Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
28 / 84
第2幕

涼の準備 リスク回避策と法的保護の工夫

しおりを挟む
涼は、大谷に「特別な投資案件」として契約書を提示するにあたって、リスク管理と法的な保護を徹底的に考慮していた。涼の経験と冷静な判断は、Aegisイージスの計画を安全に進めるための重要な要素である。彼は元弁護士としてのスキルを活かし、計画が万が一にも破綻しないよう、細心の注意を払ってリスク回避策を盛り込んでいった。

まず、涼は大谷が計画に疑念を抱いた場合を想定し、契約書に「第三者による説明会」の設定についての条項を加えた。この条項により、大谷に「質問があれば専門家からの説明を受けることができる」という選択肢を提供し、安心感を与えることができる。大谷にとっては、「ただの投資ではなく、しっかりしたサポートがある」というイメージを与えるためのものであり、これにより彼の疑念が払拭される可能性が高まる。さらに、説明会を設定する「第三者」としてのフィクションも考慮し、必要であれば涼自身が「専門家」として対応する計画も準備した。

次に、契約解除に関する条項も慎重に追加した。契約解除を希望する場合、一定の期間が経過した後でしか解約ができないとする条項を設けることで、大谷に「今すぐ辞める」という選択肢を与えないようにしている。また、涼はこの規定を、「長期的に安定した収益を目指すための重要な条件」という形で説明できるよう準備しており、大谷にとっての「安心材料」として機能させる工夫を施した。このように、解除規定をわかりやすく伝える一方で、実際には解約の障壁として機能する構造を作り上げている。

涼は、契約書の内容全体において、投資詐欺のリスクを軽減するため、表現の選び方に特に配慮した。法的に曖昧な部分を残すことなく、すべての文言を明確にしつつ、どこか「特別感」を保ち、大谷にとって魅力的な文面を保つことを意識している。たとえば、リターン支払いについても「予定されるリターン」といった表現を使い、確約とは言い切らないニュアンスを持たせている。これにより、万が一の際に法的な責任がAegis側に及ばないよう配慮しているのである。

涼は、大谷が契約に前向きに取り組むように、さらに安心感を与えるためのリターン支払いスケジュールも詳細に設計した。契約書には、「最初のリターン支払いは1ヶ月後から始まる」と明記されており、その後3ヶ月間は安定的な支払いが約束される形となっている。また、「計画的な利益獲得が期待できる」という表現を追加することで、大谷に「これは継続することで利益が出る長期の案件だ」と思わせ、さらに安心感を強調する仕掛けも盛り込まれた。

このように細やかな配慮が詰め込まれた契約書は、大谷にとっては「特別な投資案件」であり、また「他者には提供されないチャンス」であると思わせる内容となっている。さらに、「契約解除は投資開始から6ヶ月後以降でのみ可能」という注意事項を追加し、長期的な視点での投資が必要であると暗に示している。これにより、大谷は簡単に契約を解除できない環境に置かれ、「長期的に投資を続けなければならない」という心理的な縛りを持つことになる。

元弁護士としての経験を持つ涼は、契約書の全体において「法的な抜け道」を潰すことを忘れなかった。投資詐欺においては、「過剰なリターンの約束」や「リスクの軽視」といった表現が問題になることが多いが、涼はそのリスクを回避するために「リターンは保証されるものではない」といった注意書きを各所に散りばめ、誤解を招く表現を極力避けるようにしている。これにより、仮に問題が発生した場合にも、契約書に明記された「リスクについての説明」が法的な防壁として機能する構造になっている。

涼は、大谷の性格を考慮しつつも、あくまで冷静に法的な保護を意識していた。Aegisが違法行為に関与していると疑われないように、そして万が一トラブルが発生した際にも、責任がAegisや涼自身に直接的に及ばないようにするために、あらゆる角度からリスクを洗い出し、それに対応するための文言を契約書に盛り込んでいる。

また、「利益が約束される」という文言をあえて避け、すべてを「期待される利益」と表現することで、大谷が「リターンが保証されている」と解釈するのを防ぎつつも、同時に彼が「この投資は成功する可能性が高い」と感じるよう誘導している。これにより、契約書の内容が合法的であると同時に、心理的に大谷を引き込むものとして機能するよう設計されていた。

涼は、契約書の最終確認を行う際、怜が使いやすいように特別な工夫も施していた。たとえば、怜が大谷に契約書を提示する際に「あなたにしか提供されない限定契約」という特別感をより一層強調できるよう、契約書内の特定の文言に下線や強調表示を加えた。この工夫により、大谷が「特別顧客」として認識され、自分だけが得られる優越感を抱くように設計されている。

こうして、涼が整えた契約書は、Aegisの計画を実現するための「完璧なツール」として仕上がり、大谷にとって全く疑念を抱かせない仕組みとなった。法的に問題のない言葉選び、特別感を演出する細部への配慮、そして解除条件の設定など、全てが計算し尽くされたこの契約書によって、大谷が安心してこの「特別な投資」に参加する準備が整ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...