<竜騎傭兵> ナイン・スペード・ドラグドライブ

蒲生たかし

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第11話 デスレース 終編

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あれほどの事件が起こった翌日なので
レース再開は認めない
という聖竜騎士団に対して
主催のダービー卿は金の力で言いくるめ
再開を実現させた

王立の騎士団とはいえ
国の大手スポンサーからの要請は断れないらしく
昨日の今日でレースは再開される運びとなったのだ


レース最終区間である
ザクスオードから首都ロンディス
そのゴールである時計塔までの距離は
約60km
早いドラゴンであれば
30分ほどの距離

つまりレース再開から
1時間を待たずに王者が決まる

ましてや事件による中断休憩により
全員の体力も回復している

レース最終行程は
短期熱戦が期待された


レース再開の朝
スタートラインに参加者は集まる

ドナテロ
ティジャーン
アクセル
ナイン
ラット
ウィルバー
昨夜は覇竜を相手に共闘した面子だ

ドナテロが言う
「共闘はしたが勝負事ではなれ合いは無しだ」
「当たり前だ
 あれはあれ
 これはこれ
 だろ」
とアクセルが答える
ティジャーンが言う
「皆で歴史に残るレースにしようよ」
それにナインが真顔で返す
「まー
 歴史に残るのは俺の名前だけだけどな」
「お前のそーゆーとこな……」
アクセルがため息交じりに言う

最終行程
もう遠慮はいらないな
皆の考えは同じだった

さらに
覇竜との戦いで互いの力量が知れた


再開の順番は
ザクスオードの街にたどり着いた着順
1位:ドナテロ
2位:ディジャーン
3位:アクセル
4位:ナイン
以下主だったところは
ウィルバー、ラット、パメラ
などが続くとなる

スターターピストルが撃たれ
「ゴールで待っててやるよ」
ドナテロと火竜のコンビは全速力でスタートした

しばらくの間をあけティジャーンと獅子竜コンビもスタート

アクセルがナインに近づく
「来たら手加減は無しだからな」
「いつものことでしょうに」
ナインはアクセルの目を見ず答える
アクセルは少し微笑みスタートラインに向かった
そしてアクセルもスタートした

