海神アオハル

華子

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すれ違うふたり

すれ違うふたり10

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 蜂蜜味ののど飴を舐めながら、電車に乗った。

「んまい」

 どうやら電球頭は、喉を痛めていたらしい。

 彼から供え物のように差し出されたものは、二種のスマートフォンと、財布とUSBと飴玉四個。俺はその内、スマートフォンと飴玉を頂戴した。無論、どこの誰と繋がってしまうかわからないおっかない携帯電話は、直ちに落とし物として交番へ届けたから、結果、手元に残ったのは四個の飴玉だけだ。
 今日は朝から何も食べていなかった。だから小腹を満たすにはちょうどよかったかもしれない。流石にこの浮かないテンションでは、ラーメンもどんぶりも食べられたものではないし。

 二粒目の飴を口へ投げ込み、車窓で流れ行く景色を覗く。するとそこには、半分透けた俺も映っていた。

「うへえ……これ、かまいたち並みじゃん」

 ペティナイフで切りつけられた傷は、目下から始まって四センチから五センチほどに及んでいた。血はいつの間にやら止まっていたが、定規を使って引いたような真っ直ぐな朱線は、マスクをしても覆いきれぬだろう。

「まじであの電球、ムカつくわあ……」

 明日は冬休み前最後の登校日。俺は喧嘩嫌いな美咲に怒鳴られる覚悟を決めた。
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