道理恋慕

華子

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守護と殺人

守護と殺人4

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 父親に遅れる事数十分。桜子へ預けたメッセージを無視に、子供部屋の扉を開けたのは母親だった。俺は隠れる事はしなかった。

「大和、体調悪いんだって?」
「うん」
「病院行く?」
「行かない」
「そう。お母さんこれから仕事で出ちゃうけど、帰りになにか買ってこようか?」
「母さんの仕事ってなに」

 シーツからむくりと上半身を起こし、俺は視線と視線をかちりと嵌めた。

「え……?」

 具合が悪いと寝ていた息子から急に真剣な瞳を寄越された母親は、少々戸惑っているようにも見えた。
 早口で、俺は聞く。

「母さんはさ、父さんの仕事場でなにやってんの。事務?詐欺?それとも人でも殺してんの?」

 ごくりと動く喉仏。それは双方のもの。彼女も俺と同じペースで言う。

「事務」
「へー。仲間が人を騙して稼いだ金のカウントか」
「あと詐欺」
「あっそ。よく心痛まないね」

 母さんも、とっくに手慣れた犯罪者だったんだ。そりゃそうか。父さんあいつと結婚してるくらいだもんな。

「あと」

 母親は、肩を落とす俺に向かって木石ぼくせきの如く続けてくる。もういいよ、と思うけれど、耳は傾けてしまう。

「お父さんにとどめ刺しとけって言われて刺したこともある。1回だけ」

 その刹那、パァンと弾けた音と共に、左右の瞳孔がひらいた。

 人殺し家族。

 そんな言葉を、大筆で書かれた気になった。
 動じる俺の前、彼女はノブに手をかける。

「じゃあ、帰りにゼリーでも買ってくるからそれまで寝てなさいよ。いってきます」

 静かに閉められた扉。俺の脳には、母親が他人の額に銃口を押しあてる姿が浮かび上がった。

「まじかよ………」

 イメージに抵抗した俺は、頭をぶんぶんと横に振りそれを掻き消すが、止めればまた浮かんでくる、今度は人の心臓を刃物でひと突きする彼女。

「あ~、ちっきしょ~……」

 このままでは本当に、具合が悪くなりそうだ。
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