い出した
「背びれが光ったら閃光の合図だ
 全力で逃げろ」
刹那地面を閃光が走った

その閃光を合図に飛竜乗りのアーチが高高度から
竜用のさるぐつわを抱え落下してくる
ドナテロのけん制は覇竜の注意を地面に向けるため
「閃光が来ないとわかれば
 怖いものは無いんですよ」
飛竜は見事なアクロバット飛行で
覇竜の口にさるぐつわを装着させた

アクセルが共有した作戦の次は段階はこうだ
「口を噛む力に比べて
 開く力の方が弱いとはいえ
 アイツら覇竜は規格外
 さるぐつわで口を封じられるのは
 せいぜい3分ほどだろう
 その隙に奴を眠らせる」

覇竜は口を封じられた混乱に陥った
次の瞬間ラットの乗る竜が覇竜の前足に突進をかまし
膝をつかせた
「なるほど
 相手が混乱してれば転ばすのは容易か」
続けてティジャーンの獅子竜が瞬時に近づき
覇竜の脇腹に両手の爪で切り付け
十字の爪傷を付けた
「結構なんでも切り裂けると思ってたんだけど
 やっぱ世界は広いんだね~
 このかすり傷が精一杯だ
 ははは!」
その十字傷の中心に
アクセルが甲竜弾を撃ち込んだ

甲竜弾は世界でも有数の硬度を誇る
甲羅竜の甲羅を研ぎ澄まし弾丸にしたもので
その貫通力は世界での最強の部類に入る
だがその加工技術は難しく
世界でもトランプ傭兵団でもこれが可能な者は限られた

弾は正確に十字傷の中心をとらえ
派手な音をたて
覇王竜の鱗を一枚砕いた

覇竜の厄介なところは
鱗をはがしても
瞬く間にはがれた所の皮膚が硬化して
新たな鱗になるという
その時間は約1分

「さあ
 仕上げだナイン
 お前の事は嫌いだが
 その腕は認めてんだ」

鱗がはじかれた場所に
ナインは数発の弾丸を撃ち込んだ
初弾で皮膚を貫き
同じ場所に麻酔弾を走らせ
さらに同じ場所に3発目を撃ち込み
麻酔弾の拡散と蓋をした

ワンホールショット
寸分の狂いも無く同じ場所に弾を打ち込む技術
トランプ傭兵団の中でも
2発のワンホールショットができる者は何人かはいたが
3発でできる者はナインだけだった

「十分暴れたろ
 もう眠っとけ」
ナインは銃をホルダーにしまう

覇竜は
巨木が倒れる様に
ゆっくりと倒れた


こうして
テロによる学園都市の混乱も終結した

これだけの騒ぎが起こったにも関わらず
レースは再開される運びとなる


覇竜を仕留めて数時間後に
セインツと呼ばれる聖竜騎士団が到着した
セインツ隊長のランスロットがナインの元にやって来た
「隊長
 来るの遅いよ
 覇竜はこっちで眠らしといたからね」
「まったく
 お前が通ると事件しかおきんな」
「いやいや
 これは巻き込まれ事故だから」
「正直感謝はしてるよ
 俺たちセインツでも
 覇竜相手ではただでは済まなかっただろうからな」
「じゃあ
 この前の領主片づけた件はチャラでいい?」
「それはそれ
 これはこれだ
 しかし
 この惨事の後始末は中々骨が折れそうだ」
「最近テロ盛んみたいね
 何つったっけ【爪痕のなんちゃら】?」
「【竜爪の旅団】だ
 王族も何度か狙われている」

レース再開は
街にたどりついた着順と時間差をそのままに
次の日に再スタートの運びとなった

レース最終コース
そこでもまた大きな事件が起こる

続く
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