海神アオハル

華子

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すれ違うふたり

すれ違うふたり01

 火曜日。廊下なんか無闇に出なければよかったと俺が悔いたのは、知らぬが仏の仏様になりたかったから。

「美咲と海くん、校舎前で白昼堂々キスだって~。昼休み抜け出して、ふたりでランチ行ったみたい」

 普段は神話に出てくる天使にしか見えぬほど愛くるしいアイラも、今日はデビルに見える。午後の廊下なんて歩かなければ、他クラスの彼女と鉢合わせることなどなかったのに。
 硬直する俺に、アイラは続けた。

「神人くん知ってる?つい最近駅前にできたタイ料理屋さん。平日限定のランチ、すっごく評判いいんだって。私も行ってみたかったんだけど、今日はやめておいた。だってカップルの邪魔になっちゃうもんね」

 カップル。俺は海と歩いていても合体しても、コンビだとしか言われないのに、女性の美咲と海が付き合えば、世間にカップルだと認定される。五月から七ヶ月ものあいだ愛を育んだって、男の俺はコンビから先へは進めない。

「あーあ、いいなあっ。美咲毎日すっごい嬉しそうに海くんとのこと報告してくるんだもんっ。私も彼氏欲しくなっちゃう」

 俺だって、海とあった出来事全てを話したい。男女年齢問わず全国民に、海と腕組んでデートしたんだって、クリスマスもお揃いのプレゼントを買う約束してるんだって。拡声器を使って叫びたい。

「クリスマスは指輪おねだりしちゃったって、美咲言ってたよ。付き合いたてでちょっとそれは重くない?って笑っちゃったけど」

 あははと楽しそうに話すアイラへ獅子舞ししまいのような笑顔しか向けられなかった俺は、腹を下したと嘘をつき、トイレへ逃げ込んだ。
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