Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
68 / 84
第6幕

Aegis・今後に向けて

しおりを挟む
Aegisのメンバーが集まる会議室は、冷静で緊張感のある空気に包まれていた。涼、怜、そして忍がテーブルを囲み、スクリーンには大谷信之の最新の口座情報が映し出されている。忍が最近行ったハッキングにより、大谷が3000万円もの資金を手元に持っていることが明らかになった。この情報は、Aegisにとって彼への次の一手を決める重要な鍵だった。

「3000万円、ですね」忍が冷静に話し始める。「この資金全額を一気に引き出すのは、彼に警戒されるリスクも高いです。そこで、まず500万円の投資を提案し、彼が信頼を深めた段階で、さらに大きな金額を動かすように誘導するのが理想的かと思います」

涼がうなずきながら、資料を手にして言葉を続けた。

「その通りだ。500万円は、彼にとって『高額だけど無理ではない』と感じるラインだろう。彼にまず500万円を出させることで、『この投資が安全だ』と確信を持たせる。そして、その先にはさらなるリターンを示唆して、最終的に3000万円以上の投資を決断させる」

怜も同意を示しながら言った。

「大谷さんはすでに私に対して信頼を持ってくれています。彼が安心して500万円を投入できるよう、今回も信頼関係を強化するメッセージのやり取りを続けますね」

「そうだな、君のそのポジションが効いている。大谷にとって、君は唯一無二の信頼できるパートナーだからな」涼はそう言って微笑んだ。

忍がスライドを操作し、次の資料を映し出す。そこには、500万円以上の投資に対する『限定リターンプラン』の概要が記載されていた。

「このプランですが、500万円以上を投資することでリターンがさらに高まるという説明を加えます。大谷が『一歩踏み込んでみよう』と感じられるよう、わざとランクアップの余地を設けています」

「具体的には?」涼が忍に目を向ける。

「500万円で始めた場合、3か月後には初期リターンを出す。そして、その時点で『さらなる投資でより高い利益を得られる』ことを示唆する形にします。これなら、彼が3000万円全額を投入したくなる心理を狙えるはずです」

怜が頷き、再び口を開いた。

「では、その流れで、次回の会合で大谷さんに500万円の提案をしましょう。投資額の上限について彼に確認しつつ、『将来的にはさらに高額のプランも考えています』とちらつかせる形で進めますね」

「そうだ。彼に対して『特別なプラン』としての特別待遇を強調して、少額から始めて少しずつ額を増やす流れが自然だ。大谷にとっては、徐々に投資額を引き上げていくことで不安も軽減されるはずだ」涼が慎重に言葉を選んだ。

会話が一区切りついた後、涼は今回の契約書についての説明に移った。

「今回の契約書には、『限定リターンプラン』の特典を追加する。具体的には、500万円以上の投資に対するリターン額を明記し、大谷が『投資するほど得をする』と感じられる内容にする。さらに、実績のある顧客の成功例も添えておくつもりだ」

「なるほど。これで、大谷が将来的な利益に目を向けるわけですね」と忍が言う。

「そういうことだ。そして、今回も怜のサポートが鍵になる」

涼は怜に視線を向け、続けた。「会合の流れとしては、まず怜が彼にリターンが実際に支払われたことへの喜びや感謝を口にし、大谷に安心感を持たせる。その上で、俺が500万円の提案をする。大谷が疑念を持った場合も、怜がその場で少し不安そうにしながらも『涼さんが言うなら大丈夫』という態度を見せて、説得力を持たせる」

怜が静かにうなずいた。「そうします。大谷さんが信じやすい言葉や態度を心掛けてみますね。おそらく、彼はすでに私に対して強い信頼を抱いていますから、私が前向きな姿勢を見せれば、500万円に踏み切るのはそう難しくないと思います」

涼は頷き、メンバー全員を見渡した。「よし、ではこれで次回の準備は整った。あとは実行あるのみだ」

忍が一度モニターを閉じ、穏やかな口調で言った。「今回も順調ですね。ただ、大谷の不信感がわずかでも生じないように、引き続き監視体制を整えておきます」

「頼むぞ、忍」涼が冷静に応え、メンバー全員が最後に確認の目を交わす。

会議が終わり、Aegisの次なる一手が定められた。大谷はまさに彼らの手中にあり、最終的なターゲット金額に向けて、計画はさらに着実に進んでいこうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...