Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
60 / 84
第6幕

本題への導入

しおりを挟む
涼はまず、大谷の緊張をほぐすために世間話から会話をスタートさせた。彼は微笑みながら、リラックスした口調で言った。

「最近、気温も下がってきましたね。こういう季節になると、体調管理が難しいですよね。大谷さんもお忙しいでしょうから、健康には気をつけてくださいね」

大谷も少し肩の力が抜けた様子で頷き、こう返した。

「ありがとうございます。確かに、気を抜くとすぐに風邪を引きそうですからね。工藤さんもご多忙でしょうが、やはりお忙しいですか?」

「ええ、ありがたいことに仕事が続いています。でも、忙しすぎると逆にエネルギーも尽きてしまうので、休むときはしっかり休むようにしています」

涼がこう答えると、大谷はさらに彼への興味を深めた様子で頷いた。穏やかなやり取りが続き、涼の物腰が大谷の警戒心を少しずつ解いているようだった。怜もそれを見て、和やかな雰囲気を保つように時折微笑みを浮かべた。

しばらくして、大谷が少し身を乗り出し、興味津々といった様子で口を開いた。

「そういえば工藤さん、前回お話していたビジネスの件、もう少し詳しく聞かせてもらうことは可能ですか?」

涼は大谷の言葉を受け止め、軽く頷いた後、穏やかに微笑んだ。

「もちろんです。ただ、これはあまりオープンにしていない案件ですので、慎重にお話させていただきます」

そして、彼は大谷の目を見てゆっくりと語り始めた。

「私たちが手がけているのは、少数の信頼できる方のみにご紹介している投資案件です。一般に公開すると、どうしてもリスクが高まることがありまして、そのため、信頼できるお客様だけにお声をかけているのです」

涼はここで、手元のタブレットを大谷に手渡した。液晶画面には「限定された少数顧客向け」と書かれており、デザインもシンプルだが高級感が漂っていた。

大谷はタブレットを手に取り、細部まで目を通しながら「限定された少数顧客」という言葉に明らかに惹かれている様子だった。

「こういった案件ですと、確かに信頼関係が重要ですね。どのような方がこれまで参加されているのでしょうか?」

大谷が慎重に尋ねると、涼はあくまで落ち着いた口調で説明を続けた。

「過去の参加者も皆様、信頼できる方々ばかりでした。中には資産を着実に増やされた方もいらっしゃいます。実際、最初に参加された方は、かなりのリターンを得ることができたと伺っています」

涼は続けて、過去の参加者が得たリターンのエピソードを淡々と話し、どのような経緯で資産が増えたのかを説明した。彼の口調は誇張もなく、あくまで事実を伝えるようなニュートラルな話し方だったが、それが大谷に信頼感を抱かせる効果を発揮していた。

怜は驚いたような表情で大谷と涼の間を見渡し、小さく感嘆の声を上げた。

「そんなに高いリターンが期待できるんですね…しかも、安全に運用されているなんて」

大谷もその言葉に同意するように大きく頷き、涼にさらに質問を投げかけた。

「リスクについても管理が行き届いているのでしょうか?安全だと聞くと、かなり興味が湧いてきました」

涼は微笑みながら、慎重に説明を続けた。

「もちろんです。この投資案件はリスクを最大限に抑えるように設計されており、私たちは常に顧客の資産を守るために徹底した管理を行っています。たとえば、市場の変動にも柔軟に対応するためのリスクヘッジを用意しており、そのため、顧客の皆様に安心して参加していただける環境を整えています」

怜はここでまた涼を見て、少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「工藤さんと話していると、本当に安心できますね。こんな風に考えている方、なかなかいないと思います」

涼は軽く会釈し、話題を続ける準備をしながら、大谷の反応を観察した。怜が自然に涼への信頼感をアピールしていることで、大谷の目がさらに輝いているのが感じられた。

涼は続けてタブレットで資料を開き、特に大谷が興味を持ちそうな箇所を指し示した。

「このページをご覧ください。こちらが実際の資産増加モデルの一例です。もちろん、あくまでシミュレーションではありますが、過去の実績を基に構築しており、今後も安定したリターンが期待できるように設計されています」

大谷は真剣な表情でそのページを見つめ、涼の説明に熱心に耳を傾けた。液晶画面に示された数値や過去の実績が、さらに彼の興味を掻き立てているようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...