Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
21 / 84
第2幕

Aegis(イージス)ミーティング

しおりを挟む
Aegisの会議室には、チームの主要メンバーが集まり、大谷信之への逆詐欺計画の立案会議が静かに進行していた。まず、忍が調査内容を淡々と報告し、彼が集めたデータに基づく大谷の行動パターンや心理的な特徴について説明していく。

報告が一通り終わると、会議は各メンバーの役割分担の確認へと移った。

「まず、怜、今回は君が大谷に接触することになる」

そう語りかけたのは、チームリーダーの須藤 涼だった。涼はAegisの法務担当であり、逆詐欺計画において必要な契約書や法的文書を作成する役割を担っている。元弁護士の彼は、詐欺や契約に関する知識を生かし、あらゆるリスクを見据えた上で精巧な書類を準備する。その冷静かつ合理的な判断力はチームの信頼を一身に集めており、彼の作成した文書がAegisの作戦における信頼性の礎となっている。

「分かりました」

答えたのは、チームの心理操作担当である白石 怜だ。怜は普段MtF女性トランスジェンダーとして生活しているが、ターゲットに合わせて男装や女性の立場を巧みに使い分けることができる。冷静で知的な雰囲気を漂わせつつ、必要に応じてどんな役割にも柔軟に適応する。その柔軟性と話術の巧みさにより、ターゲットに信頼感を抱かせ、無防備な状態に引き込む能力に長けていた。

「今回のターゲットは女性関係に甘く、経済的な支援をちらつかせると相手を簡単に信用する傾向があります」

忍の報告を受け、涼は短くうなずきながら話を続けた。

「怜が被害者役を演じることで、大谷のターゲットにふさわしいと認識させる。まずは彼に信頼させ、支援を依頼させる形で進める。そして、後日、君の知人である『涼』がもっといい投資の話をしていたと匂わせる。大谷の金銭欲を巧みに利用することで、彼をより深く引き込む」

怜は頷きつつ、大谷がどのように自分をターゲットと見なすか、その心理的な導線について具体的なプランを頭の中で練り始めていた。

「了解しました。大谷の女性観や金銭感覚に合わせて、彼が信頼を置けるような人物像を作ります」

会議が進む中、忍が追加の情報として大谷が使っていたマッチングアプリでのメッセージ内容を表示した。それは、甘い言葉と真剣さを装う言葉が巧妙に混ざり合ったもので、大谷がどのようにターゲットに近づくかを明確に示していた。

涼はその内容に目を走らせ、彼が作成する書類にどのように活用するかを冷静に考えた。

「このような内容でのメッセージが使われているなら、今回の契約書には大谷にとってより魅力的な条件を設定しておくべきだな」

涼は、契約書にどのような表現を用いるか、またどれだけのリターンを大谷に約束するかを計画しながら、さらに細部を詰めていった。彼の視線は冷静そのもので、詐欺のリスクと利点を見据え、合理的に計画を組み立てる姿勢がそこにあった。

一方、怜は忍の提示した情報をもとに、大谷に対してどう接触するかを頭の中でシミュレーションしていた。自分が被害者として信頼を寄せることで、大谷に「支援したい」という感情を抱かせ、あえて依存するように見せるのが第一段階。その後、涼の「知人」という設定を持ち出すことで、大谷の金銭欲を刺激し、「さらに稼げる投資」の話題をちらつかせる。

「怜、涼が提案する『別の投資話』に関しては、あくまで大谷の側から興味を示すよう誘導してくれ」

涼が続けた。「こちらから詳細を伝えるのではなく、彼のほうから『もっと知りたい』と思わせることが肝心だ。彼が自ら深みにはまっていくよう、慎重に言葉を選んで進めるんだ」

怜は微笑んで「ええ、任せてください」と静かに答えた。自分が演じる役割に対して、強い自信と冷静な計画が怜の内面に根付いている。変装と心理操作のエキスパートとして、彼女はAegisにとって欠かせない存在であり、何度も複雑な詐欺計画を成功させてきた。

「よし、それでは各自、準備に取り掛かろう」

涼の指示で会議は終了し、各メンバーがそれぞれの役割に沿って準備を進めていく。忍はさらにデータを精査し、怜が大谷に接触するための詳細なシナリオを組み立てた。一方、涼は契約書の文面や、リターンの額に関する細かな計算を進め、いつでも怜が使えるように準備を整えていった。

涼の視線は、冷静で鋭い。その眼差しには、Aegisを率いる者としての決意と、理知的な思考が感じられた。彼が用意する偽の契約書が完成する時、彼らの逆詐欺計画は完璧な形を帯び、準備が整うことになる。そして怜は、しっかりと計画に基づき大谷に接触し、彼を信じ込ませ、最終的な目標へと誘導していくのだ。

こうして、Aegisの逆詐欺計画が緻密に組み立てられていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...