三条美玲の炎上

中岡 始

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ディナー後、美玲はワインの酔いも手伝って、隼人と再び特別な時間を過ごしたいと強く願い、彼を自分の部屋に呼び出そうと内線をかけた。部屋での優雅な時間を一緒に過ごすことで、隼人がもっと心を開くはずだと信じていたのだ。しかし、フロントから返ってきたのは思いがけない返答だった。

「三条様、申し訳ありませんが、佐々木は現在、他の業務に入っており、すぐに対応することが難しいとのことです」

この返答に美玲は驚き、そして苛立ちが瞬時に込み上げてきた。

「どういうこと?私はVIPなのよ!他の業務?そんなの理由にならないわ!」

と、受話器を強く握りしめ、声を荒げた。

さらにワインの酔いも相まって、美玲の怒りは収まるどころか、さらにヒートアップしていく。

「どうして隼人さんが来られないの?私は特別なお客様よ!こんな対応、信じられない!」

彼女はフロントに再度抗議の電話を入れ続け、とうとう他のスタッフでは手に負えなくなり、松永総支配人が対応に当たることになった。

松永総支配人のノックの音に美玲は応じた。
松永がドアを開けて姿を現すと、美玲は目を鋭くし、総支配人にまで抗議の言葉をぶつけ始めた。

「松永さん、どういうことなの?私はこのホテルのサービスを期待して来てるのに、隼人さんが来れないなんて信じられないわ!私だけを優先するのが当然でしょ?」

松永は穏やかな表情を保ちながらも、真剣な口調で美玲に応えた。

「三条様、いつも当ホテルをご利用いただき誠にありがとうございます。佐々木を始め、スタッフ一同、お客様のご滞在が快適であるよう最善を尽くしておりますが、他のお客様の対応も行う必要があるため、全てのリクエストに即応できない場合がございます。どうかご理解をいただければと思います」

美玲はその説明に耳を貸す様子もなく、

「VIP対応っていうのは、特別な私に常に応えることじゃないの?私は隼人さんを指名してるのに、他の人なんてありえないわ!」

と、声を荒げ、松永に食ってかかるように抗議を続けた。

松永は冷静に美玲の話を聞き続け、少し間を置いてから、あくまで柔らかな声でこう続けた。

「三条様、当ホテルでは全てのお客様に等しく最高のサービスを提供することを目指しております。お客様の満足を最優先に、今後もより良い滞在をご提供できるよう努めてまいりますが、どうか私どものプロフェッショナルな姿勢をご理解いただければ幸いです」

美玲はその説明に納得することなく、怒りのままにワインを片手に座り込み、隼人が自分に応えないことへの不満を募らせていた。松永は彼女が落ち着くまでそばに控え、ホテルの立場を崩さずに対応を続けたが、美玲の怒りは簡単には収まらなかった。

松永総支配人が部屋を後にすると、美玲は一人になり、胸の中で膨れ上がった怒りを抑えきれなかった。彼女はワインをもう一口飲み干し、スマートフォンを手に取った。隼人が来ないこと、VIPとしての扱いを受けられないことへの不満が頭の中をぐるぐると駆け巡り、気がつくと彼女はSNSの投稿画面を開いていた。

普段の美玲なら、完璧に計算された美しい投稿を心がけていたが、この夜は違った。彼女の心の中に渦巻く感情がそのまま指先に乗り、怒りをぶつけるように投稿を始めた。

---

「信じられない…💢私はこのホテルのVIPゲストなのに、どうしてこんなにひどい対応をされるの!?😤 指名した隼人さんが来れないなんてありえない。VIPなら当然、私の要求はすぐに叶うべきよね?💔 期待してたのに、裏切られた気分。何のためにここに来てるのかしら…😡」

#VIPゲストのはず #信じられない対応 #裏切り #何のための高級ホテル? #私だけのサービスを期待してた #特別感が足りない #青海の宿

---

美玲の投稿は、瞬く間に拡散され始めた。彼女のフォロワーたちは、この予想外の怒りに驚きつつも、すぐに反応を寄せてきた。

「そんなひどい対応!?ありえないよね、VIPって言ってるのに…😢」  
「えー、隼人さんが来ないなんて!何があったの?」  
「高級ホテルならそんなこと絶対にないはずなのに!💔」

美玲はフォロワーからの共感の声に少しだけ気持ちが落ち着いたものの、まだ怒りは収まらなかった。特に、自分が「特別」であるはずの状況で、思い通りにならないことがどうしても許せなかった。
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