道理恋慕

華子

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守護と殺人

守護と殺人16

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「そいつは悪かった、話をしよう。金ならやるから」

 父親のその言葉に、蓮は臆する事なくまた1発の銃弾を放っていた。今度は反対側の足からも血が流れる。

「うっ……」

 呻き声と共に、その場へ崩れ落ちる父親。

「あなたっ……!」

 糸のような母親の叫び声は、俺にしか聞こえない。

「そういうことじゃねえだろ!なめくさんな!」

 グリップを力強く握る蓮の手には、何匹もの蛇が這っているようだった。幾筋もの血管が、浮き出ている。

「俺の親父はどうしようもなかったよ!酒に溺れやく漬けだったし、金がなくなってもあんたのとこにせびってた!でも、親父がすっからかんになったのは薬のせいだけじゃない!あんた等が用心棒代だ場所代だっつって、親父の店からふんだんに金を盗ったからだろう!?払えなきゃあ殴る蹴るの暴力行使でよお!だから親父は死んだんだ!店でも家でもあんた等が脅してくるから!首を吊った!」

 蓮の目には涙が滲んでいた。悔しさ、無念、屈辱。全てが詰まった濁った涙に見えた。

「すまない」

 父親は、血したたる痛々しい足を必死に折り曲げると、正座をして床に額をつけていた。

「すまなかった。申し訳なかった。許してくれ」

 小さくまとまった父親の姿に、俺の目にもどうしてだか溢れるものがあった。

 幼い頃から絶対的だった父親、強かった父親、無敵だった父親。俺が何回歯向かおうとも、勝てなかった屈強な父親。そんな彼が土下座をしへつらう姿は、見るに耐えられない。
 無欠の完敗に、なんだかひとつの時代が終わったようにも感じた。

「お、お父さ……」

 蓮の胸元で見えた桜子の涙も、俺と同じ意味合いなのだろうか。それとも今にも命を葬られてしまいそうな親の魂に、縋るものか。

「そんなんしたって許さねえよ」

 低く、掠れた声でそう言った蓮は、父親の頭頂部にマズルを押しあてた。

「死ね」
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