そんな二人の様子を遠目に見ていたのがパメラだ
毒竜にのる女傭兵で
簡単に言えばアクセルのストーカー

アクセルにかまってほしくて
アクセルに近しい人を殺して回るという
実に厄介な性癖を持つ

昨夜の覇竜討伐の様子も
少し離れたところから見ていたパメラだが
アクセルのナインのコンビネーションに嫉妬を覚えていた

「あれがナイン・スペード
 アクセル様の弟分だからって
 ちょっと調子に乗りすぎよね
 以心伝心な感じが本当にむかつくわ
 殺してしまいたいほどにね」

ナインは自覚もなく
このストーカー女の殺害対象となっていたのだ

そこな事とも知らず
ナインとイザナミのコンビもスタートした
まずは先行するアクセルを追う


ナインがスタートした頃
先頭では
ドナテロの火竜とティジャーンの獅子竜が
熾烈なバトルが展開していた

ドナテロが後ろからの斬撃を警戒して
反転して迎え撃ったのだ

火竜ダビデが炎を吐く
「動物ってのは火を恐れる生き物なんだよ」
「あいにくと獅子竜シャンゴは
 火山地帯の生まれで
 火をあまり恐れないんだよ~」
炎を掻い潜り獅子竜が迫り爪の一閃
しかしそれを火竜は避ける
「ただ炎を吐くだけど思ったけど
 意外に動けるんだね~」
「こちとら
 名門傭兵団のエースなんでね
 あまりなめてもらっては困る」
ドナテロが銃キャメルで撃ち込む
ティジャーンと獅子竜はそれを華麗に避ける
「キャメル」という銃はリボルバー式で
6発打つたびに弾を装填しなくてはならない
「今時リボルバーなんて時代遅れだにゃ~」
「文明の遅れたファラカ大陸の人間に言われたくねーんだよ」
「ひ弱なエウロペ大陸の人間がよく言うよね~」
ティジャーンが接近して自らの蹴りを見舞う
ドナテロは名門竜騎傭兵団のエースであり
騎乗と射撃においては世界屈指のレベルだが
格闘能力はほぼ有していない
ティジャーンの攻撃に防戦一方となる
銃弾も全く当たらず
せいぜいドナテロの腰の銃をかするくらいだった
火竜も懐で暴れるこの獅子竜には手が出なかった
「くそ
 ドラゴンの上だってのに起用に跳ねまわる
 だからファラカの猿は始末が悪い」
「その猿にやられるお前はなんだ~」
蹴りをまともにくらい完全に体制を崩すドナテロに向かい
ティジャーンが銃を抜く
「あの世で反省するといいにゃ~」
引き金を引こうとするが
銃は反応しない
弾詰まりだ
あせるティジャーンに体制を立て直したドナテロが銃を向ける

銃声

ティジャーンが獅子竜から落ち
レースは失格となる

「リボルバーが時代遅れだって?
 わかってないな
 リボルバーは弾詰まりはしない
 優秀な銃なんだよ」

一息つき
ドナテロは火竜と再び走り出した

「厄介な相手だったぜ」


ドナテロとティジャーンの戦いの決着がついた頃
そのすぐ後ろではアクセルとナインの戦いが始まっていた

それも2騎共に全力で進みながらの銃撃戦
互いに手にした銃は
ツーハンドではなくシングルハンド
自分のドラゴンに身体を沈め
壮絶な撃ち合いを展開している

2騎はそのまま先行するドナテロを巻き込み三つ巴の戦いとなる

ドナテロが叫ぶ
「ふざけんな!
 こっちはティジャーンとやりあったばかりなんだ
 お前二人だけでまず勝負をつけてこい!」
「何言ってんの
 勝負なんだから順番とかないでしょう」
ナインは容赦なくドナテロに銃を撃つ
ドナテロが火竜の炎を二人に向け足止めを図る
「勝負に水をさすってのは聞くが
 炎を吐くってのは聞かないな」
アクセルがドナテロに向け銃を撃つ
ドナテロは何とかそれを避ける
そこに今度はナインが再び銃を撃つ
これも何とかドナテロは避ける
「二対一は卑怯だぞ!」
「いやいや
 勝負の世界
 まずは弱い者から狩っていくのは
 鉄則でしょうが」
「誰が弱い者だこのチビが!」
このドナテロの返しにナインが切れる
「おいこのリグ公
 今何つった」
「小さ過ぎて聞こえなかった
 このチビがっつったんだよ!」
「聴覚と身長に何の関係があるんだこのクソヤロー
 丸焼きにしてやんよ」
二人のやり取りを後目に
「じゃ
 後はお二人で仲良くやってね」
そう言いアクセルは一人抜け出した
「待てこの!」
「待てじゃねーよ
 てめーの相手はこの俺だろうが!」
アクセルを追いかけようとするドナテロに対して
ナインはもう一丁の銃も出し
ツーハンドで連射を始める
ナインがその気になればマガジンの交換の隙もほぼ無く
残弾の限り打ち続けることができる
いくら回避の巧みなドナテロと火竜と言えども
この銃弾の雨を避け切る事は出来ず
数発身に受けたドナテロが火竜から落ちた
「トランプの連中は化け物かよ……」

「さて行くかイザナミ」
ナインはイザナミの首をポンと叩くと
イザナミはゆっくりと腰を落とし
瞼を閉じた
「どうしたイザナミ!」
レース中にドラゴンから落ちたら失格となるため
鞍の上から全身を確認すると
イザナミの左後脚の付け根に弾倉を見つける
「麻酔弾か
 クソ
 アクセルのやり方は本当にこすいな」
慌てて荷物で何か薬が無いか探すが見当たらない
「さて
 どうしたもんか」

立往生しているナインの横を
ラットとウィルバーが通り過ぎて行った
二人ともナインの気性は知っていたので
触らぬ神に祟り無しよろしく
「お先に」という言葉のみをかけ素通りした

