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抵抗と棄却
抵抗と棄却3
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1時間くらいは、沈黙が流れただろうか。なんてそんな事、いくら並外れた内田家でもあるわけがない。
それほど長く感じたサイレンスの後、俺が反論するよりも先に物申したのは桜子だった。
「なんで!?なんでお兄ちゃんは高校行けないの!?」
声を張り上げ、怒りに湧く彼女に俺は少しの焦りを感じた。ずっとはぐらかしてきた事が、曖昧にしてきた物が、全て曝け出されてしまうんじゃないかって。
「ねえお母さん、お兄ちゃんが勉強頑張ってるの知ってるよねえ!?お兄ちゃんは高校に行けるでしょ!?」
「やめろ桜子っ!もういい!」
「なんでよ!ちゃんと説明してくんなきゃ納得いかないよ!」
「桜子っ!」
もういいよ、俺のせいで母さんと喧嘩なんてするなよ。
そう言いかけた時だった。
「お父さんは、大和に仲間になってほしいって思ってる。高校には行かせないってそう言ってる」
母親の顔の真下、食卓にじんわりと滲んだ小さな水溜まりは、彼女のやるせなさを物語っている。そんな彼女にティッシュを差し出すと、彼女は「ごめん」と言って、箱から1枚取っていた。
母親を追い詰めると分かっていても、俺は聞かずにはいられない。
「もし…もしも俺が断ったらどうなるの……?」
殺される。それはないと思うけれど、殴られはするのだろうか。
「分からない…」
真っ赤になった瞳を揺らしながら、彼女は言う。
「私は、お父さんのとこには大和を入れたくない。お父さんの組は他の集団と比べてみても常軌を逸しているし、死んだ仲間も死んだ相手も、今まで沢山見てきたから」
その時「うそ……」と聞こえたのは、桜子の席から。
「大和のことをお父さんは愛してる。だけどそれ以上に組織にも愛がある。息子を必ず組に入れるって、体裁を保つことにも全力なのよ」
それほど長く感じたサイレンスの後、俺が反論するよりも先に物申したのは桜子だった。
「なんで!?なんでお兄ちゃんは高校行けないの!?」
声を張り上げ、怒りに湧く彼女に俺は少しの焦りを感じた。ずっとはぐらかしてきた事が、曖昧にしてきた物が、全て曝け出されてしまうんじゃないかって。
「ねえお母さん、お兄ちゃんが勉強頑張ってるの知ってるよねえ!?お兄ちゃんは高校に行けるでしょ!?」
「やめろ桜子っ!もういい!」
「なんでよ!ちゃんと説明してくんなきゃ納得いかないよ!」
「桜子っ!」
もういいよ、俺のせいで母さんと喧嘩なんてするなよ。
そう言いかけた時だった。
「お父さんは、大和に仲間になってほしいって思ってる。高校には行かせないってそう言ってる」
母親の顔の真下、食卓にじんわりと滲んだ小さな水溜まりは、彼女のやるせなさを物語っている。そんな彼女にティッシュを差し出すと、彼女は「ごめん」と言って、箱から1枚取っていた。
母親を追い詰めると分かっていても、俺は聞かずにはいられない。
「もし…もしも俺が断ったらどうなるの……?」
殺される。それはないと思うけれど、殴られはするのだろうか。
「分からない…」
真っ赤になった瞳を揺らしながら、彼女は言う。
「私は、お父さんのとこには大和を入れたくない。お父さんの組は他の集団と比べてみても常軌を逸しているし、死んだ仲間も死んだ相手も、今まで沢山見てきたから」
その時「うそ……」と聞こえたのは、桜子の席から。
「大和のことをお父さんは愛してる。だけどそれ以上に組織にも愛がある。息子を必ず組に入れるって、体裁を保つことにも全力なのよ」
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