俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件～転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

こいつ、本気で……？

悠真は、颯斗の腕の中で完全に固まっていた。  

いつもの颯斗とは違う。  

冗談っぽい軽口もなければ、からかいのニュアンスもない。  

ただ、迷いのない動きで抱きしめられていた。  

女子たちに囲まれるのとは、まるで違う感覚だった。  

彼女たちは、好意を前面に押し出してくる。  

けれど、その熱量に悠真はどこか距離を感じ、適度に受け流すことができていた。  

だが、今は――  

（……なんだ、この体温の伝わり方は）  

服の上からでも、颯斗の熱がはっきりと伝わる。  

本気の温度だった。  

悠真は、強引に腕を振りほどこうとした。  

けれど、颯斗の腕はそれを許さなかった。  

力で押さえ込むわけではない。  

けれど、逃がす気がないと、確かに伝わる抱きしめ方だった。  

「お前、俺から逃げるな」  

低い声が、耳元で響く。  

「……っ」  

悠真は息を飲んだ。  

これまでの颯斗の態度が、脳裏に浮かぶ。  

自然に距離を詰めてきたこと。  

さりげないボディタッチ。  

誰よりも早く、自分を助けに入る姿勢。  

それらが積み重なり、今、悠真の中でひとつの答えに結びつこうとしていた。  

（いや、こいつ、何を考えてるんだ？）  

「颯斗、お前――」  

そう言いかけた瞬間、悠真は目の前の視線に言葉を詰まらせた。  

強い。  

これまで見たことがないほどの、真剣な視線だった。  

悠真は、言葉を飲み込んだまま、視線を逸らすこともできない。  

（男同士なのに）  

（こんなのはおかしい）  

そんな言葉が、頭の中を駆け巡る。  

それなのに――  

（でも……嫌じゃない、のか？）  

頭で拒絶しようとしているのに、体がそれを否定しているような気がした。  

颯斗が、ふっと腕の力を緩めた。  

そのまま、悠真の耳元で静かに囁く。  

「……なあ、お前、本当は気づいてるだろ？」  

悠真の息が詰まる。  

否定しなければならない。  

けれど、なぜか言葉が出てこない。  

心臓の鼓動が、いつもより速くなっていた。