そして
毒竜とパメラがナインの元にやって来た


「聞きたいことがあるの」
「初対面でいきなり何ですか?」
「あんたアクセル様に馴れ馴れしくない?」
「馴れ馴れしいも何も元々同じ傭兵団なんだけど」
「だからって私の許可も無く
 何なのよ」
「なんであんたの許可いるんだよ
 そもそも俺とアクセルは仲良しでもなんでも……」
言い終わらないうちにパメラは手に持ったマシンガンを撃って来た
「意味が分からない!」
ナインはイザナミの影に隠れる様に銃撃を避ける
「あーちょこまかとうっとおしいわね!
 いいわ私の可愛いサンムの毒でドラゴン共々死ぬがいいわ」
パメラの毒竜が眠っているイザナミに噛みつき毒を流した

数秒後

驚き起きたイザナミが尻尾で毒竜を殴り倒した
その反動でパメラが落ち毒竜の下敷きになった
あっけなくパメラも失格

「おいイザナミ
 大丈夫か」
イザナミは毒で目を覚まし少しふらふらしたが
すぐに正気に戻った
「行けるかイザナミ」
それに答える形でイザナミが駆け始めた
「大分遅れちまったから超特急で頼むぜ」


ウィルバーとラットが平和に競っている横を
イザナミが一瞬で抜き去った

ラットはたばこを取り出し一服する
「寝坊助がやっと目を覚ましたみたいだな」


イザナミの驚異的な追い上げでナインは
アクセルに追いつく
「睡眠弾なんて
 まったくこすずるい手を」
「よく起きれたじゃないの」
「あんたの恋人に起こしてもらいましたよ」
「誰だよそれ」
「名前はもう忘れた」
二人は言葉と銃弾を交わしながら走り続けた

ゴールとなる時計台が見える

横並びでもうスピードで並走する2騎
アクセルが僅かに前に出ている

ゴール前10メートルほど
「悪いなナイン
 俺の勝ちだ」
ナインは再び2丁目の銃をとりツーハンドの体勢を取る
「今更銃は無駄だ!」

「さぁ
 ラストの一本勝負だ」
ナインは息を吸い
止め
集中した

「竜に弾は効かなくても
 走る地面はどうだろうね」
ナインはアクセルの愛竜ネレウスの右前脚が地面に着くその瞬間
着地する場所に三発の銃弾を撃ち込み
穴を空けた
ネレウスその穴に脚を取られバランスを崩す
アクセルが何とか踏ん張り
落竜は免れたが
その減速は致命的となり
ゴールラインをナインとイザナミが1位で駆け抜けた
僅かに遅れてアクセルとネレウスがゴールした

こうしてドラゴンレースの初代王者はナインとイザナミとなった


そして
事件はここから起こる

ゴールの時計台広場に
レースの参加者が次々とたどり着く


国家の象徴たる時計塔


普段は厳重な警備がついているが
今回はイベントという事で
開放されゴールとして利用された

爆発竜に乗った二組も
ゴールにたどり着くが
そのまま減速せずに塔に向かって突っ込んでいく

レースの優勝者が決まった余韻に沸くその場の全ての者は
その二組の動きをただ目で追う事しかできなかった

時計台に二匹の爆発竜が突撃
大きな爆発が起こり
塔の根本は大きくえぐられる

塔はゆっくりと

崩れ落ち

倒れ

破壊された


本来であれば時計塔には
常時セインツの衛兵が回りに立ち
何人も近づく事は許されない

だが学園都市でのテロ騒ぎでほぼ出払っており
残った僅かなセインツも
群衆の方にばかり注意を払い

レース参加者には全く注意を払っていなかった

崩れ落ちた塔のがれきの中に
何者かが三本爪の交差傷を残していた


テロ組織「竜爪の旅団」による
国家に対する宣戦布告が行われたのだ


「人のお祝いムードをぶち壊すとは
 上等じゃないの」
これまで
傭兵団の裏切者を探し殺す事が
人生の目的だったナインに
新たな敵が設定された
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